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第68話 第3王子エリオットの執着

 俺は初めてエリオットの顔を見たが、アルフレッドに似たかなりのイケメンなのに、なぜかコイツだけは生理的に受け付けなかった。そのエリオットが騎士を従えて、ほほ笑みながらローレシアに近付いて来る。


「エリオット王子、なぜあなたがここに」


「もちろんキミに会うために、わざわざこの別荘までやって来たのさ」


「なぜ・・・あなたとはもう何の関係もないのに」


「そんなことはないさ、キミはまだ僕の婚約者だよ。不幸な行き違いでキミが修道院に送られて殺されたと聞いた時、僕がどれほどのショックを受けたことか。だが魔法王国ソーサルーラでキミの無事が確認され、こうしてキミはこの王国に戻ってきた。さあこちらへおいでローレシア!」


 エリオットが両手を広げてローレシアに近づく。だが、


「それ以上近づくな、エリオット! そこから一歩でも近づけば、直ちにお前を叩き斬る!」


 アンリエットが真っ赤な火属性のオーラをまとった魔剣を抜いて、エリオットの前に立ちふさがった。


「なんだ貴様は・・・ブライト男爵家の娘か。相変わらずローレシアにつきまとっているかと思えば、この僕に剣を向けるなど不敬だ。この女を捕らえよ!」


 エリオットの背後の騎士が剣を抜いてアンリエットを取り囲もうとするが、アルフレッド王子とジャンも剣を抜いてすぐに臨戦態勢をとる。


「やめるんだ兄上。すぐに剣を引くよう、騎士たちに命令しろ」


「なんだアルフレッド。貴様、第3王子であるこの兄に楯突こうというのか」


「ローレシアはソーサルーラの親善大使で、この国の貴族ではない。外国からの賓客一行にいきなり剣を向けるなど、兄上は事の重大さを全く理解していない」


「黙れアルフレッド! 先に剣を抜いたのはそこの女だ。そもそもその女は我が王国の男爵家の娘であり、王族が処罰を下すのに誰の許しも不要! ・・・まあお前の言い分もわかるから、その女を捕らえるのは勘弁してやる。ただし父親であるブライト男爵家には相応の処罰を行うがな」


「何と卑怯な・・・」




 するとそれまで黙っていたローレシアが、


「エリオット王子、あなたはわたくしとの婚約破棄を大勢の前でハッキリと宣言されましたよね。だから、わたくしはもうあなたの婚約者ではございません。 今すぐマーガレット様の元にお戻りください」


「ローレシア、それはキミの誤解なんだよ。この僕が本当にキミと婚約破棄をするはずがないではないか。早く僕の元に戻っておいで、さあ!」


「あれだけハッキリ明言されて、誤解も何もないのですけど! ではマーガレット様は一体何なのですか」


「おお、ローレシア! マーガレットとのことで僕に焼きもちを妬いてくれるんだね。なんと愛らしい」


「わたくし、焼きもちなんて妬いてませんっ!」


「でも安心してくれていい。マーガレットはキュベリー公爵にどうしてもと言われて押し付けられただけなのだよ。公爵は僕の伯父上でもあり、流石のこの僕も断りきれなくて婚約をしてしまったが、僕が愛しているのはキミ一人だけだよ、ローレシア」


「婚約をしてしまったって・・・・そんな軽々しく、しかも公爵令嬢と行うものではないでしょうに、本当にあなたと言う人はどうしてそんな・・・」


「キミは相変わらず固くて口うるさい女だが、離れてみてよくわかった。そこがいいのだ! そこらへんのだらしない女と違って、ローレシアはまだ純潔を散らさず守ってくれているのだろ。この僕のために」


「・・・な、なんと恥知らずな言葉を口にするの!」


「うひひひっ、久しぶりだよローレシアのその反応。いいね~、ゾクゾクする」




(おいローレシア、エリオットは本当にアルフレッドと半分血が繋がっているのかよ。これほどの下衆野郎は滅多にいないぞ。それにあいつが俺たちを見る目付きが、異様に気持ち悪いんだが・・・ブルブルッ)


(そ、そうですよね。気持ち悪いですよね・・・昔はこんな人ではなかったのですが、ここ2,3年は大体こんな感じなのです)


(これは婚約破棄されて大正解だったよローレシア。それにしても、よくこんな気持ち悪い奴と結婚しようと考えたもんだ)


(王家との婚姻はそれだけ重要で、貴族としてとても名誉なことなのです。・・・今となってはとても耐えられませんが)


(でもどうする? コイツしつこそうだし、このままではアンリエットの実家にも迷惑がかかりそうだが。コイツの相手は俺が代わってやろうか?)


(まだ平気です。もう少し自分で頑張ってみますし、わたくしにいい考えがございます)





「あなたに言われなくても、純潔はちゃんと守っております。でもそれは、あなたなんかのためではなく、わたくしの愛する人のためにです」


「なんだと? 僕以外に他に男を作ったのか! そんなこと絶対に許さない。それはどこのどいつだ!」



(なんだと? ローレシアには愛する人がいたのか。だ、誰なんだよそいつは、ランドルフ王子か?)


(違います! それにナツ、あなたがダメージを受けてどうするんですか!)




「・・・まさかアルフレッド、貴様か!」


「兄上・・・ローレシアの言っているのはたぶん僕ではありませんが、僕はローレシアのことを愛しています。だからローレシアを兄上には渡しません」


「ふざけるな! ローレシアはこの僕のものだ。アルフレッド、貴様には絶対渡さないし、その愛する人とやらにも渡さん! それで誰なんだそいつは!」


「あなたに教える必要などございません。わたくしの純潔はそのお方のものと決めましたので、あなたは用済みです。わたくしの前から今すぐ消えてください」


「この僕が用済み・・・そんなバカな。ローレシアは僕のものだったはずなのに、どうしてこんなことに」


「それはあなたの自業自得なのでは? 一年後にわたくしとの婚姻が控えていたのに、マーガレット様と婚約してわたくしを追放したのは、他でもないあなたでしょ。わたくしはもうあなたとは何の関係もございませんので、マーガレット様と末長くお幸せに」


「嫌だ! 待ってくれローレシア、もう一度よく考え直してくれ」


「考え直すも何も、あなたが決めたことでしょ。それともまさか、今度はマーガレット様と婚約破棄なさるおつもりでは」


「ということは、マーガレットと別れればキミが僕のところに戻ってきてくれるのか」


「それはあり得ません。そもそもマーガレット様との婚約破棄などキュベリー公爵が絶対に認めませんし、わたくしはあなたの顔など二度と見たくありません」




「そんな・・・僕はただキュベリー公爵の言うとおりしただけなのに、どうしてこんなことに」


「・・・・やはりキュベリー公爵の仕業でしたのね。それであなたは一体何を吹き込まれたのですか」


「き、キミがあまりに身持ちが固いものだからキュベリー公爵に相談したのだ。そしたらキミとの婚約を破棄すればアスター侯爵は激高して貴族の身分を剥奪させるはず。あとは修道院からキミを誘拐して妾にすればいい。妾なら何をやっても構わないからと」


「呆れた・・・わたくしのことを一体何だと思っていたのですか! 本当に最低ですね、あなた」


「・・・王族は何をしてもいいと思っていたのだが、そうではなかったようだな。すまなかった」


「今さらそんな風に謝られても迷惑なだけです。それにあなたなんかを絶対に許すわけないでしょ!」




「頼む! 僕にもう一度チャンスをくれ。このエール病騒動ならキミは必ずここにやって来ると思い、ずっと待ってたんだ。そして王城から密かに馬車で抜け出すキミを見つけて、この別荘まで追いかけてきたんだよ。でも父上たちがいたから帰るまで隠れて様子を見ていた。だからチャンスをくれ!」


「うっ・・・そんな気持ち悪いアピールをされても、あなたにもうチャンスはございません。それにここにいるとエール病に感染する可能性がございますので、すぐに王城にお帰りください」


「ローレシアは、エール病の心配がなくなるまでここにいてくれるんだな。だったら許してもらえるまで、ここでキミに謝らせてくれ」


「断固お断りいたします。気持ち悪いので、もう王城に帰ってください」

次回、エリオットを振り切って調査を続行し、

原因が徐々に解明されていく


ご期待ください

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