表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

136/200

第136話 ローレシア勇者部隊①

長くなったので、エピソードを3つに分けました



「という訳ですのでリアーネ様。今日からしばらくの間、ブロマイン帝国の皇帝をしていただけますか?」


「はあ?」




 俺は先ほどの会合の結果を、部屋の外で待っていたアンリエット、リアーネ、アナスタシアの3人に手短に説明したのだが、説明すればするほどにリアーネは余計混乱していった。


 そして話を全て聞き終わると、


「何なのですか、そのメチャクチャなお話はっ!」


「あの、いえその・・・」


 怒られた。


「いいですかローレシア様。いきなりローレシア様が出陣するのもおかしいですし、クロムが皇帝のくせに勇者部隊のメンバーになるのもおかしいです。それになぜクロムは政敵だったわたくしを平気でブロマイン帝国の皇帝の座につけられるのですかっ!」


 リアーネは自分の疑問を一気に捲し立てると、手をワナワナとさせていた。


 やばい、リアーネはかなり怒ってる!


「ぜっ、前提からして、色々と話がおかしいのはわたくしも承知しているのですが、会合の流れというか、勢いというか、結局それで押し切られてしまったのです。大変申し訳ございませんでした・・・」


 俺が頭を下げて謝罪するとリアーネも慌てて、


「頭をお上げくださいローレシア様。わたくしは別にローレシア様に対して怒っているわけでないのです。それよりもそんなお話をお受けしてしまって、本当によろしいのですか?」




 リアーネが俺を心配する表情を見せつつも、クロム皇帝をギロリと睨みつける。だが彼は相変わらず飄々とした顔でリアーネに答えた。


「別に構わんではないか。余は女王であり妻でもあるローレシアのお供をするだけであるし、その間そなたに余の代理として皇帝の仕事を任せるだけだ。そなたも帝王教育を受けていたのだから、引き継ぎなど必要あるまい」


「そんなことを心配してるのではございませんっ! それよりもクロム、あなたは帝国皇帝の地位を何だと思っているのですか! あの血で血を洗った帝位争いは、あなたにとって何だったのですかっ!」


 完全に怒り心頭のリアーネにクロム皇帝が飄々と、


「そんなに堅苦しく考えることでもあるまい。そもそもリアーネ、そなたは余に処刑されそうだったところをローレシアに命を救われた身。余の妻に忠誠を誓ったそなたなら、余の代理をすることぐらいそれほどおかしくもなかろう。なあに、毎日定期連絡は行う故、すべての事案について余が判断してやろう。必要なのはそなたに流れる皇家の血だけだ」




 クロムへの怒りと俺への心配が混ざった複雑な表情をしたリアーネが、


「くっ・・・クロムのその言い方が実に気に入らないのですけれどわたくしのことは置いておきましょう。それよりローレシア様、本当にこんな話を受けてしまってもよろしいのですか。このままだと本当にクロムと結婚させられてしまいますよ」


「わたくしもそれはだけは困るのですが、もうシリウス教会の大聖女にもなってしまったし、後に引けなくなったのです。でも皇帝の結婚にはどうやら元老院の同意が必要らしいので、議会工作をすれば結婚は何とか回避できそうです」


 そう、リアーネには元老院の議会工作で力を貸してほしいのだ。しかし、


「えっ? ローレシア様はシリウス教会の大聖女にもなられたのですか」


「・・・はい、この通り」


 なぜかリアーネが大聖女の話に興味を示したので、俺はさっき総大司教からもらった指輪をリアーネに見せた。すると彼女はゴクンと息を飲みながら、


「その指輪の紋章は、最高位の神使徒のみに許されたアポステルクロイツ!」


 それだけ言うと彼女はゆっくりと俺の前に膝をついて神に祈り始めた。そして、


「神使徒ローレシア様。この不肖リアーネ、愚弟クロムに成り代わりブロマイン帝国皇帝の職を務めさせて頂きます」


 リアーネは敬虔なシリウス教信者だったのか。彼女も色々と言いたいことがありそうだったのに、真剣な顔で俺の頼みを承諾してくれた。・・・だが、本当にこれでよかったのだろうか。


 俺は一抹の不安を感じつつも、とりあえずリアーネが代理皇帝を務めることは了承してもらった。




「ありがとう存じますリアーネ様。ではわたくしたちはアスター王国の運営体制と勇者部隊のメンバー編成のために、今すぐにアスター王国へ帰還いたします。リアーネ様には申し訳ないのですが、お一人でここに残っていただいて、そこにいるヴィッケンドルフ公爵と帝国側の体制を三日で整えてくださいませ」


 そう言うと俺は後ろにいる「くそ公爵」を指差した。


「え・・・このわたくしが、ヴィッケンドルフ公爵なんかと? しかしこの男は・・・」


「ふん! こっちもそなたなど願い下げだ」


 ヴィッケンドルフ公爵とリアーネが、お互い嫌な顔をしながら睨みあっている。


 ・・・あ、そうか。この二人は魔族に対しては主戦派と融和派で考え方が水と油だったっけ。それ以外にも色々と因縁がありそうだし、リアーネには少し悪いことをしたな。


 だが、ふとクロム皇帝を見ると「してやったり」という表情を見せている。きっと確信犯なのだろう。


 だが、こと帝国のことについては俺にもこれ以上はどうしようもない。3日で勇者部隊を出陣させることで話が動いてしまっているし、申し訳ないがリアーネを一人残して俺たちはアスター王国へと転移した。





 アスター城に戻った俺は、さっそく応接の間に王国の主要幹部を集め事情を話した。俺の隣にクロム皇帝が座っていたからかも知れないが、その場はハチの巣をつつくような大騒ぎになり、急遽、魔族対応プロジェクトチームが立ちあがった。


 このプロジェクトは①女王であるローレシアが遠く魔界の境界門に派遣されている間の王国の運営態勢、②帝国から要請される予定の保有兵力の20%の派兵準備、③ローレシア勇者部隊の人事を議論する。


 ところでこの勇者部隊だが、魔界の境界門へは広大な帝国を東西に横断する必要があるため、途中で軍の転移陣を使うこととなる。その定員の制約からメンバーは最大20名となっている。


 帝国軍ではこれで一個小隊なのだそうだが、俺達が実際に最前線で魔族と戦う際は、帝国軍10万の兵を自由に使えるらしい。すごっ!





 さてその勇者部隊のメンバーだが、概ね決めていた案をみんなに発表した。



勇者 ローレシア


物理盾役(3)

ロイ、ケン、バン


魔法盾役(3)

イワン、アナスタシア、クロム皇帝


物理アタッカー(3)

アンリエット、アルフレッド、ジャネット


魔法アタッカー(3)

ジャン、(未定)、(未定)


支援魔法役(3)

アンナ・マーブル

キャシー・リンドン

ケイト・バークレイズ


補給部隊(4)

マリア・ローゼス

ノーラ・マックス

エレノア・レイモンド

カトレア・ブルボン

次回、俺の案に「待った」がかかる


お楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 学生や女性が多くさすがに外面が悪いといちゃもんでも入りました金。 [一言] 勇者がどのような状況で打たれたのか(原因や戦訓)もわからないのに準備も何もあるのかと思ったら、それ書いたらネタバ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ