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第56話 連戦

 遠足2日目の朝、魔導ゲート広場に集まった生徒たちに、先生から遠足1日目の結果発表があった。


■ チェックポイント到達数ベスト5

 ①カミール・メロア(風) 4か所

 ②アリス・ヒューバード(火) 4か所

 ③ジャン(土) 4か所

 ④ロナルド・ウェイン(水) 3か所

 ⑤アンリエット・ブライト(火) 3か所


■ 負傷ペナルティー 44名

■ リタイヤ 2名




「アンリエットが5位に入ってますよ」


「やりました、お嬢様。ただ私は中心エリアまで到達したからこのランキングに乗ったと思われますので、お嬢様も実質的には5位だと思います」


「そうかもしれませんね。あと気になったのが、負傷ペナルティー人数が多いこと。これは致死性の負傷を負った人数と考えれば、如何にこの遠足が過酷かを表していますね。それにリタイアが2名も出たとは」


「魔獣に襲われての負傷者が最も多く、あとはやはり山頂をショートカットした際の崖からの転落者が多いようですね」


「あと個人的に気になっているのが、闇クラスが一人もランクインしていないこと。わたくしと王子は既に3か所到達しているので、なるべく高順位をキープして罰ゲームを回避したいところです。エミリーもカトレアもみなさん頑張りましょう」


「はいっ!」




 さて二日目の魔導ゲートは行き先毎に転移が行われるようで、最初に中心エリアに生徒たちを運ぶと、そのあと①から⑥のチェックポイントに順次生徒たちを転移させていく。そして全員が所定の位置に着いたのを確認し、一斉にスタートした。


 俺は①平原から②ジャングルへのショートカットコースを目指すが、①で終了した生徒の多くは②か⑥へのショートカット組のようで、10名近くが俺と同じ②に向かった。走り出した彼らの背中を見送りつつ、俺は順番に呪文を唱えていく。



 【聖属性魔法・グロウ】

 【光属性魔法・ヒール】

 【光属性魔法・キュア】



 虹色のオーラが身体を輝かせて、魔法少女のように大人の身体に変身すると、今度は身体の周りをヒール&キュアの白いオーラが包み込み、細胞にブーストをかけていく。


 よし準備OK。


 俺は全力で走りだし、一気に彼らを追い抜いた。


「は、速いっ! さすがローレシア様だ・・・」


「湯水のように魔力を垂れ流して走ってる。すげえ」




 平原は地形が単調なため、昨日みたいに突然崖から落ちる心配はいらないが、念のため足元には注意しておく。だが今日は地形トラップより先に魔獣の群れが現れた。


(ローレシア、あの魔獣はなんだか分かるかい)


(デーモンタイガーだと思います。この平原に出現する中では最強クラスで魔獣で、しかも群れで行動するから厄介です。苦手属性は闇)


(さすが遠足のしおりを全て読破しただけのことはあるな)


(はい。わたくしに何でもお聞きください)


(では闇魔法で戦おう。魔剣と闇魔法ブラインドを両方同時に使う)


(承知しました)



 俺は魔剣に闇の魔力を込めつつ、ブラインドの呪文を詠唱する。魔剣はすぐに暗黒のオーラを放ち出すが、ブラインドの発動には相応の時間がかかる。



 【闇属性魔法・ブラインド】



 ブラインドと叫ぶと、魔方陣がデーモンタイガーの正面に出現し、闇のオーラが目元を包み込む。そして先頭の一頭が光を失って、前後不覚に陥った。


(俺のブラインドでは先頭の1頭しか魔法がかからなかったな。イマイチだ)


(では残り4頭はライトニングで目をくらませて足止めをしましょう)



 今度は光魔法を準備しつつ、先頭の一頭に闇の魔剣を全力で叩き込む。さすが苦手属性だけあってかなりのダメージを与えることはできたものの、魔獣を倒すには至っていない。こいつ相当体力があるな。


 逆に俺は仲間のデーモンタイガーから狙われ、牙で俺の首を噛み砕こうとする反撃を、すんでのところで回避した。危ねえ・・・。


 そして身体を横に滑らせて、そのデーモンタイガーの後ろに抜けると、そのままいったん距離を空ける。だがデーモンタイガーの群れはそんな俺の回避行動に瞬時に反応し、俺を逃すまいと残り4頭が一斉に俺を視線でとらえた。


 かかったな。



 【光属性魔法・ライトニング】



 辺りに閃光が走り、残り4体の視界が同時に奪われた。俺の回避行動は魔獣の視線を集めるためのブラフだったのだ。



(やはりブラインドよりライトニングの方が使いやすいな)


(わたくし闇魔法より光魔法の方が得意ですので)


(さすがは光属性魔法の名門、アスター侯爵家。だがこれも練習だ。いろんな戦い方を試していくぞ)




 俺は魔剣を握り直して一番最初のデーモンタイガーに斬り込む。2撃、3撃と闇の魔剣を打ち込んでようやく一頭を仕留めると、他の4頭の視界が戻る前に、準備していた別の魔法をぶちこむ。



 【光属性魔法・アンチヒール】



 上空に出現した巨大な魔方陣に魔獣の身体から抜き取られた白いオーラが吸い込まれていき、魔獣たちが活力を失っていく。アンチヒールは魔力を大量に必要とするが、やはりその分効果も高い。


 デーモンタイガーは体力が多いため、アンチヒールだけで倒すことはできなかったが、見るからに弱っており、俺は魔剣に闇の魔力を再度注入すると、魔獣たちに突撃をかけた。


 いちっ! にっ!


 闇のオーラをまとった魔剣が、弱った魔獣を一刀両断に切り裂いていく。


 ・・・さん・・・よーん!


(デーモンタイガー5頭の討伐を完了。②ジャングルに向けて進撃再開だ!)





(ナツ! 今度は空から敵・・・サンダーイーグルです。弱点は水属性)


(よし来た。アイスジャベリン用~意)


(イエッサーでございます)


(撃て!)



 【水属性魔法・アイスジャベリン】



 俺の頭上に現れた1本の鋭い氷の槍が、上空の敵を目掛けて発射された。どんどん加速していく氷の槍はまさに地対空ミサイル! その槍の接近に気がついたサンダーイーグルが慌てて回避行動をとるが、


「甘い!」


 俺は槍を誘導ミサイルのように少し軌道を曲げて、逃げようとするイーグルにぶつける。


「命中だ!」


 氷の槍がサンダーイーグルの羽を貫くと、轟音とともに地上へと墜落した。俺は魔剣に今度は水属性の魔力を注入すると、水のオーラを放つ魔剣で魔獣にトドメをさした。そして再びジャングルめがけて走り出す。


(サンダーイーグル1機撃墜! アイスジャベリンは空の敵に有効だな、この魔法は使える。それにこの魔剣もまさに全属性の俺にピッタリの武器だ。呪文詠唱の間も無駄なく攻撃に使えるし、一万ギル払った甲斐があったな。まさにアンリエットさまさまだよ)


 その後も魔獣が襲って来る度に、ことごとく返り討ちにしていく。





 平原からジャングルエリアに入ると、魔獣の種類も変わって先ほどまでの大型の猛獣、猛禽タイプが鳴りを潜めた。


(ナツ、敵発見。マンイーターです)


(マンイーターか。クールンの特訓を思い出すな)


(でも今度はあの魔法が使えますね)


(だな)



 【聖属性魔法・ウィザー】



 農家御用達の雑草処理魔法にして、エール病治療の切り札。聖属性魔法ウィザーは植物系魔獣にも絶大な効果があった。辺りのマンイーターは瞬時に全て枯れ果ててしまい、一体も俺の近くにたどり着くことすらできずに全滅した。


(実は俺たち、この魔法が一番得意かもな)


(そ、そうですね。散々使いましたからねこの魔法。しかしもの凄い破壊力ですね)


 その後も鬱蒼と茂る密林から這い出てくるように、次々と襲ってくる魔獣を手当たり次第倒していく。やがて本ルートに合流すると魔獣タイムも終了した。


(結局、朝から何体倒したんだろうな俺たち)


(さすがに100体は行ってないと思いますが)


(もしこれがギルドの魔獣討伐クエストだったなら、大儲けだったのに残念だな)





 本ルートに入るとすぐに、ジャングルの奥地にあるチェックポイントの小屋に到着した。小屋からはちょうど一人の男子生徒がスタンプをもらって出てくるところだった。


 その男子生徒と入れ違いに小屋に入り、スタンプをもらって外へ出ると、小屋の前でその彼が待っていて俺に話しかけてきた。


「ローレシア、もしよければ途中まで俺と一緒に行かないか」


「別によろしいですが、あなたはどちら様でしょう」


「俺の名前はジャンだ」


「ジャンと言えば確か現在3位の。ということは、あなたはここが5か所目ということでしょうか」


「ああ、次のチェックポイントがラストなんだけど、中心エリアを経由していくからもし君も中心エリアを通るなら、一緒にどうかなと思って」


「それは奇遇ですね。わたくしもちょうど中心エリアに向かうところでした。では一緒に参りましょうか」





 ②ジャングルから中心エリアへは、先ほどの密林と違ってある程度歩き易い道になっている。そこを移動する間、俺はジャンの話を色々と聞いた。


 ジャンはこのソーサルーラの下町で生まれた平民なのだが、生まれながらにとても強い魔力を持っていたため、小さいころから騎士団の目にとまり特別に訓練を受けていたそうだ。そして奨学金を得てこの魔法アカデミーに通い、卒業すれば騎士団に入隊することになっている。


 この遠足でも3位につけているし、コイツはなかなかの優良株に違いない。それはいいのだが、


「あの~、ジャンが乗っているそれは何ですか?」


「これか? これはゴーレムだよ。ゴーレムの馬」


「これがゴーレム・・・。ジャンは遠足中ずっとそれに乗って移動していたのですね。どうりで速いはず」


「・・・・いや、ローレシアもメチャクチャ速いよ。なんで自分の足なのに、この馬と同じ速さで走れるんだよ」


「さすがに同じ速さは言いすぎでしょう。ジャングルの中だし、馬の速度を落として走っていたのでしょ」


「それはそうなんだが、ローレシアって明らかに人間が走る速度じゃないよな」


「そうですか?」


「特にジャングルを抜けてからは異常だよ。しかも息も切らせずに平然と・・・それはそうと、キミは次どこに行くんだ?」


「⑤谷底です」


「俺は④洞窟だ。じゃあこの辺りでお別れだな」


「はい。それではジャンもお気をつけて」


「ああ・・・それからローレシア。カミール・メロアには気を付けろよ。あいつは1位になるためには手段を選ばない男だ。なるべく近くに寄らないようにしておくんだな」


「カミール・メロアですね。教えていただき、ありがとう存じます」


「ああ、それじゃあ気を付けてな」

次回、遠足に不穏な動きが


ご期待ください

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