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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE062:奴隷の心情

 奴隷解放に向けて、一番最初に訪れた集落は竜人族だった。

 最初にドルーグが半信半疑のまま姫那に近づくと、ブレスレットは一瞬で破壊された。


 「因みにここには何人の竜人(ドラゴニュート)がいるんだ?」

 「ここにいる竜人族は三十人だ」

 「姫那、いけるか?」

 「余裕!」


 そして姫那は次々と竜人族のブレスレットを解除していった。


 「これで最後だね!こっちおいで!」


 最後は竜人族の子供だった。

 少し怯えていてなかなか姫那に近寄ろうとしなかった。


 「大丈夫だよ!全く痛くもないし、すぐに終わるからね!」


 姫那の方から竜人族の子供に近づいていき、ブレスレットに触れる。


 パキンッ


 最後のブレスレットが解除された。

 この瞬間、竜人族は悪魔の支配から本当の意味で解放されたのであった。

 それを盛大に喜ぶのかと思ったら、竜人族から声は全く聞こえなかった。


 「そんなに嬉しくないのか?全然喜んでないように見えるが」


 別に何か見返りが欲しいとかではない。

 せっかく解放されたのに何故喜ばないのかと純粋に夏生は疑問に思ったのだ。


 「いや、嬉しいさ。嬉しいに決まってる。でも何故かな、この喜びを表現する言葉が我には見つからない」


 竜人族の族長が涙を流しながら言葉を振り絞る。


 「奴隷の証をはめられて百余年。正直もう諦めていた。一生悪魔の奴隷になる事を受け入れかけていた。そんな中、姫那様がなんの縁もない我々全員を救って下さった。感謝してもしきれない」


 姫那達は全員笑っていた。

 最初にいくら罵倒されようと、助けた後にこれだけの笑顔を見れるならそんな事は全く気にならないというものだった。


 「よかったね!これからは自由に生きていいんだよ!」


 姫那も竜人族の涙にもらい泣きをしていて、それがまた竜人族には神々しく映った。


 「はい。全ては姫那様のおかげです。姫那様に出会えて我々は一生分の運を使ったのでしょう。今以上に幸せを感じれる事はもうないと断言できます」

 「それは違うよ!」


 姫那が長老の言葉を否定した。

 それに対して長老も予想外の言葉だったみたいで、少しびっくりした表情をしていた。


 「今、この瞬間が始まりなんだよ!これからが竜人族のみんなの第二の人生が始まるんだよ!だから今が一番幸せなんかじゃないよ!これから今よりもっと幸せを感じる事が絶対にいっぱいあるよ!」


 これからもっと幸せな事がいっぱいある。

 そんな事は考えていなかった。というより、考えるにはまだ早かった。

 今解放されたばかりで誰も先の事なんて考えもしていなかった。

 それを一番考えていてくれいたのは竜人族じゃなく、異世界から来た人間だったのだ。


 「姫那様、、そうですね。今の我々には想像もできませんが、姫那様がそう言うのであればきっとそうなのでしょう」

 「絶対そうだよ!間違いない!」


 いつも通りの姫那の根拠のない自信だったが、何故かそれが伝染するのだ。


 「姫那、そろそろ行こうか」


 喜びを分かち合いたい気持ちはまだあるが、まだ一つ目の集落を助けただけだ。

 ここから更に十九の集落と中央広場の全員を解放しないといけないのだ。


 「そうだね!寂しいけど、次の集落の人達も早く助けてあげないとだしね!」

 「もう行かれてしまうのですか?おもてなしも何もできていないですが、、」

 「そんなの大丈夫だよ!ほんとに私達がしたくてしてるだけだから!」

 「いいえ!それでは竜人族の名折れ!盛大におもてなしをしなければ!」


 族長がすごい勢いで姫那に迫ってくる。

 竜人族は受けた恩は何が何でも返さないと一族の恥となってしまうのだ。

 ましてや何人も救ってもらって、それに何もお返ししないというのはありえない話であった。


 「じゃあさ!こうしようよ!全部終わったらみんなで中央広場でお祝いしようよ!絶対みんなでお祝いした方が楽しいし!」

 「それ、すごくいい!大宴会だね!」


 姫那の提案に対して、ルーナはノリノリで答えた。


 「かしこまりました。ですが、どうやって全員が助かった事を知ればいいでしょうか?」

 「確かに、、どうしよう?」


 姫那が助けを求めるようにエルサリオンを見た。


 「全てが終わったら俺が飛んで回って招待をかけるとしよう」

 「あ!じゃあ私もやるよ!私も飛べるし、エリーよりも元気だしね!」

 「ほんとに?ありがとう!」

 「ルーナ、エリー、ありがとう。招待に来てくれるのを楽しみに待っているよ」


 成り行きで竜人族と大宴会の約束をした。


 「また中央都市で会おうね!」

 「はい。姫那様とそのお付きの皆様にお会いできるのを楽しみにしています」

 「お付きってなんだよ」


 竜人族には姫那以外はその他に見えていたみたいだった。


 「はは。気を悪くしないでくれ。変な意味で言ったんじゃない。夏生にもエリーにもルーナにも葵にも本当に感謝しているよ」


 夏生は片手を上げて返事をした。

 そして、姫那達は竜人族の集落を後にした。


 「竜人族のみんな、いい人だったね!」

 「うん!みんなお姉ちゃんにぞっこんだったよね!」

 「もはやぞっこんというよりは姫那さんの事を神様のように思ってたみたいですね!」

 「それくらいの事をしたんだよ。百年も奴隷として悪魔に使われていたからな」

 「あれだけ喜んでくれたらまたもっとやる気が出てくるな〜!頑張ろうね!」


 姫那がこれまで以上に強い意志で海底都市を救いたいと思っていた。


 「そうだな。早く全部終わらよう」


 そして、全員が姫那に引き上げられるようにやる気が湧いてきた。


 「それはそうと、次はどこの集落ですか?」

 「次はここから一番近いところだと、、一つ目の人間の集落だな」


 二十の集落の内、いくつかは被っている場所もあって、特に人間の集落は一番多く五つほどあった。


 「他の種族だったらいいとかじゃないが、やっぱり自分が人間だからか、人間が一番奴隷として扱われているという事が許せないな」

 「そうですね、、僕も今同じ事を思っていました。こんな奴隷なんて化石のような古びた制度、早く無くしましょう!」

 「あぁ、そうだな」


 邪魔をする悪魔はいない。

 その為、奴隷解放はスムーズに進んでいた。

 そしてついに二十箇所目の集落まで来た。


 「やっと最後の場所まで来たね!」

 「最後といってもまだ中央広場が残っているがな」


 姫那達は最終目的地が中央広場だったから、それに近付くように集落を回っていた。

 今来た集落は中央広場に一番近いところで、中央広場の建物も見える場所だった。


 「最後は人間の集落か、、早く解放してやろう」

 「うん!」


 ここにくるまで全ての集落で同じように最初は警戒され、攻撃を仕掛けてくる種族もいた。

 だがそれも仕方がない事。

 奴隷にされて心の扉が固く閉ざされているのだから。

 最後の集落でも同じような事が起きると思っていたのだが、、

奴隷解放を順調に進める姫那一行。

最後の集落で待ち受けていた事とは?

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