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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE076:帰還

 転移陣から門までの道を作るために、姫那とルーナが飛び立った。

 そして数分して、待っていた夏生達は自分の目を疑うような光景が飛び込んできた。


 「おいおい、なんでもう向こうの門が見えてんだよ」


 夏生達の眼前には門までの一筋の道ができていたのだ。


 「お待たせー!流石にちょっと時間かかっちゃったけど、道できたよ!」

 「色々ツッコミたいところがあるが、これはもしかしてこの転移陣と門の一直線上にあった家を全部砂にしたのか?」

 「うん!そうだよ!すごい綺麗な一本道でしょ?」


 およそ10分前の姫那とルーナ。


 「お姉ちゃん!どうやって道を作るの?」

 「私すごい事思い付いたんだ!転移陣からあの門までにある家を全部砂に変えちゃうの!そうしたら道ができちゃうんだよね!」

 「え?そんな事できるの?今まで物はちっちゃい物しか壊してなかったじゃん!」

 「わかんないけど、やってみる価値はあるじゃん?だったらその可能性に賭けるのも面白いよ!」


 姫那は半ばギャンブル感覚で楽しもうとしていた。

 そして夏生達を驚かせる為に門側の家から砂に変えていく事にして、門に一番近い家に姫那が触れて、砂になれと念ずると一瞬で砂になった。


 「ほらできた!」


 姫那はドヤ顔でルーナを見る。


 「お姉ちゃんすごい!こんなおっきい家を一瞬で砂に変えるなんて!流石私のお姉ちゃんだ!」


 姫那以外誰もいないのに何故かルーナもドヤ顔をする。

 大きい家でもすぐに砂にできるとわかったので、姫那とルーナはテンポ良く道を作っていった。

 そしてさっき最後の家を砂に変えて、見事門から転移陣までの道を作り出したのだ。


 「もうなんかお前のギフトほんと規格外過ぎて意味わかんねぇよ。他のギフトが全て霞んで見える」

 「ほんとですねー!というかこの転移陣を探すのも姫那さんが瓦礫を砂にすれば一瞬で見つかったんじゃないですか?」


 葵が思い出したかのように言う。


 「いや、なんかこいつに任せたら壊れないはずの転移陣まで壊してしまいそうで怖い。ここはルーナと葵に任せて正解だったと思うぞ」


 今の姫那は壊せない物の方が少なそうだった。

 だから姫那がもし仮に何かの拍子に転移陣に触れギフトを使ったら転移陣諸共消えてしまう可能性もあった。


 「なるほどです!僕らの仕事は無駄じゃなかったんですね!」

 「全く無駄なんかじゃねぇよ」


 葵は何かホッとしたような表情を浮かべた。

 自分にできる事を姫那が全部できてしまえば自分に存在意義を見出せないと思っていたのだ。

 何か一つでも姫那にできなくて自分にできる事があれば、みんなの役に立てるからだ。


 「じゃあ後の3本の道も作ってくるよ!もうちょっとだけ待っててね!」


 そう言うとまたルーナとさっきとは違う方向に飛んでいった。


 「俺達、何しとこうか、、」

 「今は何もする必要ないんじゃないか?」

 「まぁそうだな。てか、何もできないしな」

 「そういう事だ」


 夏生の疑問にエルサリオンが答え、姫那とルーナに全て任せる事にした。

 そして待つ事20分、転移陣から東西南北の門に伸びた道が完成した。


 「これならタルブさんや他のみんなが来てもすぐにここってわかるよね?」

 「最初は無理矢理すぎるとも思ったが、確かにこれなら誰でも転移陣の場所がわかるな」


 この姫那の強行策は結果的に転移陣の場所を知らせるのに一番わかりやすい方法だった。


 「じゃあ全部終わりましたし、そろそろバルナス島に向かいますか!」

 「そうだな。あかりはもう思い残す事はないか?」

 「うん!大丈夫!楽しい思い出も辛い思いでも全部心の中に閉まったから!」

 「辛い思いでもか?」

 「うん!辛い事だけなら辛いままで終わってたかもしれないけど、みんなと出会って楽しい思い出もできたからこの辛い思いでもちゃんとこれからの糧にしようって今は思えてるの!」


 奴隷としてどう扱われていたかなんてその扱いをされた人にしかわからない。

 だからあかりが受けた苦痛の想像はできないが、今こうして一緒いて、それが今までの辛い思い出を打ち消すくらい楽しいと思ってもらえてるというのをあかりが言ってくれている事に純粋に喜びを感じた。


 「やっぱりあかりは強いな」

 「え?強くなんてないよ!悪魔に対抗もできなかったし、、」

 「強いよ。ちゃんと生きてただろ。強さに種類はあっても、それに違いはないよ」

 「そう、、かな?」

 「そうだよ!前も言ったじゃん!あかりが耐えてくれたから私達が助けられたんだよ!あかりが強かったから!」

 「姫那、、みんな、、ありがとう!」


 楽しい事も辛い事も分け合える仲間がいるという事はそれだけで安心できる。


 「よし、じゃあそろそろ行きますか!上に!」

 「そうだな。行こうか」

 「なんかこうやって転移陣に入るのも久しぶりな気がしますね!」

 「本当に色んな事があり過ぎたから、もう何ヶ月もいた気がするよね!」

 「もしかしたら、というか多分もうこの海底都市クルアラントの景色を見るのも最後かもしれないからな。目に焼き付けとけよ」


 夏生の言葉に全員が辺りを見渡した。

 そして転移陣に入り光になり姫那達は転移された。

 転移先はバルナス島からクルアラントに転移された海の転移陣に転移されると思っていたのだが、、


 「なんでこんなところに転移されてんのー!」


 そこは3階層から転移された時と一緒で上空だった。


 「これどうするの?前はエリーが2人、ルーナが1人で抱えれたけど、今回はあかりもいるからエリーが3人抱えるか、ルーナが2人抱えるかじゃないと誰か1人助からないよ!」


 エルサリオンは自分が3人抱えようと考えていたのだが、、


 「私が2人抱えるよ!」


 ルーナが2人抱えると言った。


 「大丈夫なのか?」

 「わからない。わからないけどやらないとダメじゃん!」


 やるしかないといった感じで、ルーナは目を見開いていた。


 「それに今ならなんか2人抱えるくらいなら大丈夫な気がする!」

 「、、そうか。正直俺も3人は厳しそうだから、ルーナが2人抱えれるならそれが一番だ」


 そして、まずはエルサリオンが夏生と葵を抱え、次にルーナが姫那とあかりを抱えようとしていた。


 「ルーナ、いけそうか?」


 エルサリオンがルーナに問う。

 するとルーナは難なく姫那とあかりを浮かしていた。


 「なんか全然重さを感じないよ!余裕!」

 「ルーナすごい!天才じゃん!」

 「ほんとにすごい!なんか浮いてるみたい!」


 ルーナは夏生に言われた質量を変えるのが自分のギフトの特性だと言われ、ギフトを少し理解した事によってできる事の幅が増えたのだ。

 ギフトは使用者の理解度と熟練度が合わさる事によってその真骨頂を発揮する。

 そして無事にバルナス島に降り立つ事ができたのだった。

ついにバルナス島に帰ってきた!

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