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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE007:北の山攻略

 目を開けると綺麗な朝焼けが広がっていた。

 そういえば、ここは迷宮なのに太陽があり月もあって、空も雲もある。

 この迷宮はどういう作りになっているのだろうか。

 多階層迷宮に転生されたとは思えないくらい元の世界と変わらない風景だ。


 「この空や太陽とかは作り物なの?」

 「作り物じゃない。本物だ」


 エルサリオンが答える。


 「どうしてダンジョンに本物の太陽とかがあるの?」

 「姫那、お前達の常識で考えてはダメだ。お前達の世界にはお前達の常識があったように、ここにもここの常識がある。まずは考え方の根本から変えていかないとこのダンジョンの攻略は難しい」


 確かにこんな状況自体が非常識だし、それに加え、特殊な能力やエルフ。

 これから更に険しい道になるに違いないし、何が起きてもおかしくない。

 エルサリオンの言葉を聞いてより一層気を引き締める姫那と夏生であった。


 「早朝だと魔物の数も少ないね」

 「魔物も寝てるのかもな」


 そんな事を言ってると魔物の数が徐々に増えてきた。

 そして、、


 「あれ、山じゃない?」


 姫那が遠くの方を指差して言う。


 「山だ。やっと着いた。なんで姫那はそんな元気なんだよ」


 夏生は既に疲れた表情だ。


 「え、だって嬉しいじゃん!やっと着いたんだよ?テンション上がるじゃん!」


 更に元気になった。


 「ふぅ。姫那は元気すぎるけど、夏生は疲れすぎだ。今から山を登らないといけないんだぞ」


 エルサリオンは自分の直感は間違ってなかったと安堵の表情だ。


 「わかってるよ。体力的には全然余裕だって」


 山の麓まできて、三人は気付いた。

 この山は自然にできた山ではなく、人工的に作られた山だった。

 何故そう見えたかと言うと、山が要塞のようになっていたからだ。


 「これは、、、山を掌握するには骨が折れそうだな」

 「まずこの要塞は誰が作ったんだ。人影もないし、俺の直感で何かがいるのはなんとなくわかるがここからは慎重に進まないといけないな」


 そして警戒して山に足を踏み入れると魔物が襲ってきた。


 「なんだ、今までと一緒の魔物か」


 夏生がそう言って剣を振り下ろすと、魔物はその剣を避けた。

 それを見た夏生は目を見開く。

 今までこのスピードで剣を振っていて避けれる魔物はいなかった。

 見た目は全然変わらない魔物だが、その動きは草原の魔物とは比べ物にならなかった。

 そして夏生に攻撃しようとしたところを姫那が思考誘導で止めて、夏生がさっきよりも早く剣を振って魔物を倒した。


 「ありがとう、姫那」

 「ううん、全然大丈夫!」


 今のは正直姫那がいなかったら危なかったと思う夏生。


 「油断したな。まぁ俺もびっくりしたが」

 「油断なんてしてねぇよ」


 そう、夏生は油断はしていなかった。

 その証拠にいつも通りの剣で速度も緩めず倒しにかかった。

 想定外だったのはこの魔物だ。三人を一瞬怯ませる程の動きがだったのだ。

 唯一動けたのは姫那。姫那の能力は思うだけで発動できるから、助ける事ができた。


 「この先は更に強い魔物に遭遇するかもしれない。というか、登るにつれて強くなっていくと思う。魔物が出てきたらどんな奴でも全力で倒そう。それが一番安全だ」


 気の抜けない戦いになる事は間違いなかった。

 夏生とエルサリオンが前衛で姫那が後衛という陣形で登る。

 魔物が出たら姫那の思考誘導で行動を限定して、それを夏生とエルサリオンが倒す。

 このメンバーの最短で最高のチームプレーだ。


 「そろそろ半分くらいまで来たかな?」

 「それくらいは来たんじゃないか」


 ここまで今まで一撃で倒せていた魔物も一撃じゃダメージを負うくらいで、何度かダメージを与えないと倒せなくなっていた。


 「もうこんなところまで来たか」


 誰かの声がして、三人が振り返る。


 「誰だ!」


 「やぁ。そんな殺気剥き出しにしないでくれよ」


 そこには人間のような人物が立っていた。


 「僕はセーレ。悪魔だよ。こんなところまで来るなんて君たちすごく強いなぁ」


 子供のような体格だが、セーレから発せられるオーラは今までの魔物とはレベルが違う事は明らかだった。


 「ここで悪魔かよ。出るなら頂上で出てくれよ」


 夏生がボヤく。

 そしてエルサリオンを見てみると、瞳孔が開いて今にも飛び出していきそうな形相だ。

 当たり前の反応だろう。エルフは悪魔に故郷を占領されたのだから。


 「エルサリオン、落ち着いて!気持ちはわかるけど、、」


 姫那の声も全く届いてない。

 そんな姫那も焦っていて、能力を使う事が頭になかった。

 最初は能力自体を把握してなかったから無意識下で発動できたが、今は操れる分意識しないと発動しない。

 そしてエルサリオンは飛び出していった。


 「エルサリオン!」


 姫那と夏生が叫ぶ。

 その瞬間、二人は驚愕した。エルサリオンが見えなかったのだ。

 更に、セーレとかいう悪魔と互角、むしろエルサリオンの方が押してるのだ。


 「あいつ今まで本気じゃなかったのかよ。俺まで見えなかった」


 これまでずっと戦ってきたし、一度は剣も交えた。

 実力はわかってたつもりだが、エルサリオンは二人の想定を遥かに凌駕した強さだった。

 しかし、それは悪魔も一緒。


 「本当に強いね。じゃあ僕もちょっと本気出しちゃおっかなぁ」


 そう言うと、体が大きくなり、黒い翼が生えてきた。


 「さぁ、第二ラウンド始めよう」

 「あぁ、そうだな」


 姫那と夏生はさっきの驚きも醒めないままに目を見開いた。

 エルサリオンにも緑の半透明の翼が生えてきたのだ。


 「いやもうなんなんだよこいつら」

 「なんか場違い感ハンパないね」


 呆れ笑いとでも言うのだろうか。そんな笑い方で戦いを見ていた。


 「お前、マモンって悪魔知ってるか?」


 戦いながらエルサリオンが問う。


 「相手に喋りかけるなんて余裕だね」

 「いいから答えろ!」

 「あはは、まぁ答える義理はないけど、教えてあげるよ。マモン様はお強い悪魔。強欲を司る七大悪魔だよ」

 「強欲を司る、か。俺の故郷を()()()じゃなくて()()()のはそういう事か」

 「マモン様に故郷盗られちゃったんだ!あの方は人が大切にしてるものほど奪いたくなっちゃうからな〜。運が無かったと思うしかないね」


 この会話の間にも何度も切り合っている。

 もう常人には何が起こってるか見えないだろう。

 目が慣れてきた夏生でさえかろうじて見える程度だった。もちろん姫那には見えてない。


 「ガキが。黙れ」

 「僕こう見えて200年以上生きてるんだけどな。見た目で判断したらダメだよ?ガキが」


 悪魔には年齢によって容姿が変わっていくという事はなく、セーレみたいに200年以上生きてるのに子供みたいな身なりもいれば、50年しか生きてないのにそれ以上に見えるものもいる。


 「俺たちは先を急いでいるんだ。そろそろ終わらせるぞ」

 「何でだよ!僕ともっと遊ぼうよ」


 セーレは不敵な笑みを浮かべている。


 「いや、もう終わらせる」


暴風矢(ストームアロー)


 エルサリオンがそう言うと、無数の風の矢がセーレに向かって放たれた。


 「なんだよこの魔法は!」


 セーレは急いで防御しようとしたがそのあまりの速さと威力の前には無意味であった。

 それは煌びやかで残酷な怒りのこもった一撃。


 「こんなもの隠し持ってるなんて。でも僕は倒せたとしてもこれでもマモン様は傷一つ負わないよ。それにこの山の頂上には()()()もいる。まぁ精々頑張ってよ」


 悪魔セーレは灰のようなものになって散っていった。


 「最後の何?エルサリオン強すぎでしょ!」

 「なんなんだよお前は」


 姫那は興奮しまくって、夏生はさっきから同じことばかり言ってる。


 「すまん、別に隠してたつもりとかはないのだが、使うタイミングもなかったんでな」

 「まぁいいけどよ。仲間が強いに越した事はないしな」

 「夏生悔しがってるよ絶対!顔でわかるもん!」


 エルサリオンに小さい声で話す姫那だったが普通に夏生に聞こえていた。


 「全然悔しがってねぇよ!」

 「あ、聞こえちゃった!」

 「今回はエルサリオンが一人でやっちまったけど、頂上に行ったらもっと強い悪魔がいるはずだ。それまでに俺らももっと強くなるから次は三人で戦うぞ!」

 「あぁ、そうだな。悪魔が言ってた()()()って奴もあの言い方からするともっと手強そうだ。次は一緒に戦おう」


 夏生達は強くなる事を、エルサリオンは頼る事を。

 互いを信頼してこそ仲間なのだ。

西條姫那

能力〈ギフト〉:洗脳系のギフト

意識誘導(ブレインリーディング)

思考誘導(ブレインドミネーション)


石田夏生

能力〈ギフト〉:刃物を自在に創造するギフト


エルサリオン

魔法

暴風矢(ストームアロー)

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