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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE082:能力紹介

 空中都市アルフヘイム奪還という一つの同じ目標に全員がベクトルを向けて、これからどうやってアルフヘイムを見つけるか確認していた。


 「とりあえずは、ここにずっといても仕方ないから移動しながら周りに注意して話し合おうか」


 夏生が効率的に話し合う為に、周囲に何かないか確認しながら今後どうやってアルフヘイムを見つけるのかという事を話そうと提案した。


 「そうだな。こんなに枯れてしまった大地だがまだ何か残ってるかもしれないしな。些細な事でもいいんだが、本当に何もわからないのか?イズレンディア」

 「何も思い当たる事はないですが、、強いて言うならアルフヘイムが消えたあたりからこの下界の干ばつは急速に進み始めたくらいでしょうか、、」

 「その前の50年は以前のように大自然だったのか?」

 「少しは枯れていましたが、ここまでにはなってませんでした。エルサリオン様に言われてよくよく考えると、自然が完全になくなったのはアルフヘイムが消えて5年以内だったかと思います」


 アルフヘイム消失から5年以内に下界の自然も消えてしまった。

 これが意味する事とは、、


 「悪魔の中に自然を操る悪魔がいるとか。若しくはマモン自身がそういう能力を使うのか。そういえば、マモンの能力は知らないのか?」


 襲われたのだからマモンの能力くらいは知っていてもおかしくないと思い、夏生はエルサリオンに問うた。


 「わからない。能力を知る事すら出来ずにやられたからな。それ程までに力の差があったんだ」

 「そんなにヤバい奴なんだな、、」


 七大悪魔の実力は伊達ではなかったという事だ。

 悪魔の構図として七大悪魔は悪魔の中でも最上位種の悪魔で、無能力者なら何人束になろうとも全く歯が立たず負けてしまう。

 戦闘能力の高いエルフ族でも、七大悪魔1人に何百人と殺されて2階層に逃げていたのだ。

 普通に考えるなら勝負なんて挑もうと思わないし、挑んだとしてもまず間違いなく負ける事は必至だった。今までのエルサリオンならば。

 そして夏生が夏生らしい事を言って、エルサリオンの肩の荷を軽くさせた。


 「なんか逆にワクワクしてきた」

 「ワクワク?」

 「あぁ。だってそうだろ?強い奴と戦えるんだからな。それに勝った時、俺は今よりもっと強くなってるって事だしな」


 その言葉を聞いてエルサリオンもポジティブに考える事にした。


 「俺もこの150年の修行の成果を試せるいい機会だ。150年前の事なんてもう忘れたよ」

 「いいねぇ〜。やっぱり強い奴と戦う前はそれくらいじゃないとな!」

 「そうだよね!絶対に勝とうね!てゆうか、絶対勝つ!」


 強者に勝つ条件として必ず必要なのは根本的な強さももちろん必要だが、それ以前にやる気と強気がないと勝てるものも勝てない。

 夏生は少し弱気になっていたエルサリオンを焚きつけたかったのだ。

 そしてそれは見事成功した。


 「ですがエルサリオン様。何処にあるかがわからない以上、悪魔との戦いすらできないですよ」

 「そんなもん今から探したらいいだろ。悪魔さえ見つかればなんとかなりそうだしな」


 イズレンディアの言葉にエルサリオンが答える前に夏生が答えたが、イズレンディアには何故悪魔を見つけたらなんとかなるのかわからなかった。


 「それはどういう事だ?」

 「あんたもこれから一緒に行動するなら知っておいた方がいいな。俺達のギフトを」

 「ギフト?何の事だ?」

 「俺らは異世界人で、全員何かしらの特殊な能力があるんだ」

 「特殊な能力、、?どういう事だ?」


 イズレンディアはギフトの事を全く知らず、夏生が何を言っているか全く理解できなかった。

 それもそのはず。今までエルフ以外の種族を毛嫌いしてきたのだから。

 知っているのはエルフ族の長老のアルフィリオンくらいであった。


 「じゃあまず俺から見せとくか。俺は剣や刃物を創造できる」


 そう言って夏生は2本の剣を創造した。


 「な、何もないところから剣が現れた。何をしたんだ?」

 「これが俺の能力なんだよ」


 全然頭が追いつかないが、とりあえず何か不思議な力なのだと思うようにした。


 「そうか。じゃあ異世界人のお前らは全員が剣を創造できるのか?」

 「いや、それは違う。俺達はみんな別々の能力を持っている。口で言うより見た方がわかりやすいから1人ずつ見せていこう」

 「じゃあ次は僕がやります!僕は巨大化です!」


 そう言うと葵は体全体を巨大化させた。

 イズレンディアは驚いた表情で葵を見上げた。


 「私は傷を癒せるの!イズレンディアさん、今何処か傷してる?」

 「あ、あぁ。ここに擦り傷がある」


 腕を出してあかりに傷を見せた。


 「回復(ヒール)


 傷が無くなった。

 それにまたイズレンディアは目を見開く。


 「私は質量を変える?事ができるの!」


 ルーナは自分のギフトの本質をまだ完全に理解していなかったので、自分でも疑問系のような言葉遣いになった。


 「質量を変えるとはどういう事だ?」

 「私もよくわからないんだけど、体験した方が早いと思う!」


 ルーナはイズレンディアの腕を掴んで飛んだ。


 「え?なんだ?浮いてる?、、うわっ!」


 ルーナが更に高く飛ぶ。


 「大丈夫だよ!安心して掴まってて!」

 「し、しかし!」


 そしてルーナはすぐに降りてきた。


 「こんな感じ!いろんな物や人を浮かせたりできるの!」


 イズレンディアは驚きすぎてもうあまり驚かなくなっていた。


 「じゃあ最後は私だね!私は洗脳系のギフトなの!」

 「洗脳系?よくわからないが、、」

 「んー、例えば誰を意のままに動かせたりとか秘密とかも言わせたりとかかな?まぁなんか色々できるよ!」

 「なんだその能力。他の能力と比べて規格外過ぎないか?」


 姫那以外全員が何度も首を縦に振る。


 「こいつがいたら悪魔が何を隠していようと絶対に聞き出せるんだ。だから悪魔を探してそいつがアルフヘイムの情報を持っているならすぐに場所もわかるって訳だ」

 「そ、そうなのか。すごいな」


 驚きすぎてもう驚かないと思っていたが、姫那のギフトを聞いて驚きを通り越して呆れのような感情になっていた。


 「こんな感じで俺達はバラエティに富んでいる。誰かができない事は他の誰かが補う。そうやって今までやってきた。それで乗り越えられなかった壁はない。それは今回も同じだ」


 圧倒的自信。それはみんながいるから湧いてくるのであって、1人なら到底湧かない自信だった。


 「実力は俺が保証する。なんなら俺より強い奴も何人か、、いや1人か」

 「おい、俺は4階層でお前に勝っただろ。2人の間違いじゃねぇか?」

 「あれは操られていたからな。俺の実力ではない」


 あの勝敗を今になって否定するエルサリオン。


 「まぁ確かにあれは俺も勝ったとは思えねぇわ」


 夏生も同じようにあれは無効試合と思っていた。


 「エルサリオン様、誰ですか?」

 「何がだ?」

 「何って、エルサリオン様より強い人が1人いるんですよね!?」


 エルフ最強の戦士が敵わない相手が、ものすごく気になったイズレンディア。


 「あぁ、それは姫那だ。あいつには敵わん」

 「そんなに強いんですか?あの姫那とかいう人間は、、」

 「俺より圧倒的に強い。正直手も足も出ない」


 先程、姫那の能力は洗脳系と言ってたが、それ程までに強い能力なのか。

 今のイズレンディアには姫那の本当の実力がわからなかった。

 そしてそれは今後、思い知る事になるのであった。

ポジティブ思考、それが勝利への近道!

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