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第137話 ローレシア勇者部隊②

 俺のメンバー案を聞いたみんなは、一様に首を傾げていた。これには少し説明が必要だな。


「この案を不思議に思われる方もいらっしゃるようなので、今から理由を説明いたします。まずわたくしの親衛隊がベースとなっているのは、そもそもこの部隊がアスター王国の最精鋭部隊であり、みんな気心が知れているからです。次に役割分担ですが、全員が強力な魔力を持っているため、各人の得意分野で大雑把に割り振ってみました。いかがでしょうか」


 するとアンリエットが即座に反応し、


「なるほど、勇者部隊はあくまでローレシア様が攻撃の主体となるので、物理盾と魔法盾にエース級を置くということですね。それならアナスタシアの代わりに私が魔法盾でもよろしいのでは」


「いいえ、この部隊は様々な局面に対応するために、アタッカーもエースだとお考え下さいませ。わたくしが防御に専念する時は、アンリエットとアルフレッドに攻撃をお願いします。そしてジャネットも」


「ええ、彼女は薔薇騎士隊の切り込み隊長で別名が「狂気のアマゾネス」。困難な局面を打破するには最適のアタッカーとなるでしょう」


「そうね。何をしでかすか分からないジャネットは、いわばジョーカー。それから魔法アタッカーはやはり魔法王国ソーサルーラの方にお願いしようと思うの。一応ジャンは確定なのですが・・・」


 すると、隣で黙って話を聞いていたクロム皇帝が、


「それなら余が魔法アタッカーをやってやろう」


「クロム皇帝が?」


「確かに魔法盾役は、そなたを守護する役目としては申し分ないのだが、攻撃魔力は余もそれなりに自信がある。よって、余が魔法アタッカーの二人目としてエントリーしてやろう」


「クロム皇帝がそうしたいのでしたら、わたくしは別に構いません。ではクロム皇帝の手腕に期待させていただきましょう」


「うむ、存分に期待するがよい」


「それから支援魔法と補給部隊についてなのですが、わたくしたちの部隊はクロム皇帝を始めとして、王族やら高位貴族が中心となるため、軍用の装備を身につけるにしてもやはり生活支援が必要だと思うのです。みんな一人ではロクに何もできませんからね。それでこの7人はわたくしのメイド軍団を充てることにいたします。もちろん彼女たちも魔力を持っておりますし特に支援魔法担当の3人は魔法アカデミーの上位組織の研究科に所属しており高度な訓練を受けています」


「私もある程度のことはお手伝いできますが、やはり戦うメイドがいた方が助かります。とてもいい考えですね、ローレシアお嬢様」




 アンリエットが人選に納得したことで、ここにいる全員がこれで決まりかと思っていたところ、アルフレッドの隣に座る一人の少女がいきなり立ち上がった。


「少しお待ちくださいませ、ローレシア様!」


「レスフィーア様?」


「わたくしもその勇者部隊に参加させてください!」


 アルフレッドの妹のレスフィーア公女が、突然メンバーに立候補した。だが、レスフィーアをメンバーに入れるのはさすがに危険。


「レスフィーア様・・・失礼ですがこれは魔族との戦いで、相当な戦闘訓練を受けた精鋭でなければメンバーは務まりません。ですのでレスフィーア様は」


 俺がキッパリお断りするが、それでもレスフィーアは食い下がり、


「わたくしは補給部隊に志願いたします。実はわたくしのコレクションの中にとてもいい魔術具があるのです。大量の物資を収納して運ぶものなのですが、その収容能力が100人の部隊の食料1週間分に相当します。この勇者部隊が20名ですのでその5倍、5週間分の食料は私一人で輸送することが可能なのですよ」


「ほ、本当ですか、レスフィーア様」


 もしこれが本当なら、レスフィーアを補給部隊に入れる価値は計り知れない。


「もちろん本当です。もしお疑いになるのでしたら、今すぐわたくしのコレクションルームにご確認に来てください。今すぐに、さあ! さあ!」


 レスフィーアの目が輝き始めた。また俺をコレクションルームに連れていくつもりだ。


「わ、わかりました! レスフィーア様のことは信用いたしますので、確認は不要ですっ!」


「そ、そうでございますか・・・とても残念です」


「で、では、補給部隊はレスフィーア様が参加されるということで・・・」




「ちょっとお待ちください!」


 突然大きな声が上がると、王国運営チームで議論に参加していたはずのマーカスがこちらのチームに飛び込んできた。そして、


「ローレシア様! このマーカスめも是非補給部隊に加えていただきたい。腕力には自信がありますし、何より女王様の下僕としてこの身をお捧げいたしたく」


 俺の足にしがみついて熱い目線を向けるマーカス。だがレスフィーアのような美少女ならともかく、俺はオッサンに言い寄られても全然嬉しくない。そして、何より気になったのが、


「女王様の下僕って・・・マーカスっ! そのような人聞きの悪いことをおっしゃらないでくださいっ! わたくしはあなたの女王様ではございませんので、そんなはしたないプレイは別の店でやって来なさい!」


「はしたないって・・・ローレシア様はアスター王国の女王様じゃないですか。それに別の店とは?」


 ・・・そうだった。オッサンが言うと、違う女王様に聞こえるから不思議だ。


「・・・こほん、確かにわたくしは女王でしたわね。でもマーカス、変な勘違いをするといけませんので、今後はその言葉遣いにも、十分お気をつけなさい」


「はて・・・ローレシア様がどのような勘違いをなされたのか、このマーカスめも全く理解できませんが。だが勘違いはいけません。今後のためにも、どのような勘違いをされたのか、ぜひ具体的かつ詳細に教えていただきたい!」


「・・・マーカスっ! もうそんな話はどうでもよろしいのですっ! それよりもマーカスには王国の治安を守ってもらう必要がございますので、あなたを勇者部隊に参加させることはできません」


「いいえ、是非ともこのマーカスめをお供に! それとあともう一人参加希望者がいるのです」


「もう一人ですって?」


 マーカスの後ろを見るとそこにもう一人の男・・・レイス子爵が控えていた。


「レイス子爵・・・まさかあなたまで志願を」


 するとレイス子爵が突然床に土下座して、


「ローレシア女王陛下、私は見せしめに処刑される所を女王陛下に命をお助けいただき、しかも貴族としてそのまま召し抱えていただきました。この大恩にいつかお返しができればと思っておりましたが、ついにその機会が巡って参りました。是非この私めを魔族討伐のお供にお連れ下さい。この身に代えても、必ずやローレシア女王陛下をお守りいたす所存です」


 そしてマーカスがレイス子爵の隣に並んで、二人で土下座を始めた。オッサンのダブル土下座か・・・。


 だが二人とも、土下座をしながらも顔をあげて俺を見据えるその眼差しは、まさに本気! これほどやる気に満ちた眼差しを見せつけられて断れるほど、俺は冷酷にはなれなかった。


「わかりました。マーカスもレイス子爵も勇者部隊への参加を認めましょう」


 すると二人は満面の笑みを浮かべて、


「このマーカス、望外の喜びっ!」


「ありがとうございます。このレイス、マーカスともども死んでもローレシア様に忠誠をお誓いします」


「二人とも忠誠は結構なのですが、自分の身の回りのことは自分でしなさいね。ただでさえメイド枠をあなたたち殿方が使ってしまったのですから」


「承知しました。では我々二人が、ローレシア様専属のお世話係に・・・」


「結構ですっ! あなたたちはクロム皇帝とかお父様の面倒でも見ていなさい!」





「それでは大体メンバーが決まりましたが、魔法盾役と魔法アタッカーがまだ1名ずつ足りませんね。これをメイド軍団にお願いするのはさすがに酷ですので、別の当てを探す必要がございます」


 俺がそう言うと、ジャンが張り切ってこう答えた。


「お嬢、ランドルフ王子に相談しよう。多分王子自身がメンバーに加わると思うし、あと一人なら騎士団の最精鋭を紹介してくれると思うよ」


「そうですね。どちらにしてもソーサルーラ国王にはご報告しておきたいので、さっそくソーサルーラに行って、残りのメンバーを探しに行きましょう」

次回、勇者部隊の陣容が固まる


お楽しみに

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