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第112話 死闘! ローレシア vs キュベリー公爵②

 キュベリー騎士団の陣形をじっと見つめていたローレシアは、敵両翼の陣形が動きはじめたのを即座に察知し、各騎士団へ伝令を飛ばす。


「敵は中央への一点突破を図るつもりです。我々も敵の動きにあわせて、敵を包み込むように中央に集まる敵を包囲してください」


 ローレシアの指示により、両軍は連動するように中央に騎士たちを集めた。キュベリー公爵側が縦に長い楕円形の陣形をとれば、アスター連合軍側はそれを受けるような凹レンズ型の陣形へと変形させていき、戦況が新たな膠着状態へと遷移した。




「公爵側が騎士を密集させたことでバリアーの防御力が高まり、魔法攻撃が効かなくなってきました。このまま時間が経過すれば、グロウの効果が切れてわたくしたちの戦闘力も下がってしまいます。その前になんとか打開したいのだけど何かいい作戦はないかしら」


 ローレシアの問いかけにロイが、


「これは騎士団の本来の戦い方では全くないのだが、ローレシア様だからこそできる方法がある」


「わたくしだからできる方法?」


「ああ。要は敵の魔導師を倒してバリアーを消失させればいいんだ。ローレシア様はさっきのグロウで消費した魔力は回復したか?」


「マジックポーションのおかげでかなり回復しております。それで策とは」


「カタストロフィー・フォトンで敵魔導師を倒そう」


「あの魔法ですか・・・。確かにあれは、バリアーを無視して敵を攻撃できますが、一度に数十人程度しか倒せません。でも敵はまだ千人以上いて誰が魔導騎士かも分からないのに、バリアーが消失するほどあれを撃ったら、わたくしの方が死んでしまいます」


「いや魔導騎士が誰かならわかるんだ」


「え? みんな同じ制服を着てますが・・・」


「魔導騎士は一種のエリートで、制服の何処かに紋章をつけてるんだ。ほら俺のは胸についてるだろ」


「あ、本当ですね」


「これは王国騎士団でもキュベリー公爵の騎士団でも同じなんだ。だからこの紋章持ちが集まってる方向に撃てば、敵魔導騎士をまとめてなぎ倒せる」


「なるほど、さすが王国のエリート騎士ですねロイ。その作戦で行きましょう。お父様もお願いしますね」


「この若い身体なら、もう少しましな魔法が撃てそうだ。私に任せておけ」


「では各騎士団に伝達。カタストロフィー・フォトンを使用しますのでので、発射の合図が出たら目をつぶり、親衛隊のいる方向を見ることを禁じます」






 キュベリー公爵は、自軍の動きに合わせて敵が素早く陣形を変えたことで、結局中央突破が果たせずにまた膠着状態になってしまったことに、イラ立ちを隠せなかった。


 だが、バリアーが強化されて味方の被害が抑えられた今こそ、一気に戦局をひっくり返す好機と捉えて、各部隊に伝令を送り味方に突撃命令を出した。


「よーしここが勝負どころだ。多少の犠牲は構わん。一気に混戦状態を作ってローレシアを引きずり出し、串刺しにしてやる」



 公爵がニヤリと笑ったその時、閃光が走った。



 敵中央付近から強烈な閃光が放たれたかと思うと、公爵の目は何も見えなくなり、一瞬遅れて目に強烈な痛みを感じた。


「ぐわーっ! 何だこの強烈な光は!」


 公爵は思わず目を押さえて視力の回復を待つが、その耳には騎士たちの阿鼻叫喚が、遠くに聞こえた。


「何だ・・・何がどうなっている! くそっ目が全く見えん。おい誰か状況を報告しろ!」


 公爵は側近に状況を確認しようとするが、騎士団全体が同様に視力を失っている状態であり、しばらく何が起きたのかはっきりとしない状況が続く。


「全員目をやられたのか・・・。だが、光魔法ライトニングにしては光が強烈すぎる。きっとローレシアのヤツが何かやったに違いない」


 依然目は見えないが、遠くの方で騎士たちの悲鳴や助けを求める声がどんどん大きくなってきた。


「これは明らかにライトニングではない。我々は何らかの魔法攻撃を受けたのだ・・・」




 そこで側近がようやく公爵の問いかけに答えた。


「公爵・・・この攻撃は、ブライト男爵領に派遣していた騎士団からの報告にあった、ローレシアの大魔法の可能性が高いと思われます」


「ローレシアの大魔法だと? ・・・そんなものワシは報告を受けていないぞ」


「申し訳ございません。実はあまりに大げさな報告だったため、公爵のお耳に入れるのをためらいました。例のブライト男爵領で我が騎士団がローレシアに大敗を喫した際、ヤツが放った大魔法で騎士数十名が一度に消滅したとのこと。これはその時に使用された魔法である可能性が高いと思われます」


「一度に数十名が消滅。確かにそんなバカげた魔法は聞いたことがないし、実際に撃たれて見なければそんなもの信じられんが、この状況なら信じざるを得ん。これは確かにローレシアが放った攻撃魔法なのだな」


「はい。おそらくは」


「だがそれでもたかが数十名だ! 我が騎士団を根こそぎ殲滅できるわけではないのだから、このまま構わず突撃の準備を急げ」


「はっ! すぐに突撃を開始いたします」


 だがこの時公爵は、視力が回復するまでのこのわずかな時間が、自らの命運を左右する致命的なタイムラグになったことに、まだ気付いていなかった。





 公爵は閃光のダメージから視力を回復させると、すぐに騎士団の被害を状況を確認する。


 悲鳴の上がっていた方向を見ると、バリアーの展開を担っていた魔導騎士の大半が忽然と姿を消し、その近くにいた騎士が苦しそうにのたうち回っていた。


「うわっ! ・・・何だこれは、ひどすぎる」


 騎士団を覆っていたバリアーもその強度を大きく損ない、閃光が走る前の2、3割、つまり推定で7~8割の魔導騎士が失われた可能性があった。


「そうか・・・ローレシアの例の大魔法で魔導騎士をピンポイントに狙われたのか・・・」


 そして間髪を容れず、公爵の頭上に多数の魔法陣が浮かび上がり、アスター騎士団による遠隔魔法攻撃が再び始まった。


 うわーーーっ!


 ぎゃーーーっ!


 ひーっ!


 バリアーの防御力が大幅に低下し、一方的に魔法攻撃を受ける展開に逆戻りした公爵騎士団は、瞬く間に騎士の数を減らしていく。


 焦った公爵は、これ以上のダメージを受ける前に、アスター騎士団への突撃命令を徹底した。


「命を惜しむな! キュベリー騎士団諸君、全軍突撃せよ!」


 うおーーーーっ!


 魔法攻撃を受けて騎士たちがバタバタと倒れて行く中、それでも乱戦に持ち込めば公爵軍が圧倒的に有利なこの状況。公爵は死地に活路を見出そうとした。


「とにかく敵との距離をつめろ! 魔法を撃てないゼロ距離に持ち込めば、その瞬間が我らの勝利だ!」


 声を枯らして騎士を鼓舞する公爵は、その時、視線の端に違和感を感じた。その方向を振り向くと、公爵軍の正面を大きく迂回しながら突撃する、20数騎の敵部隊を発見した。


「なんだあいつらは・・・あんな少人数でこんな近くまで接近し来るとは、何を考えている」


「我々が視力を失っている隙に、一気に距離を縮めてここまでやってきたのでしょう。ですが、あんな少人数の騎士などとるに足りません。たぶん手柄に飢えたただの跳ねっ返りですよ」


「そうだと思うが何か嫌な予感がする。念のためだ、アイツらに総攻撃をかけて早めに潰せ」


「はっ!」




 公爵がその騎士たちの動きを注意深く見ていると、彼らの上空に突然魔法陣が展開し、黒い球体が出現したかと思うと全員をどこかへ転移させた。


「な! あれはワームホールか、しまったっ!」


 その次の瞬間、ワームホールの出口が公爵軍の司令部付近に現れて、さっきの20数騎が転移した。


「キュベリー公爵! 覚悟なさいっ!」


「その声、お前はローレシアなのか?! まさかワームホールで自ら特攻をかけて来たとは、バカな!」


「お父様、なぎ払えっ!」



 【光属性魔法・カタストロフィー・フォトン】



「お父様? ・・・アスター伯爵なのか、マズい!」


 公爵は自分に向けられた大魔法を必死にかわすべく馬から飛び降りると、味方騎士たちのなかにダイビングして人影に隠れた。


 一瞬遅れてアスター伯爵のカタストロフィー・フォトンが発動し、公爵に乗り捨てられた馬や公爵の隠れ蓑にされた騎士たちが蒸発する。


「ぎゃーーーっ!」


 周りの騎士たちが熱線をもろに浴びて巻き添えを食らう中、公爵はそれでも必死でローレシアから遠ざかりながら、味方に突撃命令を出す。


「ローレシアが現れた! ヤツのクビを上げた者は、報奨は思うがままだ。このチャンスをものにせよ!」


 だがローレシアも公爵を逃がすまいと親衛隊に命令を下す。


「ローレシア親衛隊は各自最強魔法で自由射撃開始! お母様はトルネード・クラッシュで、公爵の隠れている付近を全て吹き飛ばしてちょうだい」


「全て吹き飛ばせばいいのね、ローレシア」


 そして、



 【チェンジ】



(ナツ、お願い! ここで必ず公爵を仕留めて!)


(わかった! 今度こそ俺に任せておけ。キュベリー邸での屈辱は3倍にして返してやる!)

次回、直接対決の行方は


お楽しみに

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