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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE070:2人だけの世界

 大宴会は朝方まで続いた。

 それもそのはず。集落のみんなにとってはこの奴隷から解放されるという事は何よりも望んでいた事で、それが叶った今は何よりも喜ぶべき瞬間だった。

 だが、一人だけみんなと一緒に喜びを分かち合う前に深い眠りに落ちた人間がいた。


 「ふぁ〜。ん?もう朝か。っ!」


 大宴会が始まってすぐに酔い潰れて今までずっと寝ていた夏生がやっと目を覚ました。

 覚ましたのだが、もうその時には宴会は終わっていて、みんなその場に寝そべっていた。

 そして少し酔いが醒めて我にかえり、二日酔いで頭がものすごく痛かった。


 「昨日は飲みすぎたな」

 「飲みすぎたって、夏生コップ半分しか飲んでないんでしょ?」


 座って下を向いていた夏生に前から姫那が話しかけてきた。


 「俺は未成年だぞ?仕方ないだろ。てか、お前起きてたのかよ」

 「私も未成年だけど、全然平気だったもーん!みんなで騒いでたらこんな時間になっちゃった!さっきまでみんなも起きてたんだよ?」

 「そうだったのか」


 少し沈黙になって、姫那が恥ずかしそうに口を開く。


 「ねぇ、昨日の事覚えてる?」

 「昨日の事っていつの話だよ。色々ありすぎてどれかわからん」


 確かに昨日は色々ありすぎたと思い返す姫那。


 「まぁそうなんだけど、昨日の夜ここで夏生が私に言った事だよ!」

 「俺が言った事?俺お前に何か言ったのか?」

 「やっぱいいや!なんでもない!」

 「なんだよ、気になるじゃねぇか、、あ!」


 夏生が何かを思い出したように大声で叫んだ。


 「何?何か思い出した?」


 びっくりしてか夏生が思い出した事についてか自分でもわからなかったが姫那はすごく胸がドキドキしていた。


 「お前昨日俺に無理矢理水飲ませただろ!死ぬかと思ったぞ!」

 「そんな事じゃないよ!バカ!」


 そう言って姫那は立ち去って行った。


 「なんだよあいつ、なんで怒ってるんだよ。ん?なんか昨日もこんな感じで怒ってどっか行ったような、、まぁいいか。その内機嫌直すだろ、バカだし」


 夏生は何か思い出せそうな気がしたがそこまで重要な事でもないと思ったので、すぐに諦めた。


 「何よ、もう!なんで私がドキドキしないといけないの!意味わかんない!」


 自分でも夏生に何を期待していたのかわからない。

 だが、何故か期待を裏切られたような気になって、夏生に八つ当たりをしてしまった。


 「後で謝っとこうかな、、まぁ夏生だし別にいっか!」


 結局2人は何が言いたくて、何を聞きたいのかわからないままであった。


 「それにしてもこんなに騒いで楽しんだのいつぶりだろ?エルフの街の時でもこんなに騒がなかったしな〜、、やっぱり今まで自由な事がなかった分、楽しさが爆発したのかな!」


 姫那はそんな想像をしながら嬉しくなり、ニヤけていた。

 そして今まで集落の人々と騒いでいたツケが回ってきたのか、ついに姫那にも限界がきて最初にいたベッドに倒れ込むようにして眠りについた。

 その頃夏生の方はというと、今までずっと爆睡していた為、完全に目が覚めていた。


 「今何時だ?まだ明け方だよな。誰も起きてないのか?」


 ・・・・・


 物音すら鳴らなかった。

 そしてふとキャンプファイヤーの一番近くで寝ている人に見覚えがあった。


 「あいつは、、」


 近寄ってみると夏生の予想通り、そこで寝ていたのはあのエルフだった。


 「エリー、、こいつしっかり楽しんでるな」


 キャンプファイヤーの近くで爆睡していたエルサリオンは顔も真っ赤で一番気持ちよさそうだった。


 「こいつ後でバカにしてやろう」


 姫那やルーナにバカにされるのは何かといつも自分だったので、たまにはその気持ちを味わわせてやろうと思った。


 「誰も起きる気配がないな。どうしようか」

 「もう起きていたのか、夏生」


 バッ


 夏生が臨戦体制になった。


 「おっと。俺だよ俺、ドルーグだ」

 「なんだ、ドルーグか。すまない、気配が全くなかったから敵かと思って」

 「いや、俺の方こそすまん。癖で気配を消してしまっていた」


 夏生は驚いた。ここまで完全に気配を消せる者がいる事に。


 「俺達竜人族は元は戦闘民族だからな。気配を消すくらいならわけないんだ。完全に消せるのは竜人族でも2人だけだが」

 「ドルーグと族長か?」

 「あぁ、そうだ。やはり完全に気配を消すには長くきつい修練が必要だ。何人も挑戦はしているが、ことごとく諦めている」


 確かに夏生が初めて竜人族の集落に訪れた時に感じたのはドルーグと族長の桁違いの強さだった。

 並大抵の努力では、ドルーグや族長のレベルにはなれないというのを今夏生は肌で感じた。

 それと同時に夏生の好奇心を掻き立てた。


 「ちょっと()ってみないか?」

 「やるって何をだ?」

 「何って男同士がやる事なんて決まってるだろ。手合わせだよ」

 「こんな朝っぱらから何言ってるんだ?」

 「なんだ?負けるのが怖いのか?」


 その言葉にドルーグの体がぴくりと動く。


 「、、ちょっと待ってろ」


 そう言うとドルーグは一つの建物の中に入って行き、すぐに出てきた。

 出てきたドルーグの背中には身の丈ほどの大剣があった。


 「すげーでかい剣だな。そんなもんちゃんと振れるのか?いや、振れるんだろうな、お前なら」

 「夏生、後悔するなよ。俺をやる気にさせた事を」

 「いいねぇ〜、その気合い!俺もテンション上がってきた!」


 そして夏生も2本の剣を創造する。

 ドルーグの大剣に対して、夏生はドルーグの大剣を受け止めたらすぐに折れてしまいそうなか細い剣だった。


 「そんな剣でいいのか?本当にただじゃ済まないかもれんぞ」

 「大丈夫だ。これでお前に勝つ」


 静まり返る街で夏生とドルーグだけが異様な空気を放っていた。


 「行くぞ」


 2人が同時に動き出し、ドルーグが大剣を振り下ろす。

 その振り下ろされた大剣は風を切る音を上げて夏生へと一直線に向かっていく。

 夏生もその大剣に向かっていくが、真正面から受けるのではなく受け流してドルーグの大剣の軌道を変えた。


 「!?」


 それにドルーグは驚いた。


 ドゴォーン


 軌道が変わった大剣は地面に突き刺さった。

 そしてドルーグの喉元に夏生の剣の切っ先があった。


 「ふぅ。まいったよ」


 ドルーグが負けを認め、夏生が剣を引いた。


 「俺の作戦勝ちだな」

 「まさか俺の大剣が流されるとはな。夏生の剣術も相当なものだな」

 「俺達もここに来るまでに色々あったからな。でも、手合わせしてくれて助かったよ」

 「助かった?」

 「あぁ、俺はまた強くなれた」


 夏生は今まで剣を受け流すなんて事をした事もなかったし、考えた事もなかった。

 だが、今回のドルーグとの手合わせのおかげでそれが出来た。夏生の剣術が成長したのだ。


 「、、そうか」


 ドルーグは軽く笑いながら負けたのに何故か少し嬉しそうだった。


 「そうか。じゃないよー!2人とも朝からうるさすぎ!」


 夏生とドルーグの手合わせの音でルーナが起き、他の者も続々と起きてきた。


 「みんな起こしちまったな」

 「まぁもう日も昇ってきてるしいい目覚ましだろ」


 2人は笑い合っていた。

 剣を合わせた事で何か通じ合ったみたいだった。


 「え?なんで夏にぃとドルーグが戦ってるの?何かあったの?」

 「ドルーグ様、何かあったのですか?」


 ルーナと竜人族が少し焦った様子で近寄ってきた。


 「なんでもねぇよ。ちょっと遊んでただけだ。なぁ、ドルーグ」

 「そうだな。戦士としてのちょっとした戯れだ」


 それを聞いて、ルーナと竜人族は意味がわからず、頭の中は?で埋め尽くされた。


 「まぁ喧嘩とかじゃないならいいけど、、」


 そしていきなり夏生がふらつく。


 「っ!」

 「おっと。どうした?大丈夫か?」


 ドルーグが体を支えてくれた。


 「すまん、二日酔いがまだ治ってなかったみたいだ」

 「二日酔い?お前そんな状態で俺と手合わせしたのか?」

 「そうだが?」

 「、、フフ。俺の完敗だな」


 二日酔いの状態であんな動きをされては普通の状態ならもっと力の差を見せつけられただろうとドルーグは思った。

 そして長く濃い1日が終わり、別れの2日目がやってきた。

戦士と剣士の意地のぶつかり合いを制したのは夏生だった。

次回は5階層について触れようと思います。

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