EpiSodE094:忠誠心
目の前のその光景に立ち尽くすしかなかった。
「正直期待してなかったが、思ってたよりも楽しめたよ。流石はエルフ最強の戦士ってところか。だが、俺と対等に戦うには程遠いな」
そして姫那達がアルフヘイムに入って来た現在に戻る。
「エルサリオン様!くそ!悪魔の分際でエルサリオン様に何をする!」
「イズレンディア、、お前だけでも生きろ、、」
「エルサリオン様ぁ!」
いつものエルサリオンならこんなところで諦めの言葉を発する事はないが、今の自分の力ではこの攻撃に対抗できる術がなかったのだ。
それ程までにザレオスの力は絶望的なものだった。
「潔いな。だが、お前のその言葉とは裏腹に心の中ではまだ生きる事を諦めてないな。俺にはわかるぞ」
ザレオスは心を読む事ができる。
その能力を使ってエルサリオンの心を読んでいた。
「そうか。だからといって何が変わるわけでもないだろう?」
「よくわかってるじゃないか。その通り。因みにこの剣は振動する剣、黒振剣。黒く光っているのは元から黒い刀身に超高速振動による熱が光を放っている。この黒振剣で両断されお前はここで終わる」
そしてザレオスは黒振剣を振り下ろす。
「エルサリオン様ー!」
イズレンディアが叫び、その叫びに呼応するようにエルサリオンはザレオスの攻撃を寸前で避けた。
「お前は口では諦めたと言い、心と体はそれとは真逆の行動をとっている。結局のところお前は生きる事を諦めきれないという事だ」
エルサリオンは口では本気で諦めていた。
だが、心が体が生きる事を諦めきれない。それは至極当然の事だった。
そして極め付けはイズレンディアの叫び。
それがエルサリオンの体を反射的に動かしたのだった。
「どうやらそうみたいだな。それによくよく考えてみれば、まだ俺は無傷だ。ダメージで言えばかすり傷を負ってるお前の方がある」
これもまたエルサリオンらしくない言葉であった。
「確かにそうだが、それは俺に勝てる根拠になっているのか?お前の最高の攻撃を俺は防御した。こんなかすり傷、戦闘に全く影響しないぞ」
ザレオスの言う通り、先程のエルサリオンの攻撃はザレオスにはほとんどダメージを与えれてなく、ほぼ完璧防御していた。
「そうか。防御したが傷ができたんだな。いい情報をもらったよ」
「何を言ってるんだお前は?」
するとエルサリオンは驚くべき行動を取る。
『暴風矢・乱舞』
先程ザレオスにほとんどダメージを与える事ができなかった全く同じ技を再度放ったのだ。
その攻撃をザレオスは黒振剣で全て薙ぎ払う。
「逆に驚いたよ。まさか全く同じ攻撃を仕掛けてくるとは。お前は馬鹿なのか?」
ザレオスの言葉は完全に無視して、エルサリオンは更に技を繰り出したのだが、、
『暴風矢・乱舞』
「おいおい、マジかよ。ついに頭のネジがぶっ飛んだんじゃないか」
ザレオスはまた全ての矢を切り落とした。
「そんな攻撃何度しても一緒だぞ。俺には無意味だ、、ん?」
エルサリオンの攻撃に集中していたザレオスは肝心のエルサリオン本体を見失っていた。
(あいつは何処に行った?俺が奴の攻撃を切り落としてる間に何処かに消えやがった)
「ザレオス様!エルサリオンなら、、」
アラグディアが何かを言おうとした瞬間、アラグディアの目の前に黒振剣の切っ先が向けられた。
「おいお前。どれだけ俺を怒らせれば気が済むんだ?俺があいつの居場所を聞いて喜ぶとでも思っているのか?」
ザレオスは完全にキレている様子だった。
「す、すみません、、差し出がましい事を、、」
「いつまで経っても使えない奴だな」
根っからの戦闘狂ザレオス。
こんな楽しい時間を奪われるのは絶対に許せなかった。
そう言ってザレオスはまたエルサリオンの捜索に戻った。
そんなアラグディアを見てイズレンディアは哀れに思っていた。
「お前、悪魔の言いなりになって、ご機嫌取りをして、生きていて楽しいか?」
イズレンディアのその言葉にアラグディアは一気に怒りの沸点を超えた。
「貴様に何がわかる!知ったような口を聞きやがって!俺だって、、」
「俺だって、なんだ?」
ザレオスがアラグディアを殺意を込めて睨みつける。
「っ!俺だって、、いや、何でもありません、、」
何か言おうとしたアラグディアをザレオスは無言で見ていた。
「、、やっぱりお前から先に死んどくか」
そう言うと、ザレオスは黒振剣をアラグディアに振り下ろした。
その瞬間、エルサリオンがアラグディアを救った。
「エルサリオン!お前、なんで、、」
「せっかく身を隠せていたのに、そんな奴の為に出てくるとはな。やはりお前も馬鹿だったんだな」
エルサリオンはアラグディアを下ろし、ザレオスの方を向く。
「仮にも仲間を殺そうとする奴に馬鹿と言われたくはないな。そしてお前のような、仲間を仲間とも思えないような馬鹿に付ける薬もない」
「誰に口を聞いているんだ?エルフの分際で」
「お前の方こそ誰がこの土地に足を踏み入れていいと言った?悪魔の分際で」
エルサリオンの言葉に、アラグディアの件でイラついていたザレオスが完全にキレた。
「ククク。クハハハハハ!いいな、お前。俺にそこまで言う奴はお前が初めてだ」
キレて少しおかしくなったザレオスにエルサリオンはここぞとばかりにあの悪魔について聞く。
「俺が初めて?マモンって悪魔はお前の上じゃないのか?」
エルサリオンがマモンと口にした瞬間、ザレオスは黒振剣を突き刺してきた。
ザクッ
エルサリオンはギリギリのところで避け、黒振剣は壁に刺さった。
「お前今なんて言った?」
「何って、マモンって悪魔は、、」
ブン
次は横に黒振剣を振ってきたが、エルサリオンは軽々と避ける。
「マモン様だろうがぁ!あのお方は俺達に何をしても許されるし、どんな命令でも従う!それ程の力を持っているのだ!そんなお方の事をマモンなどと呼び捨てで呼びやがって!」
ザレオスは自分を挑発した事よりもマモンの事を呼び捨てにした事の方が癇に障ったのだった。
これだけ見てとっても、ザレオスのマモンに対する忠誠心が異常に高い事がわかった。
「お前ほどの奴がそこまで言うのか。七大悪魔で強欲のマモンは相当な奴なんだな」
「エルフは同じ事を何度も言わないとわからないのか?マモン様だと言ってるだろ!」
ザレオスはそう言い、憤怒の表情でエルサリオンに斬りかかってきた。
その攻撃をエルサリオンはまた避けた。
「さっきからそんな単調な攻撃が当たるわけないだろう」
「チッ。ふぅー」
ザレオスは舌打ちをし、深呼吸をして、心の乱れを抑えた。
そして再度エルサリオンを見た。
その視線にエルサリオンは背筋が凍る感覚がした。
瞬きしたその瞬間に目の前に黒振剣が振り下ろされていた。
ザクッ
黒振剣はコンクリートの地面に刺さっていた。
エルサリオンはギリギリのところで避けたが、ザレオスの攻撃は当たっており、左腕を切断されていた。
「ぐっ、、いらない事を言ってしまったみたいだな。さっきとは格段にスピードも威力も上がっていた」
「お前のお陰だよ。お前が言ってくれなかったら俺は怒りのままに暴走して、負けていたかもしれなかった。お前は最後のチャンスを逃した」
ザレオスの攻撃により、片腕を失ったエルサリオン。
この絶望的な状態でエルサリオンはどうやってザレオスに勝つのだろうか。
エルサリオンvsザレオスのクライマックス!?




