EpiSodE077:変わり果てた島
「とうちゃーく!」
エルサリオンとルーナのおかげで無事バルナス島に戻ってきた姫那一行。
それにテンションが上がる姫那。
「やっと戻ってきたね!お姉ちゃん!」
「うん!ここは何も変わってないね!相変わらず木と草がすごい生い茂ってる!」
「そりゃ変わるわけないだろ。まだ数日しか経ってないのに」
姫那達が海底都市クルアラントにいたのは数日。何か変わっている方がおかしいというものだったので、夏生が姫那にツッコんだ。
「バルナス島がこんなに変わってるなんて、、」
「いやだからこんな短期間で変わるわけないって、、あーいや、変わってるか」
夏生は反射的にもう一度ツッコミを入れようとしたのだが、変わっていると感じたのはあかりだったので、途中で言葉を飲み込んだ。
「うん。半年前と比べたら全然違う、、半年前はこのバルナス島に住んでる人もいたし、こんなに草や木で埋め尽くされた島じゃなくて、ちゃんとここにも文明があったの、、それがもうかけらも残ってない」
あかり曰く、半年前にはバルナス島は栄えていて、クルアラント程ではないが文明があったらしい。
「なんで半年でこんなになっちゃったんだろ、、」
自分の故郷ではないし、過ごした期間は短いが、いきなり転移されて右も左もわからない状態で過ごした半年はあかりにとって、ものすごく濃い半年だったのだ。
「あかり、、大丈夫?」
姫那が心配になり様子を窺う。
「あ、ごめん!全然大丈夫!ちょっと変わり過ぎてびっくりしただけ!」
「ほんとに?」
「うん!ほんとだよ!心配かけてごめん!」
あかりは自分がみんなに心配をかけてしまってると思い、慌てて気持ちを切り替えた。
エルサリオンが気を遣って、別の話に切り替えた。
「ところで、あかりがいた半年前もバルナス島に薬草はあったのか?」
「え?うん、あったけどこれだけ環境が変わってたらまだ残ってるかどうかわからないよ?」
「でもあかりがいるから薬草なんていらないんじゃない?」
「そうだったな。だったら薬草はクルアラントの住民に譲った方がいいな。一応確認しとくか?薬草があるかどうか」
「、、そうだね!私もみんなの為に確認しときたい!」
あかりはクルアラントにいるみんなの為にも薬草が今もあるかどうか確認しておきたかった。
「わかった。みんなもそれでいいか?」
「うん!大丈夫だよ!むしろ私も確認しときたい!」
姫那含め、全員が了承した。
「なら早速その場所に案内してくれ」
「うん!でも島の反対側なんだけど、、え?」
あかりが足元に何かを見つけ立ち止まった。
「どうしたんだ?」
それを不思議に思い、エルサリオンが問いかける。
「いや、ここにあった、、」
「あったって何があったの?」
「薬草だよ!薬草がここにあった!なんでこんなところにあるんだろ、、」
半年前にあかりが薬草を見つけた場所はここから見て島の反対側だった。
それが何故この場所に生えているのかわからなかった。
「生える場所が変わったとかじゃないのか?」
「それは無いと思う!ここに来た1年前から半年間、ずっと同じ場所に生えてたから!」
薬草が生息できる環境はバルナス島では一箇所しかなく、それは反対側の湿地帯だった。
「薬草ってみんなそんな感じの草なの?」
「そうだよ!細く長い葉で裏側が黄色くなっているの!薬草以外にこの見た目の草はないよ!」
「だったらこっちにも同じ見た目の草があるけど、これも薬草かな?」
「え!?」
あかりが急いで駆け寄ると、姫那が見つけたその草は間違いなく薬草だった。
「これも薬草だよ!」
「あかりちゃん!こっちにもあるよ!」
「ほんとに!?」
ルーナも同じ草を見つけていた。
「こんなにたくさん薬草が生えてるなんて、、しかも半年前とは全く違う場所に、、」
「この半年間で悪い方向に変わっただけじゃないのかもな」
エルサリオンはあかりに気を紛らわせて欲しくて話題を変えたが、予想外にも薬草の生息地が広がっている可能性が出てきて、あかりはテンションが上がっていた。
「うん!そうだね!エリー、ありがとう!」
先程までちょっと暗い顔をしていたあかりだったが、薬草を見つけた事によって普段の元気を取り戻した。
そしてその後も薬草のある場所を捜索すると、バルナス島全体に生息していた。
「すごいよ!半年間でバルナス島全体に生えてるなんて!」
「半年で良くも悪くも変わったって事だな。むしろクルアラントの住民からしたら薬草が増えてよかったんじゃないか?」
「うん!前の文明が失われたのはなんか寂しいけど、結果的に良い方向になってくれたし、よかったよ!」
最初は木や草が生い茂っていて変わり果てたバルナス島だったが、そこは薬草天国だった。
これはこれからの海底都市クルアラントの住民の為になるような島になったという事なのだ。
「ねぇ、、エリー!」
「ん?どうした?」
あかりがエルサリオンの元に走ってきた。
「さっきはありがとう!私が落ち込んでたから忘れさせる為に話を変えてくれたんでしょ?」
「、、なんの事かわからないな」
エルサリオンは少し間を空けてあかりにもわかるくらいにシラをきった。
「フフ、そっか!とりあえずありがとね!」
それにあかりも触れる事もなく、ただ純粋にお礼の言葉を伝えた。
エルサリオンも無言で微笑んだ。
「そういえばまだ探してなかったけど、5階層に行く為の転移陣って何処にあるんだろう?」
「それは目星は付いている。お前も知ってる場所だぞ」
姫那が転移陣の事を切り出すと、夏生が即答した。
「え?どこどこ?」
「忘れたのか?看板だよ看板」
「あ!」
姫那は完全に看板の存在を忘れていた。
それも無理はない。ここにくるまで5階層に行く転移陣の事はほとんど考えずに行動していたからだ。
「じゃあそこに行ってみようよ!どの辺りだったっけ?」
「そっちだ」
夏生が姫那の後ろを指刺す。
「そんなに近いところにあるの?」
「看板の事を考えて行動してたんだよ。最終的に近くに来るようにな」
夏生は二度手間にならないようにちゃんと考えてこの場所を目的地に選んでいた。
「何?夏生天才なの?」
「お前が何も考えなさすぎなんだよ」
夏生がデコピンをしようとするが、姫那はそれを軽快に回避した。
「久々だけど、それにはもう引っかからないよ!」
ニヤッとしながら夏生に言い放つ。
「バカかお前は。もう看板のところに行くぞ」
「あ!待ってよー!」
姫那と夏生のやり取りがいつもの事すぎてもうみんなほとんど無視していたが、あかりだけはキョロキョロしていた。
「みんなそんな無視していいの?なんかツッコんだ方がいいんじゃないの?」
「あれはいいんです!いつもの事ですから!あかりさんも気にせず無視して大丈夫ですよ!」
あかりの疑問に葵は笑顔で答えた。
「そう、、なんだ?」
「はい!」
「なら、、まぁいいか!」
あかりも無視する事にした。
「あ!それより向こうに看板がありましたよ!行きましょう!」
そしてついに看板も発見した。
5階層はもう目と鼻の先まできていた。
次回ついに5階層に突入!?




