EpiSodE071:あかりの恐怖
「ん、んぁあ。もう朝か。よく寝た。それにしても昨日はよく飲んだな。頭が痛い」
エルサリオンもやはり酒を飲み過ぎていて、少し二日酔い気味になっていた。
「お前、昨日キャンプファイヤー楽しみまくっただろ」
夏生が起きてきたエルサリオンにすかさず話しかける。
「、、まぁ普通に楽しめたよ」
「普通に楽しめたって、お前絶対一番はしゃいでいただろ」
「普通だって。はしゃいでなんかない」
「こんなキャンプファイヤーに一番近いところで寝てて今も二日酔いのくせによく言うな」
「ちょっと多く飲んだのは飲んだが普通に楽しんだだけだ」
「そうかよ。それはそうと、これから考えないといけないのは上の島に上がる方法だな」
「あぁ、そうだな。ロノウェを倒した事によって5階層への転移陣は開かれてるはず。そしてそれがあるのが上の無人島だらうからな」
頑なに普通に楽しんだだけというエルサリオンには何を言っても無駄だった。
そして話は5階層の話になったが、とりあえず今は上の島にいく方法を探さなければいけなかった。
「それにしてもあいつはいつまで寝てるんだ」
みんな続々と起きてきたが、1人だけ起きる気配が全くない人間がいた。
「お姉ちゃーん!いつまで寝てるのー?もう朝だよー!」
「なんならもうお昼前ですね!」
「姫那は私達を救うために昨日ずっと働いてくれてたからね!やっぱりまだ疲れは取れてなかったんだよ!」
ある程度回復したとは言えど、夜のキャンプファイヤーも相まって、やはり数時間で完全に回復するような事はなかった。
あかりは姫那の完全回復の為に起きてからずっと姫那の手を握り癒し続けていた。
「あかりちゃんは大丈夫?そんなにずっとギフト使ってたら疲れてこない?」
「私は大丈夫!私のギフトは他人に能力を使ってる時は自分にも同じ効果のギフトが使えるんだ!だからどれだけ使っても私の体力は減らないの!」
あかりのギフトも姫那同様チート級のギフトだった。
「何それ!じゃあ半永久的に回復できるって事?」
「そうだよ!だから私自身は全然平気なの!」
「すごい!あかりちゃんがいたら疲れ知らずじゃん!」
「誰かを癒す事なら私に任せて!」
ルーナとあかりがそんな話をしている中、やっと姫那が目を覚ます。
「みんな、おはよう、、」
寝起きでぼーっとしている。
そして手を見ると握られていた。
それに気付いたあかりは少し焦りながら何故手を握っているか話した。
「こ、これは姫那の回復の為に手を握っていただけだよ!別に変な意味じゃないからね!」
そんなあかりのよくわからない弁明を聞いて姫那は笑いを堪えられなかった。
「ぷっ、あははは!」
「な、なんで笑ってるの?」
「いや、だってあかりの反応が面白かったんだもん!変な意味って何?私そんな事何も思ってないよー!」
姫那の笑いが止まらない。
「もう!それだけ笑えるんだったら完全に回復できたんじゃない?」
「ごめんねあかり!もう大丈夫!西條姫那完全復活だよ!」
「姫那が回復してくれたなら私はそれで十分だよ!」
あかりは今やっと姫那に恩返しができたような気がして、嬉しさが溢れていた。
「そういえばあかりはこれからどうするの?」
その姫那の言葉にあかりは少し眉をひそめた。
何故ならあかりは今まで敢えてその話をしなかったからだ。
その理由はそれを聞くのが怖かったから。
聞いてしまったら仲間じゃない自分はもう一緒にいられないのではないか、いてはいけないのではないかと思っていたのだ。
「どうしようかな〜、、何も決めてないや!」
「そうなの?てっきり私達と一緒に行くのかと思ってたよ!」
「え?一緒に行っていいの?」
「え?全然いいよ?むしろなんでダメなの?」
姫那は本当に不思議そうにあかりに聞いた。
「だって私はたまたま居合わせただけで、仲間じゃないし、、」
「そうなの?私はもうずっと前から仲間だと思ってたんだけど!」
「え?」
姫那からの思いもやらぬ言葉にあかりは言葉が出なかった。
「私達だって最初からずっと一緒だったわけじゃないよ?最初から一緒だったのは夏生だけ!ルーナだって3階層で出会ったんだから!」
「そうなの?私、みんな最初から一緒なんだと思ってたよ!」
姫那がちょっとニヤけながら再度あかりに聞く。
「あかり、これからどうするの?」
あかりも少し恥ずかしそうに答えた。
「姫那達と一緒にいたい、、一緒に行きたい!」
「私達もだよ!ね、ルーナ!」
「もちろん!あかりちゃんがいたら百人力だし、何より一緒にいて楽しいもん!」
これで新たにあかりが仲間に加わった。
「じゃあ、もうみんなも起きてるみたいだし、とりあえず外に行こっか!」
「そうだね!」
そして外に出てみると外は昨日のキャンプファイヤーの片付けでざわざわしていた。
「もう結構片付けも終わってるね!」
「だってもうお昼前だよ?お姉ちゃん!」
すごく手際良く片付けが進んでいたが、姫那が出てきた事により一時、全員の手が止まる。
「姫那様!おはようございます!よく眠れましたか?」
姫那に話しかけてきたのはこちらの世界の人間の長、タルブだった。
「おはようございます!はい!すごく気持ち良く寝れましたよ!もう体も完全回復もしたし!」
「そうですか!それは何よりです」
「女神様!おはようございます!」
姫那に話しかけてきたのは集落で姫那の元に駆け寄ってきた子供のハルだった。
「ハルちゃん!おはよう!ハルちゃんも昨日のキャンプファイヤー楽しんだ?」
「はい!久々に友達のみんなと自由に遊べて、すごく楽しかったです!」
「これからはいつでも自由に遊べるんだよ!」
「はい!それもこれも全部姫那様が救ってくれたからです!」
「違うよ!私達がここに来たのは偶然で、、ここにいるみんなが生きる事を諦めなかったからだよ!だから、本当に生きる事を諦めないでいてくれてありがとう!」
この姫那の言葉は広場にいるみんなに聞こえていて、そのほとんどが涙を流していた。
「なんと勿体無いお言葉か、、我々は姫那様に返しても返しきれない恩を頂いております。本当にありがとうございます」
人間族の長、タルブが頭を下げていた。
それを合図に集落のみんなが姫那に頭を下げていった。
「またみんな頭下げてるし!もういいって!私がしたくてやった事なんだからさ!みんな顔上げてよ!」
「では、ささやかながら私どもからの恩返しを一つ受け取って頂けますか?」
「それはいいけど、、」
「姫那様達は5階層に行く為に上の島、バルナス島に行きたいんですよね?」
「バルナス島?」
「ええ。姫那様達が最初にいた場所です」
「あー、上の島かー、多分行きたいと思う!」
姫那は夏生やエルサリオンのように頭が回らないのでよくわからなかったが、とりあえず話の流れに沿って答えた。
「でしたら私どもが半年かけて探り出した上の島、バルナス島への転移陣の場所をお教えします!」
タルブからの思わぬ発言に姫那も内容に頭がついてこなかったが、タルブがすごく目を輝かしているのを見て、姫那も何か少し心が昂っていたのだった。
スムーズに上の無人島、バルナス島に転移する事ができるのか!?
乞うご期待!




