EpiSodE078:5階層へ
ついに看板のところまで来た姫那一行。
そこには何が書かれているのか。
「書いていた事が以前と変わっている、、」
「そうなの?なんて書いてあるの?」
「エリーこの文字が読めるの!?」
「あぁ、俺はこの世界のエルフだからな。普通に読めるよ」
「そうなんだ!私なんて書いてるか全くわからない!」
「大丈夫ですよ!それは僕達全員一緒です!読めるのエリーさんだけですから!」
葵の言葉にあかりは少し安心した表情を浮かべた。
「それにしてもこんなところに看板があるなんて知らなかったよ!」
「誰も知らなかったの?」
「うん、半年間で一度も聞いた事なかったよ!それに見つけてたらこの文字も読めていただろうし!」
あかり以外にもバルナス島にはこの世界で生まれた種族もいっぱいいた。
だからこの文字が読める種族は多数いたはず。
だが、今の今までこの看板そのものを見つける事ができなかった。
それは偶然なのかそれとも誰かの思惑なのか、、わからないままであった。
「まぁでも今そんな事考えてても仕方ないし、その事はもう忘れるよ!」
あかりの言う通り、今考えるのはそれではなく5階層に行く方法だった。
「で、なんて書いてあるんだ?」
夏生がエルサリオンに問いかける。
「あぁ。5階層への道は浜辺にある。とだけ書かれてある」
「浜辺?どこのだよ?」
「それは書かれてないんだ」
「なんだよそれ。すげーアバウトだな。でもまぁ浜辺を探すしかないか」
「それなら俺とルーナが飛んで探してくるよ。今の俺達なら10分もあれば見回れる」
「そうだね!それが一番早そうだし、私ももうエリーくらい速く飛べるからね!」
「お前、エリーより速く飛べてたぞ」
「え?ほんとに!?」
その夏生の言葉はエルサリオンにも聞こえていてが、エルサリオンは無反応だった。
「なんだよエリー、嫉妬してるのか?」
「してない」
「絶対してるだろ?」
「してない」
夏生は悔しそうにしているエルサリオンが面白くてイジっていた。
「もうそんな事どうでもいいじゃん!夏生も黙る!たとえエリーよりルーナが速く飛べて、ルーナの方がすごかったとしても飛べる事自体がすごいんだから!」
姫那の言葉はなんのフォローにもなっていないと全員が思った。
「え?なんか違った?」
「違わないですよ!姫那さんの言う通りです!ね、皆さん!」
葵のフリに全員が縦に首を振った。
「だよね!じゃあ早速転移陣の捜索お願いね!」
全て姫那が空気を持っていって話は終わった。
ただ、そのおかげでエルサリオンももう速さなんてどうでもよくなったのだった。
「じゃあ行ってくるね!ちょっとだけ待ってて!」
「見つけても見つけられなくてもとりあえず10分後に確認の為にここに戻ってこよう」
「いってらっしゃーい!」
姫那達待機組が手を振ってルーナとエルサリオンを見送った。
「そういえば5階層ってどんなところなんだろうね!まだエリーに全然聞いてなかった!」
「確かにそうだな。あいつの故郷のアルフヘイムがあるのは知ってるけど、それ以外は何も聞いてないな」
「エリーの故郷が5階層にあるの?」
あかりが姫那と夏生の会話に入ってきた。
「そうか、あかりは知らなかったな。そうなんだ。5階層にはエリーの故郷の空中都市アルフヘイムがあるんだよ。それで今そこは悪魔に強奪されてエリー含むエルフ一族は2階層に追いやられていたんだ」
「そうだったんだ、、じゃあエリーはそれを取り戻す為に一緒に旅をしてるの?」
「あぁ、そうだな」
「じゃあ故郷を取り戻したらもうエリーとはお別れなのかな、、」
あかり以外の全員の動きが止まった。
何故今までそれを考えてこなかったのだろう。
一緒にいる事が当たり前すぎて別れるなんて事は頭の片隅にも全くなかった。
「え?みんなどうしたの?」
一瞬で空気が変わった事に気付いたあかりはみんなを心配する。
「いや、なんでもない。あいつの旅の目的は故郷奪還だ。悪魔の手からそれを取り戻せたならそれが一番良いし、俺達もそれを喜ぼう。たとえそれで別々の道を行く事になったとしても」
「そうですね、、それがエリーさんにとっての幸せですもんね」
「・・・・」
姫那は無言ですごく寂しそうな顔をしていた。
「姫那、、ごめん!私変な事言っちゃって、、」
ふと姫那が我に帰る。
「え?あ、いや、ごめん!なんでもないよ!ちょっと寂しいな〜って思っただけだから!エリーの故郷、早く取り戻さないとね!2階層でみんな待ってるし!」
空元気なのが誰の目にもわかった。
「今は5階層に行く事だけを考えよう。エルフ族が離れてもう150年にねるんだ、絶対変わってるし、どうなってるかなんて今考えてもわかるはずもないからな」
「そうですよ!もうそろそろ10分経ちますし、エリーさんとルーナさんを待ってこれからどう動くか考えましょう!」
そして、ちょうどエルサリオンとルーナが帰ってきた。
「ただいまー!、、ん?何かあったの?」
ルーナが先程との雰囲気の違いに気付いた。
「え?な、何もないよ!それよりどうだった?転移陣はあった?」
「う、うん!私の方には何もなかったよ!エリーの方は?」
「こっちにあったよ。ここから結構近い場所だ」
「あったんだ!よかったー!じゃあ早速転移陣のところに行こうよ!」
「お、おう」
姫那が歩き出した。
「姫那、どうしたんだ?何かあったのか?」
「まぁ大丈夫だ。お前はいつも通り接してやってくれ」
「、、わかった」
「姫那さん!まだエリーさんに場所聞いてませんよ!」
「あ、ほんとだ!ごめんごめん!」
少し引き攣った笑顔で戻ってきた。
「とりあえず5階層の事を教えてくれ、エリー」
夏生が姫那に気を遣って話を進めた。
「まず、俺達エルフの故郷はお前も知ってる通り、アルフヘイムは浮遊島だ。アルフヘイムには文明と自然が広がり、それは素晴らしい島だ。そして下界も緑に溢れている」
「すごい綺麗な場所なんだね!」
「あぁ。下界も綺麗だが、アルフヘイムはもっと綺麗だ」
前もそうだったが、エルサリオンは故郷に圧倒的な自信があった。
「やっぱりなんかちょっと楽しみになってきたかも!」
エルサリオンの話を聞いて少しテンションが上がった姫那。
単純な性格でよかったと思う夏生であった。
「よし、じゃあ転移陣のところに行くか」
「うん!」
クルアラントから転移された時と同じようにエルサリオンとルーナがみんなを抱えて転移陣の場所まで行った。
「最初この島に来た時はこんなところに転移陣なんてなかったのにね!」
「悪魔を倒したから出現したんだろうな」
「5階層のどこに転移されるかはわからないんだよね?」
「俺もここから5階層には行った事がないから流石にな」
「行ってみるしかないな」
そして全員で転移陣の中に入った。
長く短かった4階層に別れを告げて。
やっと5階層!




