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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE081:仲間とは

 エルサリオンの家臣、イズレンディアと話をして盛り上がっていた姫那は夏生達にもイズレンディアとの話したエルサリオンの武勇伝の話をしていた。


 「でねでね!エリーはエルフ族の最強の戦士を決める武闘会でも圧勝してエルフ最強の戦士になったんだって!すごいよねー!」

 「すごいのはすごいが、なんでお前がそんなにテンション上がってんだよ」

 「えー!だって仲間がすごくて、褒められたらなんか自分の事のように嬉しいんだもん!」

 「お前はほんとにお人好しな奴だな」


 そしてイズレンディアはエルサリオンと話しながらその姫那の言葉を聞いていた。


 「エルサリオン様、あの姫那という人間は何なのでしょうか?」

 「不思議だろう?姫那には種族なんて関係ないんだ。自分が感じて思った事をそのまま声に出す。それが姫那のいいところだ」

 「種族に関係なく、、今の私には考えられませんね」

 「そうだろうな。それはエルフなら普通の事だ」

 「だったらエルサリオン様もそうなのですか?」


 エルサリオンはそう聞かれ、上を見上げながら答えた。


 「俺は姫那達と出会ってもう結構経つ。自分の考えが如何に浅かったかわかった。今では自分の目で見たものしか信じない。それは他種族に対しても同じ事だ」


 エルサリオンは直接的には言わなかったが、概ねイズレンディアが思っていた通りだった。

 そしてエルサリオンもイズレンディアが思っている事がわかった。


 「さっきも言ったが、別に今すぐ分かり合う必要はない。だからこれからゆっくりわかっていけばいい」

 「はい。わかりました」


 先程エルサリオンがイズレンディアに同じような事を言った時は『努力する』と言っていたのだが、今回は『わかりました』と前向きに考えるようになっていた。

 それはやはり姫那と話したからなのだろうとエルサリオンは思っていて、イズレンディア自身もそれを理解していた。

 そして話は5階層攻略の話に戻る。


 「それでイズレンディアはアルフヘイムが何処にいったかは知らないのか?」

 「はい。100年前にいきなり消えたのです。それから一度も見てません」

 「100年前か、、」


 100年前に消えてそれっきり。

 そうなってくると、アルフヘイムの場所を移動させたとしか考えられないと思うのだが、そうするとマモンという悪魔は大陸を動かせる程の力があるという事になる。

 そんな相手を倒せるのかと、マイナスに考えられずにはいられなかった。


 「とりあえず歩いて探してみようよ!何かわかるかもしれないし!」


 姫那がそう言い出した。


 「、、そうだな。アルフヘイムを見つけるまで手伝ってくれると助かる」

 「え?何言ってるの?」

 「え?」


 エルサリオンと姫那、お互いがお互いに何を言っているのかわからないという顔で見つめ合っていた。


 「なんで見つけるまでなの?」

 「なんでって俺らエルフ族の事に姫那達を巻き込む訳にはいかないし、、」

 「今更何言ってるの!私達がそんな薄情な人間だと思ってるなら怒るよ!」

 「なんで姫那が怒るんだよ?」


 エルサリオンの言葉についに姫那が怒った。


 「怒るよ!さっきエリー自分で仲間だって言ってたよね?なのになんで自分が大変な時はその仲間を頼ろうとしないの?大変な時に助け合わないなんて仲間って言えるの?」


 白々しい表情をしていたエルサリオンだが、実は姫那の性格ならそうなる事はわかっていた。わかっていたが、敢えてエルサリオンは自分の口から言わなかったのだ。

 何故なら自分の私情で仲間を傷つけたくなかったからだ。

 大切な仲間だからこそ自分が傷つくよりも仲間が傷つく方が心が痛む。

 体の傷より心の傷の方が大きくなってしまうと思っていた。


 「ありがたいが、俺達エルフ族の問題はエルフ族で片をつける。お前らに迷惑をかけるつもりはない」

 「迷惑とか思うと思ってるの?エリー、本当に私達の事仲間と思ってる?」

 「仲間と思ってるから、傷ついて欲しくないから言ってるんだよ!」


 エルサリオンも姫那の言葉にヒートアップして少し強く返してしまった。


 「おい、エリー。ちょっと落ち着け。お前らしくないぞ」


 夏生がエルサリオンを抑制する。


 「、、悪い。少し頭に血が昇って、、」

 「お姉ちゃん?」


 姫那の目から涙が流れていた。


 「おい姫那、怒鳴って悪かったよ、、」

 「違う、、そんなんじゃないもん!」


 てっきり怒鳴ってしまったから泣いたと思っていたエルサリオンは少し困惑した。


 「エリーがそう思ってくれてるように、私達もエリーに傷ついて欲しくないし、苦しんで欲しくないの!なんでそれをわかってくれないの?私達はエリーの為ならどんなに強い悪魔でも怖くないもん!」


 エルサリオンはそれもわかっていた。

 仲間の為なら何でもする。それがエルサリオンは150年前の二の舞になりそうで怖かったのだ。

 正直、姫那達がいたとしても七大悪魔のマモンを倒せるのか全くわからない。

 むしろ分が悪いとも考えていた。

 そんな戦いに仲間を連れて行って、もし全滅にでも遭ったとしたら、エルサリオンは自分で自分を絶対に許せない。

 だから姫那達を巻き込みたくなかった。


 「エリー、諦めろ。お前が何て言おうと俺達は止まらないぞ」

 「お姉ちゃんの言う通りだよ!一緒に取り戻そうよ!」

 「そうですよ!故郷の奪還、僕達にも手伝わせてください!」

 「私はまだ出会ってから短いけど、みんなの事を大切な仲間だと思ってる!だから助けたい!」


 みんなも姫那と同じ気持ちだった。

 エルサリオンのそんな考えは真正面から突っぱねられ、何を言ったとしても無理なのだと悟った。


 「じゃあ一つだけ聞かせてくれ。お前達の最大の目標は元の世界に戻る事だろ?なのに何故全く関係のない俺の故郷なんかを助けようとしてくれるんだ?」


 全員が今更何を言ってるのかと言う顔をしながら答えた。


 「「仲間だから!」」


 みんなの大声に少しびっくりするエルサリオン。


 「わ、わかったよ」

 「わかったならよーし!」


 姫那は目を赤くしながら笑っていた。


 「エリー!」


 ルーナがちょっと当たり強めに呼ぶ。


 「なんだ?」

 「次お姉ちゃんを泣かせたら許さないからね!」

 「、、すまん。俺が悪かった」


 まさか泣くとは思ってなかったが、実際泣かせてしまったのは自分だ。

 だから謝らなければいけないとエルサリオンは思った。


 「姫那、泣かせてしまってすまなかった。そういうつもりはなかったんだが、、」

 「ううん、私の方も感情的になってごめんね!それよりも早くアルフヘイムを見つけ出さなきゃだね!」

 「、、あぁ、そうだな」


 エルサリオンは決意新たに故郷を探し始めようとしていた。

 その一部始終を見て聞いていたイズレンディアは、姫那や他のみんなの言葉をどう受け取ったのか。

 それがこれからの空中都市アルフヘイム奪還の鍵になるのであった。

仲間だからこそ互いを大切に思う気持ちがぶつかり合った。

そして心は一つになった。

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