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第59話 襲撃犯の正体

 正規ルート上にオアシスのような場所があったのでその木の下に6人の男子生徒を並べる。そして俺とカトレアで見張っている間に、アンリエットが砂漠のチェックポイントに急ぎ先生を呼びに行った。


 そしてオアシスにやって来た先生に6人を引き渡すと、先ほどまで彼らに襲われて戦っていたことや、長い時間をかけてようやく全員を戦闘不能にしてここまで引きずって来たことを説明した。


「そういうわけで、わたくし達はあくまでも被害者。彼らが認識阻害の魔術具を使っていたことが何よりの証拠です。アリス・ヒューバートさんを襲った生徒もおそらくこの方たちではないでしょうか」


 俺の懸命な説明が伝わったのか、


「大丈夫ですよローレシア様。先生は別にあなたたちが襲撃犯だと疑ってはいませんので安心してね」


「それはよかった。ではなぜ先生はそのように深刻な表情でわたくしのことを見ているのでしょうか」


「深刻な表情・・・そうね、先生はなぜ彼らがこんな不正を犯したのか、それからあなたたち3人だけでどうやって彼らを倒したのか、そのことに戸惑っているのです」


「戸惑っている・・・どうして?」


「どうしてって・・・ひょっとしてあなたは彼らのことを知らないの?」


「はい、全く存じ上げておりません。そもそもこの方たちはどちら様なのでしょうか」


「そういえば、あなたたちはまだアカデミーに入ったばかりでしたね。実は彼らはこのアカデミーでも将来を嘱望された優秀な生徒たちで、魔法も格闘戦もともに優れた武闘派でも知られているのよ。この遠足でも優秀な成績が期待されていたのですが、一日目の成績があまりふるわなかったので、先生たちも不思議に思っていたのです」


「まあ、そんなに優秀な方々がどうしてこのようなことを?」


「それがわからないから戸惑っているのです。動機は彼らから聞いてみないとわかりませんが。でもそれよりもっと戸惑っているのは、あなたたち3人が彼ら全員を倒したことです」


「そんな深刻そうな顔でお聞きになるということは、彼らを倒すと何か不都合なことでもございますのね。過剰防衛で失格とかでしょうか?」


「失格だなんてとんでもない。もし本当に彼らを倒したのなら、それはもうすごいことなのですよ」




 よかった。もしこれで失格なら今までの苦労が何だったのかという話だし、そうでないのなら時間がもったいないので、早くゴールを目指したい。


「ホッ・・それなら安心いたしました。では、不都合がないのでしたらわたくし先を急いでおりますので、⑥砂漠のスタンプをさっそく頂きとう存じます」


「スタンプはもちろん差し上げます。それよりも今回の事件について、色々とお話を聞かせてください」


「わたくし急いでおりますので、それはゴールした後にでもゆっくりと・・・」


「ローレシア様。先生がここに到着した時刻でちゃんとラップタイムを刻みますので、遠足のことは気にされなくて結構ですよ」


「そ、そういうことでしたら、ゆっくりお話し致します」


「ふふっ、ありがとう。それではまず、どうやって彼らを倒したのか教えてもらえますか」


「承知しました、まず最初にわたくしが・・・」






「・・・・という風にして、彼らを無力化することに成功したのでございます。ここまでで何かご質問はございますか?」


「あの・・・・失礼ですがローレシア様。今の話ではローレシア様は水属性魔法も使用されたとのことでしたが、聖女でいらっしゃるローレシア様が使用できるのは光・闇・聖の3属性ではないのでしょうか。どうして水属性魔法を使えるのですか?」


「それについては別に隠しているつもりはございませんでしたが、わたくしには聖女というイメージが先行してしまっていて、どうもみなさまには誤解されているようなのです」


「誤解・・・ですか?」


「ええ。わたくし聖女である前に実は勇者なのです。だから全属性の魔法が使えるのです」


「え・・・ローレシア様って勇者だったのですか! それはすごい。それに先ほどの話からすると、魔力量が桁違いに多い」


「お誉めいただいた後で恐縮なのですが、実はわたくしまだまだなのです。闇魔法がうまく使えませんし、水魔法も勉強を始めたばかりで、どの魔法もイマイチなのでございます。つまりまともに使えるのは光魔法のみという有り様でして、お恥ずかしい限りです」


「そんな・・・それであの6人を倒すなんて」


「それは先ほど申し上げたとおりで、アンリエットの火魔法とカトレアの雷魔法も加えた3人で倒したからでございます。それにこのアンリエットが剣を使えば、わたくしなんかよりもずっと強いのです」


「え、ローレシア様よりもお強いのですか?」


「はい。わたくしは毎晩、アンリエットに鍛えて頂いております。彼女はアスター家の騎士団長ですから」


「アンリエットさんが騎士団長っ!」


 先生はアンリエットを見てポカンとしていた。




「それでこの後、彼らはどうなるのでしょうか」


「この6人が意識を取り戻し次第取り調べを行いますが、おそらく彼らは失格になるでしょう。ただ彼らがこのような不正を行った動機がわかりません。もしかしたら他に共犯者がいたり、あるいは彼らに指示をした首謀者がいる可能性もございます」


「共犯者に首謀者・・・。そういえば、遠足の上位勢は今どのようになってますか?」


「現時点でのゴールの着順という意味では、今朝1位のカミール・メロアさんはすでに6か所すべてのスタンプを集めてゴールしています。3位のジャンさんがそれに続きゴール済み。10位のアルフレッドさんが6か所目のチェックポイントをすでに通過していて、3番目にゴールする見込みとの情報が入っています」


「アルフレッドが! ・・・それ以外の上位の生徒はどうなったのですか?」


「2位のアリス・ヒューバートさんは負傷のため本日はすでに帰宅し後日再開、4位のロナルド・ウエインさんは救出が遅れたため遠足をリタイヤせざるを得ませんでした。そして5位のアンリエットさんと6位のローレシア様が、さきほどこの6人に襲われて、それを返り討ちになさったと」


「4位のロナルド・ウェインさんがリタイヤ・・・。遠足の途中で3位のジャンから聞いた話なのですが、1位のカミール・メロアが手段を選ばない男だと聞いております。この6人とカミール・メロアの関係を調べる必要があると思います。もちろんジャンが怪しい可能性もございますが」


「・・・わかりました。一応調べてみますね」




 その後6人は、応援に駆けつけた先生たちによってアカデミーの指導室に連行されて行き、一方の俺たちは⑥砂漠のチェックポイントでスタンプをもらって、遠足を再開させた。


「次はアンリエットが6か所目の⑤谷底、カトレアが5か所目の①平原ですね。砂漠を抜けるまでワーム系の魔獣が強くて気持ち悪いので気を付けてください」


「わかりました、ローレシアお嬢様。もしよろしければ、私に聖属性魔法グロウをかけていただいてもよろしいですか」


「もちろんです。カトレアにもかけましょうか?」


「私は結構です。私、虫は苦手なのでショートカットせずに正規ルートを通って行きたいと思います」


「わかりました。それでは最後まで気を付けて」





 俺は自分とアンリエットにグロウをかけた後、中心エリアまで戻って遠足を無事ゴールした。そしてアカデミーの魔導ゲート広場に戻ると、一足先にアルフレッドが一人待っていた。


「アルフレッド王子! 3番目でのゴールおめでとうございます」


「やあ、ナツも今ゴールかい。キミは5番目のゴールだったよ。・・・でもどうして僕が3番目だって知っているんだ?」


「先ほど先生から聞いたのです。実はアンリエットとカトレアが男子生徒たちに襲われているのを見つけ、わたくしたち3人で彼らを倒したのですがその時に」


「なんだってっ! 男子生徒に襲われたって、大丈夫だったのかナツもみんなも」


「ええ、わたくしたちは何ともありません。わたくしの光魔法があればケガなどすぐに治せますので」


「・・・それはよかったが、そいつらの名前はっ!」


「そう言えば名前を聞くのを忘れました。たしかこのアカデミーでも有名な武闘派の6名様でしたか」


「武闘派の6名か。なら後で調べて僕が徹底的に締め上げておいてやる」


「いえ、王子はもう結構です。わたくしたちが十分に痛めつけましたし、遠足も失格になるそうです。そんなことよりも、王子が今日どうやって遠足を攻略したのか、わたくしに教えてくださいませ」


「僕の攻略の話か! そうだな、まず最初に・・・」


 こうしてアンリエットたちが戻ってくるまでの間、俺と王子は二人でお互いの武勇伝を語り合った。

次回、成績優秀者の表彰式です


ご期待ください

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