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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE083:エルフ族

 一通り誰がどんなギフトを持っているのかを理解したイズレンディア。

 理解したというか、無理矢理自分に理解させたといった方が正しかった。

 イズレンディアの生きてきた200年余りでこんな反則級な特殊能力を持つ者なんて見た事なかった。

 だから疑いから入ったのだが、目の前で見せられてしまっては信じざるを得ない。

 姫那に関してはまだ見てはなかったので疑いの念を抱いているが、自分が尊敬するエルサリオンが唯一間違いなく自分より強いと言っている。

 イズレンディアは複雑な心境だった。


 「エルサリオン様。とりあえずはこの者達が戦力になるという事は信じましょう。ですが、人数が圧倒的に違いすぎます」

 「何人いるんだ?」


 夏生が問う。

 夏生は1人で悪魔数百人を倒した実績があったので、一応聞いてみたのだ。


 「向こうは万の軍団だと言っていた」


 万の軍団。それは予想を遥かに超える数だった。

 だが、夏生も焦る様子はなかった。


 「そうか。そんなに数がいるならやり甲斐がありそうだな」


 むしろ楽しみだと言わんばかりにニヤついていて、その顔は悪役のような顔だった。


 「夏生、お前顔がやばいぞ」

 「何がだよ」

 「悪魔を倒しにいこうとしてるのに、お前が悪魔みたいな顔になってるぞ」

 「夏にぃ顔怖いよ!」

 「もしかして夏生じゃなくて夏生に化けた悪魔なの!?」

 「何言ってんだお前は」


 姫那が意味のわからない事を言っていて、夏生がデコピンをする。


 「痛っ!夏生だ!」


 デコピンをされて夏生だと確信した。


 「当たり前だろ。そんな事よりアルフヘイムを早く探すぞ」


 話の腰が折れたので夏生が本題に戻り、今わかっている事をまとめる。


 「とりあえず、元々アルフヘイムは空に浮いていて下からは必ず見えていたが今はアルフヘイム自体が消えた。そして消えたと同時くらいにここの干ばつが急速化した。今わかっているのはこれくらいか」

 「そのアルフヘイムが消えたっていうのが1番気になりますよね、、アルフヘイム自体は大きかったんですよね?」

 「あぁ。だが、一つの島で大きかったのではなく、アルフヘイムは島の集合体だったんだ」

 「島の集合体?」


 エルサリオンとイズレンディア以外はそれがよくわかっていなかった。

 そこにエルサリオンが説明を加えた。


 「島一つでも大きいがせいぜい海底都市の4分の1程度くらいだ。その大きさの島が何十個と連なっているんだ。その島にエルフが住んでいて、一つ一つが領地として分かれているんだ」


 アルフヘイムは島の集合体で一つの島に階級分けされた領民が住んでいた。


 「なんかそれが空中に浮いてるってすごいね!そこでエリーは島の一つの偉い人だったの?」


 姫那のテンションがものすごく上がっていた。


 「それは違う」


 イズレンディアが姫那の言葉を否定した。


 「え?違うって事は偉くなかったの?」

 「バカを言え!エルサリオン様は全島の統治者の1人だったのだ!言うなれば長老アルフィリオン様の次、No.2だ!」


 そう。エルサリオンはエルフ全体の中でNo.2の地位にいた超偉い人だったのだ。


 「そうなの?」


 姫那がエルサリオンに確認する。


 「一応な。だがもうその島もなくなって、今はただのエルフだよ」

 「そんな事はありません!私達エルフからしたらどうなろうともエルサリオン様は偉大なお方です!」


 イズレンディアがエルサリオンの前で片膝をついていた。


 「イズレンディア、顔を上げろ。お前がそう思っていたとしても張本人の俺が違うと言ってるんだ。俺を偉大と思ってくれているならわかってくれるな?」


 イズレンディアは顔を上げ、エルサリオンの顔を直視した。


 「私にとってエルサリオン様は雲の上の方です。だから対等な存在とは絶対に思えません。ですが、エルサリオン様の命令なら聞かざるを得ませんね」


 そう言うとイズレンディアは手を前に差し出した。


 「これからもよろしくお願いします。絶対にアルフヘイムを取り戻しましょう」

 「もちろんだ。俺達の故郷をいつまでも悪魔の好きにはさせない」


 エルサリオンは差し出された手を掴み握手を交わした。


 「私達もよろしくね!一緒に頑張ろう!」


 姫那がイズレンディアに握手を求めた。

 姫那の顔を見るとすごく純粋な笑顔だった。

 そしてイズレンディアはエルサリオンを見ると、深く頷いていた。


 「あぁ、よろしく。力になると言ってくれて感謝する」


 姫那の握手を受け入れた。


 「うん!とりあえずその辺歩いてみようよ!」


 ずっと動こうとしていたが、全員の気持ちが一つになっていなかった為、全く進んでなかったのだ。


 「イズレンディアは今まで歩いて何か探したりはしたか?」

 「いえ、私の力では最底辺の悪魔ならまだしも強い悪魔に出会ったら勝てないので、無闇に歩けずにいました、、力不足で申し訳ありません、、」

 「それでいいよ。むしろ負ける戦いに行っていたのなら怒っていたところだ。よく留まっていた」

 「はい。エルサリオン様の言いつけ通りです」


 エルサリオンは自分の仲間のエルフには勝てる戦いをしろと言っていた。

 それは負けるなら逃げるというわけではなく、勝てる算段を立ててから戦いに挑めという意味でエルサリオンはずっと伝えてきた事だった。

 それをイズレンディアは150年もの間、ずっと守り続けたのだ。

 見る人から見れば怖くて戦わなかっただけととられるかもしれないが、エルサリオンからすれば賢明な判断だし、イズレンディアも早く故郷を取り戻したかったに違いない。苦渋の決断だった。


 「待っていれば必ず同胞の誰かに会える。そう信じていました。そして出会えたのがエルフ最強の戦士、エルサリオン様で本当によかった」

 「私達にもね!」

 「、、あぁ。そうだな」


 姫那の言葉に対して満更でもない返事をしたイズレンディア。

 そして一同は当も無かったので適当に歩き始めた。


 「本当に変わったな」


 エルサリオンが改めて周りを見渡しながら呟く。


 「この枯れた地も悪魔からアルフヘイムを取り戻したら、エリーが言ってた元の自然が溢れた場所に戻るかな?」

 「保証はないが、エルフが全員集まればなんとかなる可能性はある」

 「そっか!ならよかった!」


 姫那はこの下界と言われる場所が元の姿に戻るのか心配だった。


 「そういえばここって下界って場所なの?」

 「厳密に言うと違うな。ハイエルフやエルフでアルフヘイムにいる者はそう呼んでいた。この地の名はアルブフという場所だ」

 「なんだ!ちゃんと名前あるんじゃん!じゃあエリーも名前で呼ぼうよ!」

 「もう癖付いてしまって、、」

 「いいから!これからはアルブフだよ!」


 姫那はエルサリオンを下から覗き込むようにして目を見て言った。


 「わかったよ。ちゃんと呼ぶよ」

 「よし!」


 下界という呼び方が姫那には上下関係がありそうで嫌だったのだ。

 エルサリオンは別にそういう意味で言ってなかったので、なぜダメなのかわからなかったが、何か姫那が少し不機嫌そうだったので姫那の言う通りにする事にしたのだった。

エルサリオンはエルフ族のNo.2だった。

そしてアルフヘイムの捜索が本格始動した。

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