EpiSodE090:揺るがない心
姫那は体調不良で少し休んでいた。
あかりが姫那を治そうとしていたが、物理的な傷なら治せるが、精神的な心の傷は他人には治せなかった。
「姫那、、」
「あかり、ごめんね?心配かけちゃって、、」
「あ、起こしちゃった?ごめん!」
「ずっと起きてたよ。なんか寝ようにも色々考えてたら眠れなくて、、」
「、、そうだよね。そんな事があったらそうなっちゃうよね、、」
「・・・・・」
あかりの言葉に姫那は言葉を失った。
そしてあかりが呟く。
「エリーは私達の事、もう仲間と思ってなかったのかな、、」
その言葉を聞いた姫那は目の色が変わった。
「それはないよ!エリーは今までもこれからもずっと仲間だし、エリーもそう思ってる!」
「う、うん、、そうだよね。ごめん」
姫那は少し声を荒げてしまっていた。
それにあかりびっくりして声が怯えていた。
「あかり、、ごめん、、私感情的になっちゃって、、怖がらせちゃったよね」
「姫那は悪くないよ!私が変な事言ったから、、」
そこから少し間、無言になった。
そして、、
「もうやめよ!いつまでもこんな事言っててもなんにもならないよ!これからどうしていくか一緒に考えようよ!」
姫那が空気を変える為というのと、本当にこんな事を考えていても何も進まないと思い、気持ちを切り替えた。
「うん、、そうだね!エリーにも何か考えとかあると思うし!」
一度自分に起こった事は忘れて、何故エルサリオンがこういう行動に出たのかという事をみんなで考える事にし、気持ちを落ち着かせてみんなの元に向かった。
「ごめん、みんな!」
「あ!姫那さん!もう大丈夫なんですか?」
「うん!もう大丈夫だよ!ごめんね、心配かけちゃって!」
「大丈夫そうでよかった」
「夏生、、うん!ありがとう!」
姫那がキョロキョロしていた。
いつもなら必ずいち早く駆け寄ってくるはずの子が何処にもいなかったからだ。
「ルーナは何処いったの?」
「ルーナならお前の為に飲み水を探しに飛んでいったよ。俺らが持っていた水がもう無くなったからな」
「そうなんだ、、みんなに心配かけちゃってるな、、」
「お前はいつもそうだよ。だからそんなに気にするな」
「いつもって、それ慰めになってないよ!」
「別に慰める気もないしな」
「なんでよ!ここは普通慰めるところでしょ!」
いつの間にかいつもの自分に戻っている事を姫那は自分でも気付いていなかった。
「それで、どんな感じだったんだ?エリーは」
夏生は姫那が寝込んでる間もずっとエルサリオンの不可解な行動について考えていた。
「うん!それなんだけど、私もずっと考えてて、やっぱりなんかおかしかったんだよ!」
「、、やっぱりそうか」
「そうかって、夏生何かわかってたの?」
「さっきエリーが『お前の力はもう借りない』と言ってたとお前は言ったよな?」
姫那が倒れる前の言葉を夏生は覚えていた。
「うん!言ってた!」
「それがずっと引っ掛かってた。どういう意味なのか、、それはここに来た時と一緒の事をエリーが感じたんじゃないかってな」
「来た時と一緒の事ってどういう事?」
「俺達の身を案じて悪魔から遠ざけたって事だよ。あいつ、最初は俺達にアルフヘイム奪還を手伝わせる気がなかっただろ」
「あ!そういえば、そんな事言ってたかも!もう自分のせいで誰かが傷付くのを見るのは嫌、とかなんとか、、」
「そうか。てか、そんな大事な事忘れるなよバカ」
「バ、バカって何よ!今思い出したんだからいいじゃん!」
「まぁそんな事今はどうでもいいか。それよりも、、」
「これからどうするか、、ですね!」
「あぁ」
そしてこれからどうするか話し合おうとしたその時。
「お姉ちゃーーーーん!」
「あ!ルーナ!うわっと!」
ルーナが勢いよく姫那の胸に飛び込んできた。
「お姉ちゃん!もう大丈夫なの?」
「うん!もう大丈夫だよ!心配かけちゃってごめんね!」
「ううん、元気になってよかった!」
ルーナは歯を出してニカッと笑った。
「よし、全員揃った事だし、話を進めよう。と言ってももうどうするかは決まってるがな。そうだろ?姫那」
「、、うん。決まってる、、私達もアルフヘイムに行く!エリーになんて言われようと、落とされたとしても、絶対に行く!」
姫那の目は夏生を真っ直ぐ見ていて、今までで1番やる気に満ちた目をしていた。
「俺も全くの同意見だ。他のみんなはどうだ?」
「私も同じ!というか私以外誰も飛べないんだから私が行かないと誰もアルフヘイムに行けないじゃん!」
「僕もです!僕に何が出来るかわからないですが、少しでもエリーさん達の力になりたいです!」
「私も、、私も一緒!みんなの怪我は私が治す!」
全員の目に火が灯っていた。
何があろうと、何をされようとエルサリオンは仲間であり家族だと全員が思っていた。
そして夏生の口角が一瞬あがり、また真顔に戻った。
「じゃあ決まりだな。だが、一つだけ問題がある」
「問題?何が問題なの?」
「人数だ。今この中で飛べるのはルーナだけだ。それに比べて姫那、葵、あかり、俺は飛べない。という事はルーナが俺達4人を抱えて飛ばないといけないんだ」
そう。今まではエルサリオンがいたから分けて運んでいたが、今はルーナ1人。
この状況でどうやって全員でアルフヘイムに行くのかが問題であった。
「確かに、、どうしよう、、」
姫那達が悩んでる時に1人だけ前向きに考えている者がいた。
「私が全員アルフヘイムに連れて行くよ!」
「ルーナ、出来るの?4人なんてやった事ないでしょ?」
「お姉ちゃん、今は出来るかどうかの問題じゃないと思うんだ!やるかやらないか、、だったら私はやるよ!」
こんなにも頼もしいと思った事はない。
まだ成功もしていないのに今のルーナの顔を見たら期待せずにはいられなかった。
「わかった!じゃあお願いね!ルーナ!」
「うん!任せて!」
アルフヘイムまでの移動はルーナに任せる事になった。
「ルーナ、お前のギフトは手で触れてる物を浮かせる事ができる能力なのか?」
夏生がいきなりよくわからない事を言ってきた。
「そうだと思うけど、、どういう事?」
「いや、ルーナが手で触れる必要があるならなかなか難しいが、ルーナに触れる事で浮けるなら4人を浮かす事は格段に簡単になる」
夏生が言いたかった事は腕は2本しかないからルーナ自身が手のひらで触れないと浮かす事が出来ないなら4人を連れて行く事は難しいが、例えばルーナの肩とかに触れているだけで浮けるのなら4人くらいは簡単に連れて行ける。
ルーナが触れるではなく、ルーナに触れるという事だ。
「そういう事か!んー、やってみないとわからないかな〜!」
そんな事やった事も考えた事もなかったので、一度試してみる事にした。
これが成功すれば今後の戦闘にも役に立つ事は間違いない。
果たして成功させる事が出来るのか。
全員気持ちは変わらない。
仲間の為に行動するのみ!




