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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE085:家族

 休憩が明けて、歩き続ける事2時間が経過した。


 「ぜんっぜん何も無くない?なんかいつもこんな感じじゃん!」


 そう、姫那達はどの階層でも最初はいつもなんの手掛かりも掴めずに彷徨っていた。


 「何もわからないんだから仕方ないだろ。子供みたいな事言うな」


 駄々を捏ねる子供のような事を姫那が言っていたので、夏生が我慢しろと少し叱る。

 それはまるで親が子供を叱りつけるような光景だった。


 「夏にぃはお姉ちゃんのお父さんだね!」

 「なんで俺がこんな手のかかる娘を持たないといけないんだよ」

 「だってすごいお父さん感出てたよ!あれ?でも待って、、夏にぃがお姉ちゃんのお父さんなら私にとっても夏にぃはお父さんなの?」

 「いやもう、お前思考が意味のわからない方向に向かってるぞ」


 夏生とルーナがよくわからない会話をしていたらエルサリオンが何かを見つけた。


 「あれは、、!」

 「エルサリオン様!あれはまさか、、」

 「なんだ?何かあったのか?」

 「何何?何かあったの?」


 目が異常に良い、エルサリオンとイズレンディアだけがそれが見えていた。

 そしてエルサリオンはその場を一瞬で飛び立ち、何かを見つけた方向に向かっていく。


 「何!どうしたの?何かあったの?」


 飛び立たなかったイズレンディアに姫那が聞く。


 「私もエルサリオン様程目は良くないから確証はないが、向こうに同胞が倒れているのが見えた」

 「同胞って事はエルフ?」

 「そうだ」

 「ルーナ!私達も行こう!」

 「うん!」

 「待って!私も連れて行って!倒れてるなら怪我をしてるんでしょ?だったら私が治す!」


 あかりもルーナに掴まり、3人でエルサリオンが飛んでいった方向に向かった。


 「エリー速すぎない?一瞬で見えなくなったじゃん!全然追いつけない!」


 自分の方が速く飛べると言われていたから、追いつけると思っていたが、予想を超える速さでルーナもびっくりしていた。


 「同じエルフが倒れてるってなったらそりゃいつもより速くなるんじゃない?私も姫那やルーナが倒れてたら絶対そうなるもん!」


 あかりの何気ない言葉が姫那とルーナを嬉しくさせる。

 そして姫那も。


 「私だって2人が倒れていたら何を投げ打ってでも助けるもん!」

 「私だってお姉ちゃんとあかりちゃんが倒れてたら、、」


 そこからは3人の自分の方が速く助けれるというよくわからない張り合いだった。

 そしてようやくエルサリオンに追いついた。


 「エリー!どうしたの?」


 エルサリオンが振り返るとその目から涙がこぼれていた。

 それに姫那達は驚く。


 「エ、エリー?大丈夫?」

 「、、姫那か。すまない。変なところを見せてしまった」

 「変じゃないよ!その人エルフでしょ?大丈夫なの?」

 「、、いや、もう死んでいる」

 「死んでるって、、そんな、、あかり!治せない?」


 あかりは無言で下を向いている。


 「、、ごめん、死んでる人は無理なの。生きていたらなんとかできるんだけど、、ごめんなさい」

 「いや、仕方ない。死者を生き返らせるなんてできるわけがない。あかりのせいじゃないよ」


 エルサリオンにそう言われてあかりは自分の無力さを恨んだ。

 自分に何かできる事があるはずと思って連れてきてもらったのに何もできなかった。

 落ち込んでいるあかりにエルサリオンは気付いた。


 「あかり、すまん。俺の言い方が悪かった。本当にあかりのせいじゃない。この感じを見ると俺達が5階層に来るより前に死んでいた可能性が高い。どちらにしても救えなかったよ」

 「、、ごめんね」


 それでもやはりあかりは自分がもっと強いギフトを使う事ができたらと悔し涙を流した。


 「あかり、こいつの為にそんなに泣いてくれてありがとう」


 あかりは涙を拭いながら首を横に振った。

 そして姫那がエルサリオンにこのエルフは誰なのか聞く。


 「、、この人はエリーの知り合いなの?」

 「あぁ、、こいつは俺の弟だ」

 「エリーの弟なの?」

 「そうだ」


 死んでいたのはエルサリオンの弟だった。

 姫那達はエルサリオンが血相を変えて飛び立った理由がわかった。


 「エリー、、大丈夫?」


 姫那が心配して再度聞く。


 「あぁ、本当に大丈夫だ。2階層に逃げた時にいなかったから覚悟はあった。だから大丈夫だ」


 そう言いながらも肩は震えていて、死んだ弟の亡き骸を強く抱きしめていた。

 それを見ていた姫那は更に後ろからエルサリオンを抱きしめた。


 「大丈夫だよ。エリーには私達がいる。血は繋がってないけど、私達はエリーの家族だよ。だから、、大丈夫」


 エルサリオンの大丈夫と姫那の大丈夫。言葉は同じだが、意味や内容は全く異なっていた。

 そして姫那の声もいつも元気のいい叫ぶような声と違って、すごく落ち着いた聞いていて安心する声だった。


 「、、ありがとう」


 エルサリオンは震えた声で姫那の腕を掴み、仲間という名の家族の暖かさを肌で感じた。


 「私達もだよ!ね!あかり!」

 「、、うん、、」


 あかりはまだ落ち込んでいた。


 「おい、あかり。確かにあかりに死者を生き返らせる力があれば弟は救えていたかもしれない。だが、それは同時に俺の無力さにも原因はある。一緒に強くなろう。そしてもし次にこんな状況に遭遇したなら絶対に助けよう」


 エルサリオンは落ち込んでいるあかりに敢えて無力だという事を伝えたが、ここから一緒に成長していこうと前向きに捉えれるように話をした。


 「私、もっと強くなりたい。もっともっと強くなりたい!」

 「あぁ、そうだな。強くなろう」


 強くなって身の回り人を全て守れるように、誰も失わないようにと、そう誓った。

 それは決意にも似た誓いだった。

 そして少し遅れて夏生達がエルサリオン達のところに着き、事情を話した。


 「そうだったのか。悪魔の仕業か、、」

 「いや、それもわからない。むしろ違う可能性が高いかもしれない」

 「どういう事だ?」

 「悪魔の主食は肉だ。もちろん一番は人間の肉だが、エルフの肉も奴らは食べる。それが残っている事を考えると、、」

 「同族殺しか」

 「その可能性がある」


 エルサリオンは悪魔が殺したのなら弟の肉体が残っている事はなく、喰われていると思っていた。

 それが綺麗に残されていた。

 そしてここにはエルフ族しか住んでいなかったという事は悪魔ではなく、ダークエルフが殺害した可能性が高いと考えた。


 「そんな!なんでなの?同じ仲間なのに、、」

 「まだそれが決まったわけではない。あくまでも可能性としてダークエルフの反乱因子が犯人かもしれないというだけだ」

 「でももし本当にそうなら、事態は最悪だぞ」

 「あぁ、この5階層には敵しかいない事になるからな」


 思ってた以上に5階層は危ない状態なのかもしれない。

 この惨劇を目の当たりにして夏生やエルサリオンはそう思った。

 そしてエルサリオンの弟を埋葬してその場を後にした。

思っていた以上に5階層は深刻な状況だった。

ここからどう巻き返していくのか?

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