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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE060:最大で最後の仕事

 「お前がこっちの考えてる通りに動いてくれてよかったよ。賢明の悪魔ロノウェ」

 「考えてる通りだと?そんな事あり得るわけが、、」

 「今のこの結果を見ても違うと言えるかよ?」

 「くっ!」


 ロノウェは姫那達を甘く見ていたわけではない。

 その証拠に待ち伏せを計算しているだろうと予想したり、先に配下の悪魔を出させたりとちゃんと警戒はしていたし、油断もしていなかった。


 「あなたは頭が回りすぎたんです!だからこそ考えが単純になって、僕達もあなたの考えを読む事ができたんです!」

 「私が単純だと?下等な人間風情が私を侮辱するつもりか!」

 「侮辱も何もこの現状を見ればお前もわかるだろ?今までバカにして下に見ていた人間がお前を欺いたんだよ」


 夏生がそれを伝えるとロノウェは何も言い返せなかった。

 そして落ち着いた表情で話し始めた。


 「そうか。わかった。じゃあお前達は何が欲しい?金か?女か?私ならこの街にある物も人も全てお前達に渡す事ができる」

 「何を言っているんだお前は?」

 「女なら特に上玉を用意しよう。ここに来るまでに見ただろう?種族毎に分けられた集落を。あれは元々悪魔の為にした事だが、お前らにも選ぶ権利を与えよう。どの種族が好きなんだ?」


 集落が何故種族毎に分かれているか今やっとわかった。

 悪魔の好みの為にわかりやすく種族で分けていたという事だった。


 「だからお前は何を言ってるんだ?俺達がそんな事求めてると思っているのか?」

 「金も女もいらない。じゃあお前達は何が欲しいんだ?」

 「お前が奴隷として使っているみんなの解放だよ。俺達がお前に求めるのはそれだけだ」

 「それは叶えられないお願いだな。俺の面子に関わる」

 「この状況で自分の面子を守る事を考えるのか。今のお前はそんな事考えてる場合じゃないんじゃないか?」


 夏生がロノウェの喉元に刃を突き付ける。


 「俺はそんな脅しには乗らない。何故ならお前は俺を殺さないからだ。俺から奴隷解放について聞けてないからな。もちろん、俺はそれについて絶対話さない。殺せるものなら殺してみろ」


 夏生はロノウェを冷めた目で見ていて、刃をスッとひいた。


 「はは。あくまでも主導権は俺にある。俺の言う事を聞かないと何も教えない!」


 ロノウェが勝ち誇ったような顔で夏生に言い放つが、夏生は全く動じていなかった。

 その理由は、、


 「お前は一つ大きな間違いをしている。俺は別にお前を脅したりしない。する必要がないんだよ」

 「それで俺が吐くとでも思ってるのか?やはり人間はバカだな」

 「お前は何もわかっていない。いや、わかっていないじゃないな。忘れているの方が正しいか。それがお前が負ける理由だ」

 「忘れている?負ける?意味のわからない事を、、」


『奴隷解放の仕方を教えなさい!』


 それは誰も逆らえない、誰も抗えない。ある意味悪魔の声であった。


 「お前は姫那の存在を忘れていた。姫那は動きを止めるだけじゃないんだよ。聞きたい事を強制的に言わせれる。それが姫那のギフトの真骨頂だ」


 そしてロノウェは目も虚になり、姫那の問いかけに即答した。


 「ない」


 全員がその言葉に耳を疑った。


 ない?

 ないとはどういう事か?

 まさかロノウェは姫那の洗脳に抗えているのか?そんな事あり得るのか?


 「姫那、もう一度同じ事を聞いてくれ!」


 エルサリオンが同じ質問をするように姫那に言う。


 「わかった!」


 姫那がもう一度同じ事を聞くが、やはり答えも一緒だった。


 「これは本当に『ない』が答えなんじゃないですか?」

 「、、そのようだな」

 「解放する方法がない?そんな無責任な事あるか?」

 「元から解放するつもりなんてなかったからその方法も用意する必要がなかったんだろう」

 「、、私しかいないね」

 「お姉ちゃん、、大丈夫?どれだけの人が奴隷としてブレスレットをはめられてるかわからないじゃん!」

 「ルーナの言う通りだ。お前は一人に対してどれだけの人数がいると思っているんだ?」


 ルーナと夏生はその方法は物理的に難しいと判断するが、、


 「でも私がやるしかないじゃん!ブレスレットはめさせた張本人が外し方はないって言ってるんだよ?だったら手段は選んでらんないよ!」


 姫那は本気で自分一人で海底都市全員の解放をやるつもりだった。

 そして姫那のその言葉に誰も何も返せなかった。

 何故なら姫那の言うように、それ以外に解放する方法がなかったからだ。


 「姫那、最後にもう一度だけロノウェに本当に解除の仕方はないのか聞いてくれないか?」

 「うん、、」


『本当にブレスレットを解除する方法はないの?』


 「ない。むしろ解除できないように作っているから、解除するにはその方法を一から考えないと無理だ。ただ、何故か二つだけブレスレットが解除されたと報せがあった。それについてはどう解除したのか全くわからない。今のところそれが唯一の方法だろう」


 二つ解除されたブレスレット。

 それは間違いなくルーナと夏生のブレスレットを姫那が外したものだと誰もが確信した。

 それと同時にやはり悪魔側では解除する方法はなく、姫那のギフトで解除する他ないとわかった。


 「やっぱり私がやるしかないね!大丈夫だよ!私が全部のブレスレットを外してみんなを解放するからさ!」

 「姫那、お前、、」

 「ほんとに大丈夫だって!私に任せてよ!」


 今まで姫那が任せてと言った時は本当に任せて問題ないと思った。

 だが、今回は違っていた。

 どれだけ笑顔でいても無理をしているのがわかるし、絶対に体力が持たないのも明らかだった。

 でも姫那に頼る以外にどうする事もできなかった。


 「ごめん、姫那」


 夏生が自分の無力さに嫌気が差す。


 「なんで謝るの!仕方ないよ!これは私にしかできない事だし!いつも私にできない事をみんなが補ってくれてるんだし、こういう時は助け合いだよ!」


 姫那の言葉は励ましとか皮肉などは全くなく、本当にそう思ってるからこそ出た言葉だった。

 その言葉に全員が胸のすく思いになった。


 「ありがとう。そう言ってくれると俺らも少し気が楽になったよ」


 エルサリオンが感謝を伝える。


 「ど、どうしたのよいきなり!なんか恥ずかしいじゃん!」


 不意の感謝の言葉に照れる姫那。


 「いつも重要な役目を担ってくれて感謝してるんだ。俺もみんなもな」


 間違いなくこれまでの戦いで姫那が一番負担が大きいのは明白だった。

 それでもいつも進んで負担が大きい方を選んでくれる。

 それが知ってか知らずかわからないが、結果として姫那がいるからここまでこれてる事に変わりはなかった。


 「私もみんなに感謝しっぱなしだよ!じゃあ、最後の大仕事、早くみんなで終わらせちゃお!」


 これで4階層攻略は確実になった。

 後はブレスレットを解除し、奴隷解放をするだけだ。

 4階層での最大で最後の仕事に取り掛かるのであった。

悪魔は解除する手段を用意していなかった。

そして姫那は最後の大仕事を請け負ったのだった。

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