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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE065:ツケ

 今までの二十の集落は種族ごとに分けられていたが、この中央広場は商業の地なので、種族は関係なく悪魔以外はブレスレットをはめられ、働かされていた。


 「多くないって言っても70人くらいはいるんだね、、お姉ちゃん大丈夫?」

 「ほんとに余裕だよ!なんか最初にやり始めた時より力が湧いてきてる!」


 明らかに変なテンションになっている姫那。

 それが余計にルーナの不安を煽っていた。

 そして、姫那がブレスレットの解除に取り掛かろうとしていた。


 「姫那様、よろしくお願いします」


 そこにいた人々みんなが『姫那様』と姫那を崇めて助けを待っている。

 そんな人々の姿を見て、ルーナは自分でもよくわからない感情になっていた。


 「やめてよ!」


 奴隷の人々の横からルーナが叫んだ。

 その叫びに奴隷はもちろん、姫那や夏生、エルサリオン、葵も全員が驚いていた。


 「もうやめてよ!私のお姉ちゃんを姫那様姫那様って神様みたいに呼んで、、お姉ちゃんも人間なの!何処にでもいるあなた達と一緒の人間なの!」


 そこには人間じゃない種族もいるし、もちろん人間もいたのだが、泣き叫ぶルーナが何を言っているのか意味を理解できた者はいなかった。


 「ルーナ?どうしたの?私は大丈夫だよ?」

 「わかってる、わかってるけど、、もう私どうしたらいいかわからないよ、、」


 姫那も何故ルーナがそんな事を言っているのかわからなかった。

 わかっていたのは姫那の今の状態を少しだが把握していた夏生、エルサリオン、葵だけだった。


 「ルーナ、、どうしちゃったの?」


 姫那はすごく困惑していた。

 こんな状況は今までで初めてだったからだ。

 今までなら何故ルーナが泣いていて、何故怒っているのかなんて手に取るようにわかっていた。

 何故なら自分の妹だからだ。

 それが今回に関してはルーナが泣き叫ぶ理由が全くわからなかったのだ。

 それは姫那が自分の体を犠牲にして他人を救っているという自覚がなかったのも原因の一つである。


 「姫那、お前は奴隷解放に集中しててくれ。ルーナは俺達が見とくから」

 「でも、、」

 「今のお前は何故ルーナがあぁなってるかわからないだろう?」

 「、、うん」

 「だったら今ルーナの元に行ってもあいつを困らせるだけだ。ルーナは俺達に任せろ。あいつもすぐ復活するから」

 「、、わかった。ルーナをお願い」

 「あぁ」


 夏生が姫那は奴隷解放に集中するように伝え、ルーナの元に向かう。

 そこから姫那はブレスレットを壊してみんなを救い、感謝の言葉を伝えられるが、ルーナが気になり今まで通りに心からの笑顔で返す事ができず、ずっと作り笑顔をしていた。


 「ルーナ、大丈夫か?」

 「夏にぃ、、ごめんなさい。私、、私、、」

 「いいんだ。お前が言いたい事は他の誰もわからなくても俺達がわかってる。大丈夫だ。それに姫那の方を見てみろ」


 会話がなくなった分、今までより更に早いスピードでブレスレットの破壊が進んでいて、30分も経たずにもう後3人となっていた。


 「もう終わる。どうやら姫那はなんとか乗り切ったみたいだ」

 「僕、本当に姫那さんを尊敬します。他人の為にあそこまで頑張れる人なんて他にいないです」


 葵も泣きそうになっていた。


 「それはみんな一緒だ。あいつを尊敬してないやつなんていないよ」


 そして、ついに最後の一人も終わった。

 最後の一人を終わってもやはり姫那は浮かない顔をしていた。

 ずっと考えているのだ。何故ルーナがあんなに怒っていたのかを。

 考えながらずっと立ち尽くしていたら、ルーナが寄ってきた。


 「お姉ちゃん、、ごめんなさい。私、なんかもうどうしたらいいのかわからなくなっちゃって、、お姉ちゃんの邪魔はしたくないし、でもギフトを使い続けているお姉ちゃんが心配だし、、そんな事何もわかるはずがない他の人達に当たっちゃって、、本当にごめんなさい」


 姫那はルーナにそう言われて、今初めてルーナの叫びの意味がわかった気がした。


 「そっか、そうだったんだね、、私の方こそ心配かけちゃってごめんね?そんなに心配してくれてるなんて思わなくて、私みんなの事何も考えてなかったよ、、」


 ルーナやみんなの気持ちを理解して初めて自分がどれだけみんなに心配をかけていたのかわかった。


 「お前はいつも俺達の想像を超えていくけど、お前も俺も一緒の人間なんだからな。無理をするなとは言わない。無理をしないと出来ない事もあるからな。でも無理をし過ぎるなよ」

 「夏生、、ありがとう」


 姫那もルーナや夏生の言葉を聞いて目に涙を浮かべていた。


 「まぁ今回のこれは俺達が何も出来なかった事が原因だがな」

 「そんな事ないよ!みんなサポートしてくれて本当に頼もしかったんだから!」

 「ならよかったよ」


 少し重かった空気も軽くなり、みんな笑い合っていた。


 「よし!じゃあ、全て終わった事だし早速集落の人を呼びに行こうよ!って呼びにいくのは私じゃないけど!」

 「うん!私とエリーが行くからその間にお姉ちゃんは少しでも休んでて!これだけはお願い!」

 「わかりましたー!しっかり休みます!」


 そんなやり取りをしてエリーとルーナが集落のみんなを呼び行こうとしていた。


 「じゃあ私はあっちに行くからエリーはあっちから呼びに回って!」

 「あぁ、わかった。そんなに急ぐ必要もないから気をつけて行けよ」

 「わかってるよー!私だって子供じゃないんだから!」


 姫那に何事もなくてルーナも少し安心していた。

 そして飛び立とうとしたその時。


 バタンッ


 「え?何?」


 ルーナが後ろを振り返ると最悪の光景が目に映っていた。


 「姫那!」


 姫那が倒れたのだ。


 「おい!姫那!おい!」


 夏生が声を掛けるが全く反応がない。

 風前の灯火だった姫那の気力が目的を達成した事により緊張の糸が切れ、恐れていた事が訪れてしまった。


 「なんで?なんでお姉ちゃんが倒れてるの?なんで、、」


 ルーナも今までずっと姫那の事を心配していて、気持ちが張り詰めていた。

 少しずつ精神もずっと削られていたルーナは姫那が倒れた事によって精神崩壊を起こしそうになっていた。


 「ルーナ!気をしっかり持て!」

 「お姉、、ちゃん、、」

 「ルー、、ナ、、大丈夫だよ」


 姫那が意識を取り戻し、ルーナに話しかけた。

 それは姫那自身が自分が倒れたらルーナは壊れると思っていたからだ。

 以前自分がそうなったように。


 「お姉ちゃん!大丈夫?」

 「大丈夫だよ、、ちょっと疲れただけだよ」


 辛そうな顔で微笑んでた。


 「ちょっと待ってて!今から回復士を呼んでくるから!」


 集落を回っている時に一つの集落で回復士がいたのだ。


 「エリー!他の集落お願いしてもいいかな?」

 「わかった。場所は覚えているのか?」

 「うん!その場所だけはずっと覚えてたんだ!」


 姫那の状態を考えてルーナは回復士がいる場所を覚えていた。


 「お姉ちゃん!すぐに呼んでくるからもうちょっとだけ待っててね!」

 「うん、、わかった、、ありがとうね、ルーナ。やっぱりちょっと無理しすぎたみたい」


 姫那の体が熱くなっていて、おでこを触ってみるとすごい熱だった。


 「お姉ちゃんすごい熱、、」

 「そうだよね。実は今結構しんどかったりするんだよね」

 「もう!やっぱり無理しすぎだよ!ちょっと待っててね!」


 ルーナの精神は戻っていた。

 理由としては姫那の意識がハッキリしていたというのと、助けたい。今ならまだ間に合うと思えたからだった。

 そしてルーナは回復士がいる集落を目指して全速力で飛んでいった。


 「ルーナ、俺と同じくらいの速さで飛んでるんじゃないか?」

 「あの速さは多分お前より速いよ」


 エルサリオンはそれはないだろうという顔をしたが、本当にそれくらい速かったので少し焦っていた。


 「俺も行ってくる」


 ルーナに対抗してエルサリオンもものすごいスピードで飛んでいった。

 一方で姫那はルーナが飛び立った後、気持ちが切れてしまったのか、意識がなくなったように眠ったのだった。

ついに今までのツケが回ってきた。

姫那は無事回復するのか。

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