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第53話 世紀の大発明

 お花摘みという、高位貴族最大の難問を抱えた少女カトリーヌは、俺の言葉に喜びの表情をたたえた瞬間ブルッと身体を震えさせた。


 どうやら、うっかり気を緩めてしまったらしい。


「申し訳ございませんが、わたくしにはそれほど時間が残されていないようです。はっ、早くその解・・・解決方法・・・を」


 カトリーヌはもう限界が近いらしく、身体をくねくねさせ始めた。これは一刻を争う事態だ。


「それではカトリーヌ様。まず始めに、下着をお脱ぎ下さいませ」


「できません」


「それはどうしてでしょうか」


「脱ぎ方がわからないからです」


(そんなバカな。下着の脱ぎ方がわからないなんて、高位貴族はそこまでバカなのか?)


(バカとは何ですかバカとは! ナツ、貴族をバカにすることはこのわたくしが許しません)


(いや、自分の下着が脱げないなんて、どれだけ頭が悪いんだよ!)


(自分で脱げないのは頭が悪いからではなく、複雑で自分一人では脱げない構造になっているからです)


(え、どう言うこと?)


(・・・わかりました。ナツにはこれ以上は無理ですので、わたくしがカトリーヌ様の下着を脱がせます。一度わたくしに身体の操作を交代してくださいませ)


(お願いします・・・)



 【チェンジ】



「ではわたくしが下着を脱がせて差し上げますので、スカートを持ち上げてくださいませ」


「よろしくお願いいたします」


 そう言うとカトリーヌ様はスカートを持ち上げて、ローレシアに身を任せた。


(うわっ、下着が丸見えだ!)


(ちょっとナツっ! カトリーヌ様の下着を見ないでください!)


(いや、だったらローレシアが目をつぶってくれよ。今は身体の操作をローレシアがやっているんだから、俺にはどうしようもないだろ)


(そ、そうでしたね・・・しかたがありません。目をつぶったまま脱がせてみましょう)


(自分で下着も脱げないローレシアに、そんな高度なことができるのか?)


(失礼ですねっ! ちらっと見た限りカトリーヌ様はわたくしと全く同じ下着を着用しておりました。このタイプなら構造はわかりますので、なんとかなると思います)


(え、さっきの下着と同じものをローレシアもはいているの)


(え・・・もうっ! 変な想像はしないでください。ナツのエッチっ!)


(す、すまん・・・)





 俺にはよくわからないが、ローレシアによると高位貴族の下着にはガーターベルト的な何かが色々ついているらしく、あちこち順番に外していかなければ脱げないようだ。しかも自分では外せないような場所もあり、はく時はもっと難しいらしい。


 そんな困難な作業をローレシアは目をつぶってやるものだから、


「あっ・・・そ、そこは」


「ご、ごめんなさい。変なところを触っちゃって」


「い、いえ・・・あっ! そんなところを・・・」


「また・・・ご、ごめんなさいね」



 こんな風に下着を脱がすのにやたら時間がかかり、カトリーヌのタイムリミットがもうすぐそこまで来ていた。この切迫感、まるでハリウッド映画のクライマックスを見ているかのようだが、目をつぶって状況がわからない分、余計に緊張が走る。


 そして仮にタイムアウトの場合、カトリーヌの股間で作業をしているローレシアとついでに俺が、大惨事の被害者となるのである。


 遠足最大のピンチが、このような形で早くも訪れようとは!





 だが、


「外れましたっ! 外れましたよカトリーヌ様っ! 早くお花摘みをっ!」


「はっはいっ、ローレシア様っ!!」




 そしてすぐに地面にしゃがみこむと、実に気持ち良さそうに用を足すカトリーヌ様と、それを満足そうに見つめるローレシア様。一仕事やりとげた充実感が、俺の頭の中を埋め尽くしていった。


(ローレシア。満足そうな所悪いんだけど、この後も作業が残ってるよな。どうするんだ、やるのか?)


(うっ・・・流石に、わたくしにはそのようなこと、自分のもしたことございませんのに、ましてや人様のものなど・・・)


(だよな。一応拭くものは何枚か持って来ているが、流石にやりたくないよな)


(・・・はい、わたくしは嫌ですし、ナツがカトリーヌ様のお世話をするのは、もっと嫌です)


(そこでだ。さっき俺が言ってた秘策があるんだが)


(そういえば、さっき何かおっしゃってましたね)


(今からそれをカトリーヌに試してみようと思う)


(・・・カトリーヌ様にですか? エッチなことじゃないでしょうね)


(本当はローレシアで試す予定だったんだけど、丁度いい実験サンプルが手に入った)


(ナツはわたくしにエッチなことをしようとしていたのですか!? ま・・・まだ心の準備ができておりませんので、もう少しだけお時間をください)


(ちっ違うよ。エッチなことなんかしないよ!)


(・・・じゃあ何をなさるおつもりなのでしょうか)


(いいから黙って見てなって)



 【チェンジ】



「あの~ローレシア様? わたくし終わりましたが、この後いかがいたしましょうか。一応拭くものは持参しているのですが、自分でするのはどうも・・・」


「ご心配いただかなくても大丈夫ですよ、カトリーヌ様。今から素敵な大発明をご覧頂きます」


「まあ! 大発明とはなんでございますか?」


「カトリーヌ様はそのままの姿勢で、しばらくお待ちくださいませ」


「はいっローレシア様。しゃがんだまま待っていればよろしいのですね」


 そして俺はある魔法の呪文を唱え始めた。この世界では誰も考え付くことのできない、俺だけが使えるある大魔法を。


 魔法はイメージが基本。しっかりとしたイメージを頭に植え付けた上で、呪文を唱える。すると魔方陣がカトリーヌのお尻の下に現れて、よし準備が整った!



 【ウォーター】



 俺がそう叫ぶと魔方陣から一筋の水が湧き出して、カトリーヌのデリケートな部分を直撃した。


「ひゃっ!」


 清潔な水が断続的に発生しては、カトリーヌの汚れを全て洗い流していく。そうこれはウォシュレット。水の力で全て洗い落とす、世紀の大発明を魔法にしてみたのだ。


 これなら大だろうが小だろうが関係なく、手を全く触れずに完璧に洗浄が可能。そのあとは持参した布で水分を拭き取ってしまえばいいだけだ。


「カトリーヌ様。これならあとはご自分で処理できますよね」


「はいローレシア様! でもこれはとても素晴らしい大発明ですね。というか大魔法?」


「これはただの水属性魔法ウォーターですが、このように使用すれば、わたくしたちのような者でも一人で用が足せるようになる、世紀の大魔法でございます」


「これは社交界で話題を独占できる大ニュースになりますわね。ところで質問ですが、なぜ闇属性クラスのローレシア様が、水属性魔法をお使いになられるのでしょうか」


「ここだけの話でございますが、実はわたくし全ての属性魔法を使用することが可能な勇者でございます」


「え!? ローレシア様は勇者だったのですかっ!」


「はい。ですので、このような水魔法ウォシュレットも使いこなせるのでございます」




(ナツが水属性魔法にこだわって、必死にウォーターの練習をしていたのは、このためだったのですね)


(お花摘攻略魔法だ! どうだすごいだろ)


(ウォーターはとっても簡単で、世界三大簡単魔法の一つに数えられているのに、ナツがやたら苦戦してるのを見て、ナツには魔法の才能がないのかとガッカリしていたのですが、まさかこんな事をしていたとは)


(世界三大簡単魔法・・・確かにただの水を出すだけならメチャクチャ簡単だけど、このウォシュレットは水の量と勢い、そして発射角度のどれか一つが欠けても命中精度が維持できない超高難易度の魔法なんだ)


(用を足す以外に使い途がなさそうのが残念ですが、確かに便利ではありますね)


(だろ。これでようやく侍女軍団のお花摘み当番への申し訳なさ度合いが半減できる)


(フフッ、ナツの執念にわたくし脱帽です)

お花摘だけでエピソードを1本書いてしまった


・・・じ、次回は洞窟の迷宮探索です

ご期待ください

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お花摘みで一話使うのは重要です
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