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第14話 初めての魔獣討伐②

 俺たちにとって厄介なのは植物系の魔獣だ。


 そして今、俺たちの目の前には食虫花系の魔獣マンイーターが出現し、触手を振り回して俺を捕らえようとしている。


 この魔獣には目がなく匂いで獲物を捉えるため、ゴブリンのように閃光は通用しない。植物なので本当は火属性魔法で燃やすのがセオリーなのだが、俺はまだ火属性魔法を1つも使えない。


 だから、この魔法を試してみた。



 【アンチヒール】



 アンチヒールはマンイーターにも効果があるようで、魔法が発動すると急速に萎れていき、最後は地面に枯れ果ててしまった。


 ピクリとも動かなくなったが、念のためショートソードでとどめを指しておく。


(ローレシア、アンチヒールはかなり使える魔法だな。動物だけでなく植物の体力も奪えるところが素晴らしい)


(そうですね。欠点はヒールに比べて魔力をたくさん必要とすることですけれど、今のわたくしたちには、それほど欠点にはならないでしょうね)


 そんな風に目標地点へ向かう道中、見つけた魔獣を片っ端から討伐していく俺たちだったが、アンリエットはその間一切手を出さず、目をキラキラと輝かせながら俺たちの活躍を喜んでいた。





 そしていよいよ森の奥にある目標地点に到着すると、本日のターゲットであるラージポイズンボルフがそこにいた。


 この魔獣は巨大な狼のような姿で、牙や爪には猛毒がある殺傷性の高い害獣である。しかもその巨体に似合わず敏捷性が高いため、ランクCの冒険者が討伐を試みる場合は、必ずパーティーを組んで複数人で対処することが推奨されている。


 そんな魔獣を、今日は俺1人で相手をする。


 まずは挨拶代わりの、



 【ライトニング】



 魔獣は閃光にやられて身動きを止めた。よし上手くいったぞ。


 俺は次の魔法を唱えながら魔獣に突撃し、ショートソードで急所を攻撃した。だが太い体毛が邪魔をして剣が上手く刺さらない。打撃を加えても威力が分散されるため、有効打を与えられない。


 こいつ防御力がかなり高い。


 仕方がない。俺は準備していた次の魔法を放つ。



 【アンチヒール】



 魔法が発動して、魔獣の体力を奪うことができた。一瞬よろける魔獣だったが、元々の体力が多いのか、マンイーターの時みたいに一撃で倒すことはできなかった。


 逆に俺は魔獣からの反撃を食らってしまった。魔獣の前足による強烈な一撃を受けて、俺は空中に跳ね上げられてそのまま地面に背中から落下してしまった。


「ぐふっ!」


 地面に叩きつけられた衝撃でうまく息ができない。俺がなかなか立ち上がれずに地面でもがいているのを見て、魔獣が止めを指すために一気に間合いをつめてくる。


 ヤバい!


 俺は全力を振り絞ってなんとか立ち上がると、ギリギリのタイミングで魔獣の一撃をかわし、すかさず距離をとるために走り出した。



 あ、危なかった・・・。


 ひとまず命拾いはしたが逃げるだけでは勝てない。


 俺は走りながら息を整え、魔法の呪文を詠唱する。トレーニングで心肺能力を上げておいてよかった。



 【キュア・・・】



 まずキュアをかけ、身体中に受けた打撲のダメージを治癒する。その後ヒールをかけて体力も全回復させた。だが魔力はまだ十分に余裕がある。


(ローレシア、ここからは今と同じパターンでダメージを受けたらキュアとヒールで全回復しよう。俺はこの魔獣を相手に戦闘訓練をする。しばらくはこのショートソードでヒット&アウェイを続けてみるよ)


(わかりました。でも危なくなったら作戦を変えてくださいね。それでは頑張りましょう!)


(おう!)


 俺は逃げるのをやめると、ショートソードを握りしめて再び魔獣と相対する。敵のすばやい動きに対応するため俺も全速力で動きながら、隙あらば急所狙いで突撃する。


 そして潤沢な魔力を惜しげもなく使い、常にフルケアな状態を維持して魔獣と戦い続けた。





 戦いは俺の予想以上に長引き、すでに一時間近く経過していた。さすがの俺も魔力の残りが心配になってきたが、魔獣も体力の限界が近いようだ。


 というのも魔獣の動きがかなり鈍くなり、俺の反応速度はこの魔獣のそれを超えていて、魔獣の攻撃は全て避けられるようになっていたからだ。だから焦ることなく確実に、敵の急所に打撃を加えていく。そして、


「そこだ!」


 俺は敵のガードががら空きになった急所をハッキリと捉え、今日一番の渾身の力でショートソードを振り抜いた。


 一撃が見事に決まった。魔獣は悲鳴をあげて悶え始める。これでトドメだ!



「うおおおおおおーーーーっ!」



 俺はショートソードを握り直して魔獣の急所を滅多打ちにし、やがて力尽きた魔獣はその巨体を地面に崩れ伏し、そしてピクリとも動かなくなった。




「勝ったーーーっ!」


 俺はアンリエットのところに駆け寄ると、アンリエットも俺に飛びついてきて、二人抱き合って喜んだ。


「ローレシアお嬢様っ、お見事でした!」


「ありがとう、アンリエット」


「この戦いでお嬢様のパワーとスピードがかなり上昇しましたね」


「本当ですか? 自分では実感がないのですけど」


「戦いの最後の方では、お嬢様は魔獣よりも素早い動きができていましたよ」


「あれは魔獣が疲れていたからではないでしょうか」


「いいえ。魔獣は終始ほぼ同じすばやさで戦っていました。魔獣が遅くなったと感じたのは、お嬢様が戦いの中で強くなったためです」


「わたくし、この短時間で強くなったのですか」


「ええ。この魔獣は今のお嬢様に丁度いい強さなので、お嬢様の訓練には最適なんですよ」


「アンリエットはそこまで考えて、このクエストを受けたのですか」


「はい、お嬢様」


 さすがはアンリエット。バラ騎士隊の隊長というだけあって、人の強さを見抜く目は抜群だ。そんなアンリエットにほめてもらえて、俺は益々やる気が出てきた。


 今日の戦いではラージポイズンボルフ相手に1時間以上かかったが、次はもう少し短い時間で討伐できるはずだ。よし、明日もここに来てもう一度この魔獣と戦ってみよう。


 俺は熱い気持ちを胸に秘め、この魔獣との再戦を誓った。






「それではお嬢様。このマジックポーションですぐに魔力を回復してください」


「・・・ありがとう存じます」


 俺はアンリエットの勧めるままに、マジックポーションを飲み干した。


 魔力が少しずつ回復していく。




「さあ、次のラージポイズンボルフの討伐に向かいましょう。お嬢様、戦いの準備を」


「えーーっ! 今クエストをクリアーしたじゃないですか。なぜまた戦うのですか!?」


「だって今はまだお昼前じゃないですか。夕方まで時間はたっぷりとあります。暗くなる前には宿に着くとして、最低でもあと5体は仕留めたいところですね。さあ、気を引き締めて行きましょう、お嬢様!」


「ひーーーーーっ!」

次回は、特訓の成果そして日常回です


ご期待ください

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