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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE099:家族団欒

 家ではエルサリオンと稽古ができるとテンションが上がったエルノールがララノアとエドラヒルに嬉しそうにその事を話していた。


 「兄上はやはりすごかったです!僕もこれから一緒に稽古できるのが本当に嬉しくて、、」

 「わかったわかった。お前が喜んでるのはよくわかったよ」


 父親のエドラヒルはものすごい勢いで話してくるエルノールに少し疲れていた。


 「エルノールちゃん、良かったじゃない!」


 母親のララノアは何十年、何百年経っても息子2人を愛していて、エルサリオンとエルノールに対してはものすごく甘々だった。

 そんな母親がエルノールも大好きであった。


 「はい!母上!これから僕も兄上のように強くなって、エルフ最強の戦士と呼ばれるようになります!」

 「俺はもっと強くなるけどな」


 エルサリオンがボソッと独り言のように呟いたが、それはエルノールに聞こえていたみたいだ。


 「兄上は今のままでいいって言ったじゃないですかー!今より強くなったら僕が最強の戦士になれないです!僕を稽古して、僕を最強にして下さい!」


 エルノールはすごく理不尽な事を言っていた。


 「お前はまたこの事になるといきなり自己中心的な考えになるな。それ以外では誰よりも他人思いなのに」

 「当たり前じゃないですか!強くなりたいので!」


 強くなる事を貪欲に求め続けているエルノールを見て、エルサリオンは純粋にすごいと思っていた。

 そしてエルサリオンに一つの疑問が生まれた。


 「エルノール」

 「どうしました兄上?」

 「今でも十分強いのに、お前は何故そこまで強さを求めているんだ?何に対しての強さを身に付けたいんだ?」


 エルサリオンの疑問にエルノールは何故そんな事を聞くのかわからないといったような顔で答えた。


 「そんな事このアルフヘイムを守る為に決まってるじゃないですか!それ以外になにがあるって言うんですか?」

 「守ると言っても何からこのアルフヘイムを守るんだ?」

 「それはわからないです!」

 「わからないってお前なぁ」

 「じゃあ兄上はなんの為に強くなったんですか?何故今よりも更に強くなろうとしているのですか?」


 エルノールが何気なく発したその言葉はエルサリオンを考えさせた。

 何故自分は強さを求めたのだろうか。

 ダークエルフに勝つためか?違う。

 ハイエルフの自分なら正直そこまで鍛えなくてもダークエルフで一番強いアラグディアにも負ける気はしない。

 では何故今のような強さを手に入れたくなって、何故更に強さを求めるのか。

 そこには純粋に強くなりたいという思いもある。

 でもそれだけでは説明がつかない程に強くなる為に厳しい修練を積み、百数十年も努力し続けた。


 「なんでなんだろうな。俺が強くなりたい理由って」

 「兄上も僕と同じなんですよ!アルフヘイムを守りたい、誰かを守りたいって思ってるんです!僕にはわかります!」

 「なんで自分でもわからない事がエルノールにわかるんだよ」

 「兄弟だからです!」


 エルノールはニカッと笑顔でエルサリオンに自分の思いをぶつけた。

 そう言われたエルサリオンは薄く笑っていた。


 「、、そうか。兄弟だからわかるか」

 「はい!兄上の事ならなんでもわかります!」

 「俺は自分の事はわかっているようでわかってないのかもしれないな」


 エルサリオンは自分の事を自分よりも知っているエルノールに自分が強くなりたい理由を教えられた気がした。

 ただ、2人ともアルフヘイムを何から守りたくて強くなっているのかをわかっていなかった。

 それがこのアルフヘイムの命取りになる事をまだ誰も知らなかった。


 「お前の言ってる事が正しいとして、だったらやっぱり俺はもっと強くならないといけないな」

 「そういう事では!、、ありますが、、」


 エルノールは自分が言った事でエルサリオンのやる気を焚きつけてしまったと思い、なんとも言えない顔をしていた。


 「まぁいいじゃないか。2人とも強くなったらこのアルフヘイムも安泰なんだからな。なぁ母さん」

 「そうですね!エルサリオンちゃんもエルノールちゃんもお父さんよりも強くなって!2人とも本当に母さんの自慢の息子よ!」


 ララノアは親バカが爆発していた。


 「母上の期待に応える為にも僕は兄上よりも強くなります!」

 「エルノールちゃん、頑張ってね!」

 「はい!母上!」


 エルノールの目は燃え上がっていた。

 エルノールが乗せられすぎて、エルサリオンとエドラヒルはララノアがエルノールにやる気を出させる為にわざと発破をかけているのではないかと思うくらいであった。

 ララノアは笑顔でエルノールを応援していた。

 そんなララノアを見てエルサリオンとエドラヒルは少し怖さを感じたのだった。


 「父上、今俺は思ってはいけない事を思ってしまいました」

 「わかるぞ。俺も同じ事を思った。でもそれが母さんなんだ。あれは本心でエルノールを応援してるよ」

 「俺も全く疑ってはないんですが、疑いたくなるくらい素晴らしい母だと思いました」


 エドラヒルは素晴らしい母親を持ったと思い、エドラヒルは最高の女性に出会えたと思っていた。


 「父上、どうやったら母上みたいな女性に出会えるのですか?」

 「お前もそんな事を考えるようになったのか。そうだな、、運だ」


 エルサリオンはガクリと肩を落とした。


 「運、、ですか」

 「あんないい女、運でしか出会えないぞ。まぁでもお前もエルフ最強の戦士ならその内いい女にも出会うだろう」

 「そういうものですか、、?」

 「そういうものだ」


 エドラヒルもエルサリオンと同じエルフ最強の戦士で有名だった。

 だからこそいい女性にも巡り合え、その中でもエルフ族一美人なララノアという女性を手に入れたのだ。


 「俺は手紙もよくもらったな。お前はそういう手紙とかはもらった事はまだないのか?」

 「それくらいなら俺も毎日のようにあります。もらいすぎて誰が誰やらわからなくなっている現状です」

 「ま、毎日もらってるのか?それはよかったじゃないか!」


 エドラヒルは月に1通ある程度だったので、エルサリオンの毎日というのを聞いて驚き、少し強がっていた。


 「はい、、もらいすぎても困りものですよね、、」

 「そ、そうだな」


 エルサリオンはエルフ族一美人なララノアの血も混ざっている為、エドラヒルよりも更に美形な容姿だった。

 美男子という事と、エルフ最強の戦士ということも相まって女性からの人気も高かったのだ。


 「まぁ、急ぐ事もない。ゆっくり考えたらいい」

 「わかりました」


 エドラヒルは何故か負けた気持ちになり、急がなくてもいいと伝えた。

 そしてこの日の夜にアルフヘイムは悲劇を迎え、ある意味で最後の日になるのであった。

理想的な家族の会話の回です。

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