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第115話 ブロマイン帝国皇帝との取引

またエピソードが長くなりすぎて2話に分けました


後編はあとでアップします

 キュベリー公爵騎士団の装備を身に着けたイケメンが自らを皇帝と名乗ると、縄で縛られていたフィリップが慌ててひれ伏した。


「こ、これは皇帝陛下! どうしてここにいらっしゃるのですか!」


「これは義兄殿。いやなに、ローレシアから送られた例の映像宝珠を見て、我が姉リアーネを救い出そうとそなたの騎士団員に変装して忍び込んだだけだ。だがおかげで大層面白いものが見れたよ」



(こいつ、本当にブロマイン帝国の皇帝なのか。ローレシアは知っていたのか?)


(いいえ、わたくしも存じ上げませんでした。ですがフィリップがあんな態度を示しているのですから、本物の皇帝で間違いないかと)


(だったら皇帝がなぜこんな場所にいるんだろう)


(それはわかりませんが・・・皇帝自らがリアーネ様の救出に来るとは思えないんですけど)




 皇帝はしばらくフィリップと何やら話をしていたが、それが終わると再び俺に話しかけてきた。


「さてローレシア。余と話し合いをしないか」


「話し合いですか?」


「そうだ。そなたはキュベリー公爵を倒して、フィメール王国の内戦を制した」


「はい、公爵家の降伏で内戦は国王側の勝利で幕が降りました。つまりブロマイン帝国は救援要請に応じる対象を失ったので、この内戦へ介入する根拠を失いました。したがって直ちに王国からの退去を願います」


「そなたの言は理解したが実はそうも行かないのだ。なぜなら公爵家の降伏の前に、我がブロマイン帝国軍が先に王都を占領してしまったからだ」


「まさか、昨日の今日でそんなはずは!・・・本当に王国騎士団が負けたのですか?」


「左様。我が軍は今、王都の占領を着々と進めており、フィメール国王やそなたの盟友であるアルフレッド王子は拘束して地下牢に監禁してある」


「・・・監禁。すると二人とも命は無事なのですね」


「そうだ。だからこれから余とそなたの二人で、このフィメール王国の今後について話し合う必要がある」





 その後武装解除した公爵騎士団を連れてアンリエットやブライト男爵、そしてランドルフ王子たちが続々と集結してきたが、俺の隣にブロマイン帝国皇帝とその護衛騎士たちがいることに気が付くと、何が起こったのか全く理解できず、まさに開いた口が塞がらない様子だった。


 俺はみんなに事情を説明した上で、再び身体の操作をローレシアに代わると、ローレシアはアンリエットと薔薇騎士隊に命じて、テーブルや椅子、それに適当なお茶や茶菓子を用意させた。


 そしてこの戦場のど真ん中で、ブロマイン帝国皇帝クロム・ソル・ブロマインと、魔法王国ソーサルーラの第2王子のランドルフ・ソーサルーラ、そして現時点でフィメール王国軍の最高位となるローレシア・アスター侯爵の3者による、フィメール王国の戦後体制が話し合われることとなった。


 その会談の口火を切ったのはローレシアだ。




「まず最初に、ブロマイン帝国の立場を確認させてください。帝国はキュベリー公爵家からの要請を受けて公爵軍を支援するために派兵をしてきたということで間違いございませんか」


「その通りだが、一つ修正する必要がある。支援要請は公爵家からだけでなくフィメール王家からも出されていたのだ」


「フィメール王家からですって? それはあり得ません。現に王都周辺では王国騎士団と帝国軍による戦闘行為が行われていたではありませんか」


「確かに戦闘行為は行われた。だがそれは現フィメール国王と第3王子となったアルフレッドに率いられた王国騎士団との戦いであって、フィメール王家はなにも彼ら二人だけではない」


「なるほど・・・。それでは一体だれが支援要請を。第1王子ジェームズかその母である王妃からでしたらキュベリー家ですので」


「いや彼らではない。第2王子・マークから出されたものだ」


「第2王子ですって? だって彼は人質・・・はっ」


 ローレシアが何かを察したのを見て、クロムはニヤリと笑った。


「彼は常々心を痛めていたのだ。フィメール王国は公爵の力が強大でいずれ国を2分する権力闘争に発展すると。そして多くの血が流れて傷つくのはいつも無辜な領民たちであると。だから公爵家からの救援要請を知った彼は余に願い出た。帝国の力で王国の内乱を鎮めてほしいと」


「くっ・・・よくもそんなデタラメを」


「デタラメではない。まあ多少脚色はあるが第2王子の要請に基づき王国の内乱を鎮めたため、帝国は第2王子も内戦を制したとの認識であり、引き続き王都に駐留し、マークの国王戴冠を承認するつもりだ」


「自分の意思を表明できない人質を使って傀儡国家を仕立て上げただけでしょ。・・・では現国王とアルフレッド王子はどうなさるおつもりしょうか」


「国王は当然処刑、第3王子も処刑か、地下牢に生涯幽閉することになるだろうな」


「では取引をしませんか。こちらもあなたのお姉様であるリアーネを拘束しています。人質の交換を」


「リアーネなど殺しても構わん。ヤツは腹違いの姉で余との政争に敗北した邪魔な皇女。処刑する代わりに政略結婚に使ってやっただけだが、その家門もローレシア、そなたが滅ぼしてしまったため最早用済みだ。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」


「そんな・・・リアーネ皇女がそのような扱いだったなんて」


 ローレシアは交渉の入り口で、帝国に対する唯一のカードを失ってしまった。





「さて、帝国の立場がはっきりしたところで現状の確認だ。ブロマイン帝国は現在王都フィメールを占領中であり、アスター家は旧アスター侯爵領及び旧キュベリー公爵領の二つを占領中だ。だがこの2領は領地が広くこれだけで王国のほぼ半分。そしてローレシアは魔法王国ソーサルーラの侯爵であり、結果的にソーサルーラとブロマイン帝国でフィメール王国を二分している状態だ。ランドルフ王子、ソーサルーラの立場を確認したい」


「わかった。我が王国の国是は武装中立であり、原則として他国への侵略は行わない。だが我が王国の貴族の中にはローレシアのように領地が他国の領域内にある場合もあり、我が王国はそのような貴族の要請に応じて軍事的に保護することとしている。したがって、アスター侯爵家が我が国の貴族である限り、ソーサルーラは軍事支援を継続する」


「それは我が帝国と戦うことになってもか」


「もちろんだ。それが武装中立たる我が王国の国是であり、小国ながら戦うなら徹底的に戦うのみだ。だがそうなって困るのは帝国の方ではないのか」


「・・・そうだな。ソーサルーラには大量の魔術具を含めた魔導技術の提供や魔石の融通で世話になっている。今これを止められたら我が帝国は立ち行かなくなる」


「我々両国が戦っても、誰も得をする者がいないということだ」


「ということでこれ以上の戦闘行為は無意味であり、余はローレシアに現時点の状態を持っての停戦を申し入れる」


「現時点の状態って・・・」


「我々二人がこのフィメール王国を2分している状態をお互いに認めることだ。もしこの申し入れが認められなかった場合、残念ながら誰も得をしない不毛な戦争が再開される。つまり帝国軍の一部はアスター家の領地への侵攻を開始する。そなたはこのキュベリー家の領地を捨てて自領を守るか、この領地のみを自分の領地として守り抜くか、そのどちらも失ってこのフィメール王国から去るか。その結果が出るまでさらに多くの血が流れることになるだろう」


「・・・・・」


「どうしたローレシア、即答が出来ぬのか。これは余の破格の提案なのだがな」





(ナツ、どうしよう・・・)


(どう考えても停戦に応じた方がいいと思うが)


(わたくしも今すぐ戦争が終わるならそれがいいのですが、勝手にフィメール王国を半分にしちゃっていいのかな)


(・・・だよな。ローレシアの故国とはいえ人の国だし、即答しろと言われてもなあ)


(そうよね・・・せめてアルフレッド王子がそばにいてくれたら)


(でも王子は今はいないし、俺たちだけで決めなければいけない)


(・・・ちなみにわたくしたちが王都フィメールを取り返す方法はございますか)


(うーん・・・状況的に考えて、今の俺たちには無理だろう。何も作戦が浮かばないよ)


(ではやはり王国を半分にするしか方法はないのね)


(ああ。皇帝はその気になれば俺達からさらに領土を切り取れるがそれをせずに半々で手を打つつもりだ。なら俺達はとっとと戦争を終わらせることを考えて、もし王国の統一がしたければ、それは俺たちではなくフィメール国王やアルフレッド王子がやればいい)


(そ、そうよね・・・わかったわ。皇帝の提案に応じることを前提に、二人を引き渡してもらえるようもう一度交渉してみます)

この続きは完成したらアップします


夕方かな・・・

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