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第104話 フィリアの処分

「ではお父様とお母様。お二人がここにこうして呼ばれている理由はご理解されていますか」


「・・・ああ、分かっているつもりだ」


「ローレシアっ! あなたは親をこんなところに立たせて一体何がしたいの!」


「どうやらお母様はご理解されていないようですね。フィリアのしたことを、わたくしの護衛騎士からお聞きにならなかったのでしょうか」


「あなたまでそんなことを・・・。 そんなことよりも、あなたの護衛騎士がフィリアをどこかへ連れて行ってしまったの。早く騎士たちに命じてフィリアを解放してあげなさい。あなたの妹でしょ」


 ローレシアの母親は、相変わらず人の言うことは聞かないし、ローレシア以外の子供に対して甘い。


「もう一度お聞きいたします。お母様はフィリアが何をしたのか、本当にご存じないのですね」


「あなたもよく知っているように、フィリアはとてもいい子です。そこのアンリエットなどは、フィリアが転移陣に細工をしてあなたを危険な目に遭わせたと言っていましたが、そんなこととても信じられません」


「・・・・・」




 その時執務室の扉にノックの音がして、衛兵に拘束されたフィリアが中に連行されてきた。


 それを見た伯爵夫人が激昂する。


「衛兵っ! フィリアになんてことするのっ! 早くわたくしの娘を解放なさい!」


「お母様は黙ってて! 衛兵、フィリアをここに連れてきなさい」


「はっ! アスター侯爵閣下」


 フィリアは衛兵に引っ立てられながらも、俺をもの凄い形相で睨みつけていた。昼間の態度からは完全に豹変していて、女って本当に怖いと思う。


 だが俺はそれを受け流してフィリアに話しかける。



「ごきげんようフィリア。その眼をみる限り、どうやらあなたもここへ呼ばれた理由を理解していないようですね。あるいは罪を認めるのが嫌で、逆ギレをなさろうとしているのかしら」


「何なのよお姉様はっ! わたくしが何をしたっていうの。ただ転移室にいただけなのに、なんの権利があって騎士団はわたくしに尋問なんかしたの!」


「・・・フィリア。あなたの仕掛けた転移陣のせいで、わたくしだけキュベリー公爵邸に転移させられて、そこで待ち受けていたマーガレット様の護衛騎士に殺されそうになりました。どうしてそんなことをしたのですか」


「わたくしが使っている転移陣は、マーガレット様の取巻きとして行動を共にするために、他の令嬢たちと同様にキュベリー家からお借りしたものです。それをお姉様が間違えて使用されたのではございません?」


「そうよ! フィリアがそう言っているのですから、間違いございません。早くフィリアを解放してあげなさい」


「お母様は黙ってて! ・・・フィリア、あの魔法陣はとても特殊なもので、わたくしだけを別の所に転移させる設定がされていたの。その方法を知っているのはキュベリー公爵家の限られた人間だけ。なぜそこまでしてわたくしだけを公爵邸に転移させたのですか」


「・・・そ、それは。・・・そうだ、マーガレット様がお姉様に来ていただきたいと望まれて、わたくしが転移陣を取り付けたのでした」


「では、なぜマーガレット様がわたくしに来てほしかったのか理由を知っていましたよね」


「いいえ、存じ上げません」


「わたくし、マーガレット様からあなたのお話をいろいろとお聞きいたしましたの。あなたは自分が王家に嫁げないことを逆恨みしていて、わたくしを殺したいとマーガレット様によく相談していたと。そしてマーガレット様はあなたに頼まれて、今回仕方なくわたくしを殺害をしようしたと。だから自分は転移陣を貸したまでで、すべての罪はフィリア、あなたにあるとおっしゃってましたよ」




 するとフィリアは奥歯をギリッと噛みしめ、憎しみのこもった眼で、


「そんなのデタラメよ! マーガレット様の方こそ、自分が王家に嫁げないからってお姉様を殺そうと」


「殺そうと?」


「・・・・・」


「どうしたのですかフィリア。その続きをお言いなさい。わたくしを殺そうとしたのはフィリアですか、マーガレット様ですか、それとも両方?」


「・・・・・」


「あなたは、黙っていれば誤魔化せると思っているようですが、マーガレット様は既に白状なさいました。修道院でわたくしを暗殺したのは、マーガレット様とあなたの二人の仕業だったと。そして今日も10人の騎士たちに待ち伏せさせて、わたくしを殺そうとしましたね。あなたは2度も殺人を犯したのです。どうしてそんなことをしたのか理由を言いなさい」



 俺の追及にフィリアが黙秘を続けるが、伯爵夫人がまた騒ぎ始めた。


「ローレシアっ! それはマーガレット様の言い逃れで、フィリアはそんなことをする子ではございません。あなたは自分の妹を信じられないのですか!」


「お母様は黙ってて! フィリア答えなさい!」


 俺の合図でロイ、ケン、バンがフィリアの首に剣を突きつける。


「マーガレット様はすでに犯行を認めています。何か反論があればお聞きしますが、もしこのまま何も言わなければ、この場であなたを処刑いたします」


「ひっ!」




 俺の指に当主の指輪がキラリと光る。


 フィメール王国では、当主に自領の裁判権があり、王国法に照らして適切な理由があれば、一族や家臣、領民をその場で処断することができるのだ。


 俺の本気の表情に母親は言葉を失い、フィリアもついに観念して全てを語りはじめた。


 話の内容はマーガレットから聞いた通りで、俺には特に新鮮味のないものだったが、ローレシアの両親は初めて知ったようで、愕然とした目でフィリアを見つめていた。


「お姉様さえ死んでくれたら、全てわたくしのものになると思ってたのよ。そしてマーガレット様もそれが正しいと仰ってくれたわ。だって仕方ないじゃない。お姉様ばかり新しいドレスをたくさん買ってもらえ、王家に嫁ぐことも決まって社交界でもマーガレット様と双璧を成すほどの影響力を持っていらしたもの」


「それで?」


「それに引きかえわたくしは、ドレスもお姉様ほどは買ってもらえず、王家に嫁ぐどころか高位貴族家との婚約も決まらず、社交界でもお姉様の妹という以外に何の価値もないといつも陰口を言われておりました。この屈辱がお姉様にわかるわけございませんよね」


「くだらない。社交界の噂など気にする必要はございませんし、わたくしを殺したところであなたが手に入れられるものなど何もございません。現にエリオットの婚約者はマーガレット様に決まりました。一方のあなたは未だに婚約者が決まっていませんよね。結局あなたはマーガレット様に利用されただけなのです」


「わたくしが・・・利用されただけ」


「そうです。あなたはいいように利用されて何も得ることができなかったのに、そのことに気がつきもせず今日もわたくしを殺そうとした、ただの殺人者です。フィリア、あなた覚悟はできているのでしょうね」


「覚悟って何・・・ちゃんと全て話したじゃない! それなのにお姉様はわたくしを処刑しようというの? 約束が違うっ!」


「反論があれば聞くと言っただけで、あなたを助けるとは一言も申しておりません。そもそもあなたはわたくしを2度も殺そうとしたのです。なら当然、自分が殺される覚悟もお持ちですよね」


「殺さないで、お姉様っ! わたくしまだ死にたくないっ!」


「ローレシア! フィリアはあなたの妹でしょ。絶対に殺してはダメ!」


「お母様は黙っていて!」


「あなたはお姉さんでしょ! フィリアを殺すのはやめなさい!」


「・・・衛兵、お母様を黙らせなさい!」


「はっ!」





 衛兵に拘束されて猿ぐつわをはめられた母親の目の前で、俺はフィリアに処分を下す。


「お母様の嘆願に免じてあなたの処刑はやめておきますが、2度の殺人は十分に死罪に値します。よって、あなたにはその一生をアスター城の地下牢で過ごしていただきます」


「一生を地下牢で・・・い、嫌っ」


「フィリア・アスター、あなたを終身刑に処します。次にあなたが外に出られるのは、死んで土に埋葬される時です」


「そ、そんなの嫌っ! 許して、お姉様本当にごめんなさい! もうお姉様の命令には絶対に逆らいませんから、だから許して!」


「フィリア・・・・人を殺しておいて、今さら謝ってすむはずがないでしょ。衛兵っ! フィリアを地下牢へ連れて行きなさい」


「はっ! もたもたするな、早く来いっ!」


「嫌ーっ! お父様、お母様、助けて! わたくしがこんなことをしたのはお父様とお母様のせいでしょ! なんとかして!」


「フィリア・・・これはさすがに助けられん」


「むぐーっ! むぐーっ!」


「嫌ーっ! だったらわたくしではなく、この二人を罰して!」


「・・・フィリア、お前というやつは・・・」


「むぐーーーっ! むぐーーーーーっ!」


「お、お姉様、お願いだから助けて・・・」


「衛兵、この殺人犯を早く地下牢へ幽閉なさい!」


「さあ、早く来い!」


「ひいいいっ!」


 そしてフィリアは衛兵に引きずられながら、執務室を出ていった。

次回、ローレシアの両親の処分。

そして物語の舞台は公爵との最終決戦へ


お楽しみに

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです( ´∀` )b が、フィリアは脱走してまた暴れそうな予感がしてわくわくしています♪ヾ(*・∀・)ノ
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