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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE067:命の恩人

 「あ、姫那様、、姫那様だ!」

 「姫那様が起きられた!」


 ざわざわ


 姫那が窓から顔を出した事により広場がざわつき始めた。


 「何笑ってるんだよ」


 ニヤけている姫那に対して夏生がツッコミを入れた。


 「いやなんかね、姫那様っていうのは何回呼ばれても慣れないけど、こうやってこんなに大勢の人に心配されて治ったら喜ばれて、私って本当に幸せ者だな」


 別に自分が幸せになりたいからみんなを助けたわけじゃない。

 だが、助けた事によってみんなも幸せになって自分も今幸せを感じれている。それがすごく嬉しかった。


 「そんな立てもしない体で何幸せとか言ってるんだよ。向こうの人達はお前が元気になって初めて幸せを感じれるんだ。早く元気になれ」

 「もう元気だよ!ほら!っと!」


 姫那が立とうとしたがしっかり立てずふらつく。

 それを夏生が抱き抱える様に支える。

 夏生にお姫様抱っこみたいな形になり、少し顔が赤くなる姫那。


 「危っ。さっきまで死にそうになってたくせにまだ無理するなよ。完全に回復するまで寝とけ」

 「わ、わかったよ、、ってかいつまで抱えてるの!」


 姫那はそう言うと、夏生から離れてベッドに戻った。


 「なんだよ。助けてやったのによ。まぁ今はそうやってゆっくり寝てろ。ルーナ、姫那を見ててくれるか?」

 「うん!私に任せて!」

 「私も一緒にいていいですか?姫那様の体調が悪化しないか心配なので」


 あかりが姫那のところにいたいと自分から申し出てくれた。

 もちろん断る理由はない。むしろありがたい事だ。


 「あぁ、あかりがいてくれるとみんな安心だ。俺からも頼むよ」

 「ありがとうございます」


 壁の方を向いていた姫那があかりの方に向き直った。


 「あかりちゃん、私の事姫那様なんてそんな呼び方しなくていいよ!」

 「ではなんとお呼びしたらいいでしょうか?」

 「普通に姫那でいいよ!命の恩人に様付けで呼ばれるなんてなんか変な感じだし!」

 「呼び捨てなんてできないです!私からしたら姫那様も命の恩人なので!」

 「じゃあどうしよっか?」

 「姫那さん。姫那さんとお呼びしてもいいでしょうか?」


 あかりが少し恥ずかしがりながら姫那に問う。


 「んー、まぁ最初はそれでいっか!」


 今まで笑顔なんて全くなかったあかりだが、姫那と会話した事により、あかりは初めての笑顔を見せて、姫那と一緒に笑い合っていた。


 「よし、もうお前は寝てろ。エリーと葵、俺達は下のみんなに姫那が無事だった事をちゃんと報告しに行こう」

 「そうだな」

 「はい!きっとみんな大喜びですよ!」


 窓から顔を出したとはいえ、まだ心配の種は残っているだろうから、夏生とエリーと葵は姫那の無事をみんなに伝えに行く事にした。

 姫那の部屋は2階だったので下に降りてドアを開けると集落のみんなで押し寄せてきた。


 「先程窓からお顔が見えましたが、姫那様は無事なのでしょうか?」

 「私どもに何かできる事はないでしょうか?」


 姫那の為ならなんでもするといった表情で夏生達に迫っていた。


 「みんな心配なのはわかるが一度落ち着こう。姫那は大丈夫だから」


 姫那は大丈夫。それを聞いた集落のみんなは安堵の表情を浮かべていた。


 「よかった、、よかった、、」


 安心して泣き出す者までいた。

 それを見て夏生達も姫那のした事の偉大さを肌で実感したのだった。


 「大丈夫とは言ってもさっきまでは本当にどうなるかわからなかったし、まだ完全に回復した訳じゃない。だから今はそっとしておいてやってくれ。みんなが心配そうな顔をするとあいつも無理をするからな」


 夏生が姫那の今の状態を伝え、それに加えて姫那に療養に集中してもらう為に気を遣わせないように誘導した。


 「そうか。そうだよな。さっきまで死の淵を彷徨っていたのにすぐに元気になるわけないよな。わかった、ここは俺が責任を持ってみんなを管理する。みんなもそれでいいか?」


 そう言い出したのは、一番最初に姫那に救われた竜人族のドルーグだった。


 「ドルーグなら問題ない!」

 「あぁ、そうだな」


 ドルーグは強さもさることながら集落のみんなからも信頼をされていた。


 「ドルーグ、、ありがとう。感謝する」

 「いや、感謝をしてもし足りないのは俺達の方だ。だから俺達に出来る事ならなんでもやるからいつでも頼ってくれ」

 「、、ありがとう。だったら早速頼み事をしてもいいか?」

 「もちろんだ。どんな事だ?」

 「実は一緒にやってほしい事があるんだが、、」


 夏生からのお願いを聞いたドルーグは集落のみんなを統率し、行動し始めた。


 「よし、俺達もやるか」

 「そうだな」

 「はい!」


 3人も行動を始めようとしていた。

 そしてその頃姫那が寝ている部屋では。


 「あかりちゃんはいつからこっちの世界にいるの?」


 姫那があかりに興味津々で質問攻めをしていた。


 「私は一年前くらいからこの世界にいます。でも悪魔に捕まったのが半年前なので、自由に過ごしたのは実質半年です」

 「半年間も奴隷として過ごしていたんだね、、」


 姫那の言葉を聞いて少し俯きながら言葉を返した。


 「悪魔から無理矢理外したら爆発すると言われていたので、正直何度も自分でブレスレットを外して楽になろうとしました。実際に何人もそうなった人も見てきましたし」


 その話を聞きながらそれ程までに追い込まれていたのかと姫那とルーナは驚きを隠せなかった。

 そんな姫那とルーナの思いとは裏腹にあかりは顔を上げて笑顔で更に言葉を続けた。


 「でも今はこうやって姫那さんに助けて頂いたので今まで生きていてよかったなって、生きる事を諦めないで本当によかったって心から思います」


 涙を流しながら最高の笑顔を見せてくれた。


 「なんかこうやって私が助けてあかりちゃんに助けてもらって。今のこの現状って全部なるべくしてなってるんだなって思うよ!」

 「私もそう思う!」

 「そうですね!」


 姫那の言葉に2人とも同調する。


 「そういえばあかりちゃんって今何歳なの?」

 「私は今年で19歳です」

 「え!じゃあ私の一個上じゃん!ずっと敬語じゃなくてすみません!」

 「何を言ってるんですか!姫那様は私達の命の恩人なんです!私に敬語なんて使わないで下さい!」


 姫那の敬語にあかりも焦ってまた様付けをしてしまった。


 「ぷっ、あはは!そんなに焦らなくても!じゃあ、お互い敬語はやめて話そうよ!私、もっとあかりちゃんと仲良くなりたい!」


 あかりは少し戸惑っていたが、何か考えたような顔でそれを受け入れた。


 「姫那さんがそう言うのなら、私はそれで、、」

 「敬語じゃないんだから、さんじゃなくて呼び捨てだよ!あかり!」

 「ひ、姫那、、」


 照れて恥ずかしそうにしているあかりがものすごく可愛かった。


 「あかり可愛い〜!」

 「あかりちゃん可愛い〜!」

 「もう!バカにしないでよ〜!」


 姫那とルーナがあかりをイジるくらい心の距離も縮まっていた。


 助けて助けられて、互いが互いに命の恩人になった事で命の大切さを改めて知る事ができたのだった。

もうそろそろ4階層も終わるかな?

でもまだ大イベントも残ってますのでお楽しみに!

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