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第71話 王女殺害未遂の犯罪者

今日もエピソードを2つ公開します

 エリオットを捕らえようとアンリエットたちが駆け寄ったが、エリオットはそれに慌てる様子もなく、俺の顔を見て嬉しそうにこちらに歩いてきた。


「一体どうしたんだい、ローレシア。僕の謝罪を受け入れてくれるのなら大歓迎だよ」


 コイツさっきあれだけローレシアに冷たく拒まれたのに、そんなことがなかったかのようにもう立ち直ってやがる。とんだサイコ野郎だな。


 アルフレッド王子と似たような顔なのに、コイツのことを生理的に受け付けないのは、このあたりの気持ち悪さがあるのかも知れない。


 そうだ、そんなことよりも、




「レスフィーア姫のコレクションルームのことでお伺いしたいことがございます。入り口のラグを持ち込んだのは、エリオット王子あなたですよね」


 エリオットの表情が一瞬変わったが、すぐに笑顔に戻ると、


「コレクションルームのラグって何だい?」


「部屋の入り口の床に敷いてある敷物です」


「敷物? 僕はそんなものいちいち覚えてないな」


「とぼけないで。さっき王女とあの部屋で確認いたしましたが、王女がエール病にかかる少し前に敷物が見覚えのないものに取り替えられていたそうです。執事長にも確認したところ、どの使用人も業者に発注した形跡がないそうです」


「だからって、なぜ僕が」


「執事長に帳簿も見せてもらいましたが、その時期に入室したのは、王族のエリオット王子のみです」


「なぜその敷物にこだわるのかがよくわからないが、執事長がウソをついているか、外部からの侵入者ではないのか。少なくとも僕がラグを取り替える理由がないではないか」


「でも執事長がウソをついて得をすることは何もございませんし、帳簿にもおかしな所はございませんでした。外部からの侵入者に至っては、中のお宝には一切手をつけずに、ラグだけを新品に交換してくれる意味がわかりません」


「では、他に何か見落としでもあるのだろう。例えばメイドとか使用人にも怪しいやつはいるはず」


「それこそ絶対にあり得ません。わたくしが見たところあのラグは相当な高級品で、メイドなんかに手が出せる金額ではございません。それこそエリオット王子にしか購入できないような宝物級。つまり犯人はあなたです。仮にあれが高級品ではないのであれば、わたくしは自分の見る目のなさを悔い、あなたからの謝罪を受け入れざるを得ませんが」


「ほう、やっと僕の謝罪を受け入れてくれるのだな。いやいやローレシアは本当に見る目がない。あの白いラグはそれほど高価なものではないだろう。それこそメイドたちにも十分買える値段だから、姫への日頃の感謝の品として献上しても別におかしくはない代物だよ。だから僕ではなくメイドたちを疑うべきだ」


「あら随分とラグにお詳しいのですね。先ほどはラグなど覚えていないとおっしゃられていましたが、色や値段までご存じとは」




「うっ・・・。謀ったなローレシア」


「こんなのに引っ掛かるなんて、あなたがバカなだけですが、犯人があなただったとは本当に呆れました」


「犯人だなんて人聞きの悪い。僕はただラグを新品に取り替えてあげただけではないか」


「ではどうして、あのラグなのですか。エール病の感染源になると知っていて持ち込んだのでは」


「そんなこと僕が知るはずないじゃないか。僕を信じてくれローレシア!」


「ではあれを持ち込んだ理由をちゃんと教えてください。あなたからレスフィーア姫へのプレゼントという訳でもないのでしょう?」


「それはキミのためなんだよ、ローレシア」


「わたくしのためにあのラグを・・・あの、全く意味が分かりませんが」


「キミがソーサルーラで生きていることを知って、僕はどうしてもキミにこの国に戻ってきてほしかった。だが外交ルートを通じて再三キミの身柄を要求したのだが、完全に無視されてしまった」


「当たり前です。そんな非常識な要求など通るわけがございませんし、実際ソーサルーラ国王が握りつぶしてくれました」


「なんだとっ、国王め! ・・・まあ今はどうでもいいかそんなこと。それでキミがこの国に帰って来られるようにするためにはどうすればいいか考えた。キミは各国の要人の病気の治療を行う親善大使だ。なら我が王国の要人が病気になればこの国に来てくれるのではないかと」


「まさか! そんな愚かなことを」


「愚か? 天才と言ってくれよ。そして現に今キミは僕の目の前にいるじゃないか」


「ふざけないで! この国に足を踏み入れるために、みんなどれだけ心をすり減らす思いで決断をしてきたのか。わたくしだって、アルフレッド王子だって、もちろんアンリエットだって。それをそんな風に軽々しくいうのはやめてちょうだい」


「ふん、そこの愚弟や無作法な女などどうでもいい。それよりもローレシア、キミが決断をして僕のもとに戻ってきてくれたことが何よりもうれしいんだよ」


「あなたが人として最低のクズであることは理解しました。それであのラグはどこで手に入れたのですか」


「知らん」


「知らないって、そんなわけないでしょう。どこから入手したか言わないと強硬手段にでますよ」


「ちょっと待ってくれよローレシア。僕が何をしたって言うんだよ」




「あなた、そんなことも分からないなんて・・・・。これはレスフィーア姫を意図的にエール病に感染させようとした、れっきとした犯罪です。しかも王族を狙った殺人未遂事件です。例えあなたが王族といえども、罪を免れることはできません」


「いや、エール病ならキミが治療できるんだし殺人にはならないよ。実際、レスフィーア姫は助かったわけだし」


「いいえ、わたくしの到着がもう少し遅れていれば、治療は間に合わずに亡くなっていらっしゃいました。これは完全に殺人事件です」


「大袈裟だよローレシア」


「もし、ここで入手経路を言わないのであれば、しかるべき手段に出ますよ。そこの騎士たち、今の話を聞きましたよね。直ちにこの犯罪者を捕らえなさい」


「ちょっと待ってくれローレシア、誤解なんだ。お前たちも僕に手を出すな」


 慌てるエリオットに護衛騎士たちは、


「いや彼は王族で我々の護衛対象なので、捕らえることなどできません」


「犯罪者でもですか?」


「はい、それが決まりです」


 ホッと息をつく、エリオット。


「そうですか、ではわたくし自らが拘束いたします。アンリエット、ジャン、この犯罪者を拘束なさい」


「はっ!」


 アンリエットとジャンは剣を抜くと、エリオット王子に突きつけた。


 それに腰を抜かしながらエリオットは、


「王族に向かって剣を向けるとは何事だ。不敬だっ。お前たち、この者たちを捕らえよ」


「いやしかし王子、この方々は国賓ですが・・・」


「ならアンリエットを捕らえよ。そいつは我が国の貴族だ。この僕が許す」


「はっ!」




 騎士たちが剣を抜くとアンリエットを取り囲んだ。こうなったら、もう対話では収集がつかない。


 戦うか!

次回、決着


夕方ぐらいにアップしますので、ご期待ください

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