EpiSodE087:急展開
エルサリオンの弟、エルノールの事があってから6日目を過ぎた頃、姫那達は少ない手掛かりの中、エルノールが残した手掛かりを頼りに作戦を組み立てていた。
「まず、まとめると今ある手掛かりは枯れたアルブフとエルノールが持っていたアルフヘイムの砂。この二つが今1番有力な手掛かりだ。ここからアルフヘイムの居場所を必ず見つける」
夏生が今わかっている事を並べた。
「エリーさんとイズレンディアさんはこの二つの手掛かりで何かわかる事とかありますか?」
葵が2人に聞く。
「私は、、すまん、今のところ何も浮かばない、、」
「俺にはちょっと思い当たる節がある」
全員がエルサリオンの方を見た。
「ほ、本当に?何かわかったの?」
「あぁ。ずっと考えていて、確証がなかったから何も言えなかったんだが、エルノールが持っていた砂。まず何故砂なんて握りしめていたのだろうか、、その行動事態が不自然だと思わないか?」
「確かにそうだな。よくよく考えてみれば不自然すぎるな」
「それにエルノールは無意味な事をする奴じゃない。この不自然な行動には絶対に意味がある、そう考えた。そうすると一つの事が思い浮かんだ」
エルサリオンは弟、エルノールを思い出しながら言葉を続けた。
「砂の持続期間は1週間。それを過ぎると黒く濁る。そしてこれを見てくれ」
「これは、、エルノールが持ってた砂?」
エルサリオンはエルノールが持っていたアルフヘイムの砂をエルサリオンもずっと持っていた。
「あぁ。これはアルフヘイムの砂だ。そしてこの砂はまだ白い。エルノールに会ってから6日目の今日でもな。という事はエルノールは俺達がここに来る1日前にアルフヘイムからアルブフに来たと言う事になる」
エルサリオンは砂の状態から逆算してエルノールがアルブフに来たのはエルサリオン達が5階層に来た前日だと推測した。
そしてそれは大きな手掛かりとなる。
「という事は昨日はアルフヘイムが何処かに出現していたという事か」
「俺はそう思っている。確実にかはわからないが可能性としては非常に高い確率だと思う」
「少しでも可能性があるならそれに縋る。それが今の俺達にできる事だな」
アルフヘイムが見つかるか見つからないかは今は置いておいて、この出口の見えない現状を打開しなければこの先のモチベーションにも繋がる。
だからエルサリオンは不確定要素だったがみんなに伝えたし、夏生もそれをわかっていてその可能性に賛同したのだ。
「だったら早く行動しないとだね!これからどう動くの?」
姫那が行動を促した。
「イズレンディア、昨日何かなかったか?どんな小さな事でもいい」
エルサリオンはさっきも同じようにイズレンディアに聞いたが、今回は少し違っていた。
それは期間だ。
前に聞いた時はこの150年の間というニュアンスだったが、今回は6日前。6日前の事を思い出すだけでよかった。
イズレンディアは考えていた。
「そういえば空が少し歪んでいたような気が、、」
「空が歪んでいた?どういう事だ?」
「いや、本当に少しだけだったんですが、空がちょっと変だったんです。一瞬だったんですが、、」
「それだな。それが今の最大の手掛かりだな」
「あぁ。それは多分アルフヘイムが少し出現した時の現象と推測できる。エルノールの命懸けで何かした事によってアルフヘイムが一瞬だけ姿を現したんだ」
自分の弟のエルノールが命懸けで残した手掛かりをエルサリオンはなんとかアルフヘイムに繋げた。
エルノールが伝えたかった事が本当にそれなのかはわからなかったが、結果としてアルフヘイム奪還に一歩近づいた。
(エルノール、ありがとう)
エルサリオンは心の中で弟、エルノールに感謝した。
「イズレンディア、その空の歪みはどの辺りにあった?」
「はい。6日前にいた場所から見て北西の空でした」
「あそこから北西か。この場所からは少し右にズレてるな」
「だったらその方向に一刻も早く向かおう。もうこの手掛かりを逃したら本当にアルフヘイムを見つからなくなるぞ」
「うん!急ごう!飛んで向かおうよ!」
「イズレンディア、お前飛べるか?」
イズレンディアはエルフだから翼を出せる。
だが、今は傷付いている為飛べるか危うかったので、エルサリオンは確認した。
「大丈夫です。もう回復しました」
そう言うと、イズレンディアは翼を出して少し飛んでみせた。
「大丈夫そうだな。じゃあ行こうか」
いつも通り、エルサリオンは夏生と葵を抱え、ルーナが姫那とあかり、イズレンディアは単独で飛び立つ。
「イズレンディア、そろそろさっき言ってた場所か?」
「もう少し先ですね。あと2〜3キロといったところでしょうか」
そしてイズレンディアが言っていた歪んだ空のおおよその位置まできた。
そこはやはりエルノールが倒れていた場所であった。
「やはりエルノールが倒れていたところか。という事は、、」
「あれは、、なんですか?」
葵が空を見て驚愕していて、それにつられてエルサリオンも空を見上げた。
「歪んでいる、、のか?」
そこには気にして見ないとわからないくらいだったが、空が少し歪んでいた。
そこに姫那が何かを見つけたのか、いきなり叫んだ。
「ルーナ!ちょっとあの空に向かって飛んで!」
「え?う、うん!わかった!」
「どうした?何かあったのか?」
「わからない!ちょっと待ってて!」
姫那以外には少しの歪みがえるようにしかみえていなかったのだが、姫那にはそれ以外の何かが見えていた。
「お姉ちゃん、何かあったの?」
「うん、ちょっと空の歪みの奥に何か見えたの!近くに行ったらもっと見えるかもって思って!」
姫那にしか見えていなかったもの。
それはアルフヘイムなのか?それを確認しようとしたらそれは起こった。
「ちょっと待って!歪みが無くなっていく!」
「ほんとだ!なんで急に!」
急に歪みが徐々に消えていったのだ。
そして歪みは完全に消え、普通の空に戻った。
「消えちゃったよお姉ちゃん、、」
「でも見えた!」
「え?」
「歪みの中に島が見えたよ!いっぱいの島が!」
「それってエリーが言ってたアルフヘイムに似てるんじゃ、、」
「うん!多分アルフヘイムだよ!一度下に戻って私が見た事をエリーとイズレンディアに聞いてもらおう!」
「うん!」
そして姫那達は下に戻ってエルサリオンとイズレンディアに見たものをそのまま伝えた。
「歪みが消えたが、何かわかったか?」
「うん!歪みの向こうに島が見えたよ!島が何個もあった!これってアルフヘイムじゃない?」
エルサリオンは少し間を置き、答えた。
「、、そうだ。それは間違いなくアルフヘイムだ。やっと見つけた。やっと、、」
感極まりそうになっていたエルサリオンに夏生が、、
「泣くにはまだ早いぞ。これからが本番だ。絶対にアルフヘイムを取り戻すぞ」
「もちろんだ」
夏生の言葉でエルサリオンはより一層気が引き締まり、覚悟が決まった。
そして夏生の言う通り、これからがアルフヘイム奪還の本番なのであった。
ついにアルフヘイムの場所を突き止めた。
アルフヘイムは今どうなっているのか。




