EpiSodE061:奴隷解放への道のり
やるしかない。
海底都市の実情を知った時からもう心は決まっていた。
どれだけ体を酷使しようとも、みんなを助けると。
「姫那、お前の覚悟はわかった。じゃあまずはロノウェに聞かないといけない事があるな」
「何を聞くの?私が全部解除たらいいんじゃないの?」
「全部解除するにしてもどこに行ったらいいかわからないだろ。俺達が通ってきたところ以外にも集落はあるだろうしな。その場所を聞き出した方が圧倒的に効率良く回れるだろ?」
「なるほど!確かにそうだね!夏生あったま良いー!」
こういう事に関しては、姫那は全く頭が回らないのでいつも夏生とエルサリオン時々葵という感じでフォローをしていた。
やはりこのチームは誰が欠けても成り立たないチームなのだ。
「場所を言われても覚えきれないから、何かに書かせよう」
「私、探してくるね!」
ルーナはそう言うと街の方に飛んでいった。
「ルーナ!一人で大丈夫?」
「大丈夫だよ!お姉ちゃんありがと!」
姫那と少し会話をして再度飛んでいき、悪魔の家に入っていった。
「一人で悪魔の家に入って大丈夫かな、、」
姫那がすごく心配そうにしているのを見て、葵も大丈夫だと言う。
「今は悪魔は全員、中央広場に出払っているから大丈夫ですよ!それにルーナさんも少しでも何か役に立ちたいと思ったんでしょうね、、」
「そんな事考えなくてもいつも助けてもらってるのに!」
姫那と葵が少し会話をしている間にすぐにルーナは戻ってきた。
「ペンみたいなやつと、紙があったよ!」
「よし、ありがとう。これにここの全体図と集落の位置を書かせよう。姫那、お願いできるか?」
「うん!任せて!」
姫那はロノウェに紙に海底都市の全体図と集落の場所を書くように伝えた。
「こんなにあるのか、、」
書き終わった海底都市の全体図を見た一同は驚いた。
種族毎に分かれた集落が二十はあったのだ。
「俺達がここに来るまでに見たのは二つだった。その十倍か、、」
想像以上の数だった。
こんなにも奴隷として囚われていると考えるとそれだけで怒りが込み上がってくる。
「お前達はこの捕らえている者をどうしようと思っていたんだ?」
夏生がロノウェに問う。
「別にどうする事もない。私達悪魔に尽くして一生奴隷として扱い、人生を終える。それがここで生きている悪魔以外の種族の運命なんだよ」
奴隷である事を当たり前かのように話すロノウェに怒りが抑えられなり、夏生がロノウェを殴ろうとしたら、、
バシッ
先に姫那がロノウェにビンタをした。
「お姉ちゃん、、」
「あなた達悪魔はなんでみんなそうなの?なんで一緒に仲良く生きようって選択肢を選べないの?」
姫那が目に涙を浮かべながらロノウェに叫ぶ。
「仲良く生きる?なんで悪魔が下等種族のお前達と仲良く生きないといけないんだ?意味のわからない事を言うな」
ロノウェは本当にこいつは何を言っているんだ?といった顔で姫那に言い返す。
悪魔は思想の根幹に悪魔至上主義が植え付けられている。だから姫那が言っている事を全く理解できないのだ。
「あなた達は、、」
「姫那、こいつらに何を言っても無駄だ。共存ができるならこんな事にはなってねぇよ。やるかやられるか、それしか選択肢はない」
夏生の言葉に姫那は悔しそうに歯を食いしばった。
「でも何故ブレスレットをしてるからと言ってみんな悪魔の言う事を聞いていたのでしょうか?それこそ、悪魔よりも強い人が一人や二人いてもおかしくないのに、、」
葵が言ってる事は尤もだった。
「あのブレスレットが能力を封じるだけの物と思われていたのなら心外だな。あれを無理矢理外そうとすると爆発する仕組みになっているんだよ。だから一度あれをはめられた奴は死ぬか一生奴隷かどちらか選ぶしかない」
「何処まで卑劣なんだよお前は」
「これがこの街の普通なんだよ。別にお前達にわかってもらおうとも思わない」
「そうかよ。じゃあ俺達がそのねじ曲がった普通とやらを正してやるよ。お前はもう死んどけ」
夏生がロノウェの首に剣を振り下ろす。
そしてあっさりと賢明の悪魔ロノウェは灰になって消えていった。
「これで4階層攻略は完了したはずだ。後は奴隷の解放だな。本当にやるのか?姫那」
「やるよ!これだけは絶対にやる!このまま先に進むなんて私にはできない!」
「わかった。じゃあ俺達も付き合うよ。みんなもそれでいいか?」
全員が承諾した。
こうなった時の姫那の頑固さはみんな知っていて、絶対意見を変えないのは目に見えてわかっていたからだ。
それと、助けたいという気持ちはみんな一緒だったのだ。
「よし、じゃあこの図で見ると、この南の門から一番近いのは竜人族の竜人の集落だな。早速行こうか」
「うん!」
姫那達は南の門を出て竜人族の集落があるところを目指した。
そして5分もしない内にそこに着いた。
「お前達はなんだ?」
そこにいたのはワニを二足歩行にさせたような、いかにも竜人族っぽい人が立っていた。
「あなたは竜人族の人ですよね?私達、あなた達を助けに来ました!」
「助けに来た?そんな事あり得ないだろう。ここは悪魔によって支配されているのにそれに逆らったらどうなるか知っているだろう?すぐに消される事になる」
「その悪魔なら今さっき倒してきたよ。後はお前らがつけているブレスレットを解除して奴隷を解放していくだけだ」
夏生の言葉に竜人族は耳を疑った。
ただの人間が悪魔を倒せるとは到底思えなかった。
何故なら自分たちより弱い人間が悪魔に勝てるはずがないと思っていたからだ。
「なんのハッタリだ?ハッタリも行きすぎるとそうじゃなくなるぞ。俺達を怒らせたいのか?」
「本当だ。あの壁の中にいる悪魔どもの中核を全て葬った」
竜人族は夏生の言っている事が信じられず、ずっと夏生達を牽制している。
そんな竜人族を見て少し呆れた声で解決策の提案をした。
「はぁ。わかった。じゃあ、実際にそれを解除するから誰か一人出てくれ」
竜人族はザワザワしだし、そして一人の男が前に出てきた。
「俺がいこう」
「ドルーグ!待て!いくらお前でも危険だ!」
「長老、大丈夫だ。いざとなったらこいつらを八つ裂きにする」
竜人族の中でも一番体が大きく、見るからに一番強そうな竜人が出てきた。
「俺らもえらい言われようだな。姫那、解除してやってくれ」
「わかったー!」
姫那がドルーグに近づく。
「うわー!すごいおっきいね!」
姫那の二倍くらいはありそうな巨躯だ。
「いいから早くやってみろ。できなかったらお前を食ってやる」
「食べても美味しくないよ〜!」
ドルーグの脅しの言葉を聞いてないくらいに適当に返しながらブレスレットに触れる。
パキッ
ヒビが入り、そしてブレスレットは砕けた。
それを見た竜人族全員が目を見開いた。
「ほ、本当に、、」
「だから言ったでしょ?助けに来たって!」
姫那はドルーグに満面の笑みで伝える。
それを見たドルーグは姫那が現世に舞い降りた女神に見えた。
「ありがとうございます。この御恩は生涯永劫忘れません」
竜人族最強の戦士、ドルーグが片膝をつき、姫那に頭を下げている姿を見て竜人族がどよめく。
「頭なんて下げないで!私達はみんなを解放する!そのために来たんだから!」
「これで助けに来たという事を信じてもらえたか?」
竜人族は顔を見合わせる。
「信じよう。奴隷の証を解除してもらって疑う事なんてしない」
「わかってもらえてよかった」
なんとか竜人族に理解してもらえた。
だが、奴隷解放はまだ始まったばかりであった。
姫那が戦士ドルーグのブレスレットを外した。
このまま竜人族を救う事ができるのか?




