表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
9/106

EpiSodE009:北の山最終攻防戦

 北の山での最終戦。

 悪魔のザガンは血を操る悪魔で、血の中に含まれる鉄分で固めた剣を創造していた。


 「この剣の名は『血魔の剣』この世を血で赤く染める剣だ」


 自分の血で作った剣で切りかかってくる。

 ザガンが自分から攻撃してくる事は今までなかった。

 それには幾つか理由がある。

 一つはザガンの異常なほどの慎重な性格にあり、まずは相手の攻撃を受けてどれほどの力量か見極めるため。

 ザガンにとってこれは驕りではなく、確実に勝つ為の作戦なのだ。

 そして二つ目が大きな理由で、ザガンが攻勢に出ると一瞬で勝敗が決してしまうからだ。

 ザガンは悪魔の中ではまだ若いが幹部候補になるほどに強い悪魔だ。

 普通の相手では全く歯が立たない。

 ザガンの本質は戦闘狂。驕っていないとは言えど、戦いを楽しみたい気持ちが大きい。

 だから防御に徹して相手を泳がせたところを一瞬で終わらす、という戦い方をし続けていたのだ。

 今回も一緒だ。

 相手の技も見たし、少しだがダメージも与えられた。

 これは初めてと言っても過言ではない。

 そろそろ終わらせようと攻勢に転じたのだ。


 だが、今回は少し違っていた。


 いつもなら最初の一撃で終わるはずが、辛うじてだがこいつらは受け切っている。

 ダメージを負ったのもそうだが、ここまで耐えている相手は今までにいなかった。

 それがザガンに高揚感を与える。


 「お前達最高だな。ここまで俺の攻撃を受けて倒れない奴は初めてだ!もっと楽しもう!」


『血弾』


 そう言うと、血魔の剣から血の弾丸が飛んだ。


 「危ねぇ。もう少しで頭に風穴空くところだった。変幻自在に血を操るな」


 夏生はギリギリのところで弾いた。


『大樹の束縛』


 エルサリオンが大きな木で相手を拘束する魔法を発動した。


『龍刃』


 そこにすかさず夏生も攻撃する。


 「いいぞ!素晴らしい連携だ。だが、それでも俺は倒せんよ」


 この連携攻撃に対してザガンは血を大きな盾にして夏生の龍刃を防御し、絡みついている木を血の刃で切断した。


 「こいつまじで何が効くんだよ」

 「わからない。俺の木もすぐ切断される。それでも攻撃し続けるしかない!」

 「わーかってるよ!」


 何をしたらザガンに有効なのかわからず、心が折れそうな状況だが、今はそんな事考えるより、少しでも隙を大きくする事が先決だ。


 「でも一つわかった事は夏生の龍刃はあいつに効果があるかも知れない!」

 「なんでそんな事わかるんだよ?」

 「さっき俺の魔法は手で弾いて防いでいた。だが夏生の斬撃は一度目は避けて、二度目は盾で防御していた。それに一度目は避けきれず掠っていたようにも見えた。可能性があるとするならばその斬撃を直撃させる事だ!」

 「なるほどな。じゃあその状況を作ったら更に凄いもんお見舞いしてやるよ」

 「その状況を作れるのは姫那だけだ。姫那に全てかかってる」

 「私責任重大じゃん!でも絶対やる!」


 ズキューンッ


 「何をゴチャゴチャと喋っている。早くかかってこい」


 痺れを切らしたザガンが横の岩に血の弾丸を飛ばしてくる。

 岩にひび割れはなく、貫いたところだけ綺麗に穴が空いている。どれだけの威力があるか、これを見ただけで伝わってくる。


 「今の一撃で終わらせなかった事、絶対後悔するぜ」

 「ほう。どうやって後悔させてくれるのか楽しみだな」


『大樹の束縛』


 再度ザガンの拘束を試みる。

 これはほとんど賭けだ。

 ザガンがもう一度受けてくれれば姫那の能力をかけるが、最初から防御されればかけれる確率も低くなる為、リスクが高くなる。


 「また同じ技か。さっき見てなかったのか?俺には効かなかっただろう」

 「わかってる。そう思うならさっきの魔法と一緒と思うのか?この魔法はお前じゃ抵抗できないだろうな」

 「おもしろい、ならもう一度ダメ元で試してみるか」


 エルサリオンが上手く誘導した事によってザガンはさっきと全く同じ魔法を受けた。


 「なんだ、やはり同じ魔法じゃないか。時間を無駄にしたな」

 「姫那!」


『動くな!』


 姫那が思考誘導をかける。


(ん?なんだ?いきなり体が動かなくなった。口すら動かせない。何が起きているんだ?)


 ザガンが気を抜いていたのは確かだ。確かだが、高位の悪魔が口も動かせないほどに洗脳されている。

 これは今までの姫那の力ではあり得なかった事だ。

 実は姫那は自分でも知らない間に成長していた。


 「よくやった!姫那!後は俺に任せろ!」


 夏生が剣を振るう。


『龍刃・双』


(くそっ、全く動けない!)


 夏生の斬撃が双龍となって動く事ができないザガンに直撃する。


 「凄まじい威力だな。俺の木が消え去った」


 斬撃の勢いでザガンに巻きついている木も一瞬で塵になった。


 「だろ。でもこの技は俺の腕じゃまだ一日一回しか打てないんだ。だから確実に当てられる機会を作らなくちゃいけなかった」

 「姫那も最高のタイミングだった」

 「決まってよかった。私ももう動けないかも」


 エルサリオンの魔法で拘束して油断させてたとはいえ、もちろん抵抗もするし、ザガン相手に思考誘導をかけ続けるのは負担が大きすぎた。

 洗脳系の能力は体力は使わないが、精神力を使う。

 相手が強ければ精神力の消費も大きくなり、物理的な疲労になる。


 「俺とした事が。完全に油断したな」


 ザガンはまだ消滅していなかった。


 「まだ生きてんのかよ!もう力残ってねぇぞ!」


 三人とも力を使い果たしほとんど動けない状態だった。


 「はは。俺ももう無理だ。もう消える寸前だ。お前の一撃、すごかったよ」

 「俺は形すら残さなくするつもりで打ったんだ。それが形を残して、喋れてすらいる奴にすごいって言われてもな」

 「俺は悪魔の中でも幹部候補だぞ?それを倒せたんだ。大いに喜んでいいだろう」


 ザガンは間違いなく強い悪魔だ。

 それを倒せただけでも三人は以前とは比べ物にならないくらい強くなっている。


 「マモンって悪魔は知ってるか?」


 エルサリオンが唐突に問う。


 「マモン様か?もちろん知ってるぞ。あの人は俺よりも更に強い。そういえばセーレにも聞いていたな。故郷を取り戻そうとしてるならやめておいた方がいい。返り討ちに遭うぞ」

 「そうか。お前よりも強いのか」


 ザガンよりも強い。そう言われたが、エルサリオンに不安はなかった。

 何故なら姫那達と一緒に自分も今強くなっていっている自覚があった。

 自分は発展途上でまだまだ強くなれると確信してるからだ。


 「そろそろ俺も限界だな。じゃあな、楽しい戦いだった」


 そう言うとザガンは灰になって消えていった。


 「今回はやばかったな」

 「うん。本当に死ぬかと思ったよ」

 「とりあえず疲れたな」

 「そう、だね」


 疲れ果てた三人はそのまま朝まで眠り続けたのであった。

西條姫那

能力〈ギフト〉:洗脳系のギフト

意識誘導(ブレインリーディング)

思考誘導(ブレインドミネーション)


石田夏生

能力〈ギフト〉:刃物を自在に創造するギフト

龍刃(りゅうじん)

・龍刃・(そう)


エルサリオン

魔法

暴風矢(ストームアロー)

・大樹の束縛

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ