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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE059:裏の裏

 姫那達はロノウェの再捜索の為、ロノウェが消えた辺りに行こうとしていた。

 その時、肝心のロノウェはというと。


 「あの女のギフト、本当にやばいな。あいつに見つけられたら一瞬で終わってしまう。流石にどれだけ頭が切れようとその頭が使えなかったら全く意味がないからな」


 ロノウェはまだ姫那達が見える場所にいた。

 賢明の悪魔ロノウェの強さは自分の強みと弱みを知っているという事だ。

 戦闘は得意ではないが、頭脳には絶対的自信があった。

 現にエルサリオンと夏生の作戦を読み切り、それを失敗に終わらせた。

 結局夏生達は強行策に出るしかなかった。

 そして今もまたロノウェの策に姫那達は嵌ろうとしていた。


 「やはりあいつらはその程度か。結局のところ強さよりも頭なんだよ。頭が良ければ全てを欺ける。その差でお前達はまた俺を捕らえる事ができない」


 実はロノウェは違う門に向かってはいなかった。

 別の門に行くフリをしてずっと瓦礫に隠れて姫那達が自分を探しに行くのを待っていたのだ。

 姫那達の裏をかいた策略だった。

 そして、姫那達が見えなくなってから少ししてロノウェは動き出した。


 「奴らはもういなくなったが、念には念を入れて君が先に出ていってくれないか?」


 ロノウェは先に配下の悪魔を出させて本当に立ち去ったかどうか確認しようとした。


 「わかりました」


 先程夏生の斬撃を防ぐために側近の悪魔が犠牲になった為、今ロノウェの側近の悪魔は後二人となっていた。

 その側近の一人がロノウェの指示で先に出た。


 「何も起きませんね。出てきても大丈夫そうです」

 「本当か?周りにはいないか?」

 「はい。誰もいません」

 「そうか、わかった」


 ロノウェは入念に姫那達がいないか確認して、それでもまだ警戒心を解いていなかった。

 ただ、先に行かせた配下の悪魔が洗脳にかけられてないのであれば、ここにはもういないという事に賭けてみる価値はあった。

 何故ならこの街を出るには必ず門を通らないといけなくて、その門の前は周りに遮るものがない開けた場所でそこを横切る事は絶対に必要だったからだ。


 「私はこんなところで終わる悪魔じゃない。異世界人とエルフごときに負けるはずがない」


 そう自分に言い聞かせ、ロノウェも先に行かせた悪魔の元に行き、周りから見える場所に姿を現した。

 自分の意識を確認した。


 「ちゃんと保っている、、はは。やはり人間はその程度の知性しか持ち合わせなかった。私の勝ちだ!」


 そしてロノウェは二人の悪魔を連れ、意気揚々と南の門の前の広場に向かう。

 もうこの時にはロノウェの警戒心もほとんどなくなっていた。


 「長かった。本当にここまで長かった。一日が一週間くらいに感じたよ」


 ついにロノウェ一行が南の門の前までたどり着いた。

 この時、門を目の前にしてロノウェは街から出る事しか頭になかった。


思考停止(ブレインバインド)!』


 「なん、、だ、、!」


(くそ!体が動かない!喋れもしない!この力は、、)


 「やっと気を抜きやがったな」


 ロノウェの前に現れたのは、もちろん姫那達だった。


(何故だ!何故こいつらがここにいるんだ!)


 「姫那、こいつが何か喋りたそうにしてる。喋れるようにだけしてやれ」

 「うん!」


 夏生の言葉で姫那は部分的に思考停止を解除した。


 「何故だ!何故お前達がここにいるんだ!私を追って行ったんじゃなかったのか!」

 「そうだろうな。お前にはそう見えただろうな。実際一度はお前を追ったよ」

 「一度はだと?」



 時はロノウェを追う前まで遡る、、



 話がまとまってロノウェを追いかけようとしたその時。


 「あのー、ちょっといいですか?」


 葵が何か考え込んだような顔をしながら引き止める。


 「どうした?何か問題でもあったか?」

 「いや、問題があるとかじゃないんですけど、ロノウェは本当に別の門に行ったのでしょうか?」

 「どういう事だ?」


 エルサリオンは顔だけしか葵の方に向いていなかったが、葵の興味深い発言に体ごと葵の方に向き直り、聞く姿勢をとった。


 「ロノウェは賢明の悪魔。その二つ名の通り、僕達の考えている事も全て読まれていました。だとしたら僕らが追う事も予想していると思うんです。姫那さんならここまで予想したらどうしますか?」

 「私?私なら、、急いで逃げるかな!」


 葵は目が点になっていた。


 「葵、それはお前が悪い」

 「すみません、、じゃあ夏生さんならどうしますか?」

 「そうだな。俺ならその場で敵が去るのを待つな」

 「夏生さんありがとうございます!」


 葵は本当にありがたく思ったのだろう。夏生と握手をしていた。


 「お、おう。最初からこいつに聞くのが間違いだ」


 夏生が姫那を指差しながら言う。


 「え!なんでよ!普通逃げるじゃん!その場にいたら危ないじゃん!」


 姫那の必死の訴えも夏生により遮られた。


 「葵が言いたい事はわかった。確かに頭が回るからこそ裏をかいてこの場に残る可能性が高いな」

 「なんで?」


 姫那がまだわかってなかったので、エルサリオンが説明する。


 「確率の話だ。別の門まで逃げ続けるか、探しに行った後にこの南の門から出るか。どちらの方が街から出れる可能性が高いと思う?」

 「そう聞かれるとここで待つ方が出れそうかな〜」


 エルサリオンの説明でなんとなくだが納得した様子であった。


 「という事で一つ提案なんですが、ロノウェを追うフリをして瓦礫に隠れて待ってみませんか?本当に逃げたのなら元も子もないですが、ロノウェも隠れている可能性が高いと思いますし、、どうでしょうか?」


 夏生とエルサリオンは考え込んでいて、姫那とルーナはポカーンとしている。


 「、、わかった。葵の作戦に賭けよう」

 「そうだな。それと俺からも一つ提案があるんだが、もしロノウェが隠れていて出てきたとしてもすぐには捕らえず、一度泳がそう」

 「泳がすってどういう事?」


 ルーナが質問する。


 「油断させるんだよ。人が一番油断するのは目的の達成を確信した瞬間だ。それは悪魔も一緒だと思うし、今までの行動からみてもロノウェは警戒心が強い。だから南の門の前まで我慢して、一番油断し切ったところで捕らえるんだ。そうする事でロノウェを確実に捕らえたい。また逃げられたらもう今度こそ捕らえれなくなるかもしれないしな」


 夏生が事細かに説明し、エルサリオンもそれに対して頷く。


 「俺が姫那に合図を送るから送ったらすぐにロノウェに洗脳をかけるんだ」

 「わかったけど、合図ってどんな合図?」

 「じゃあ、俺が首を縦に振るからそれを合図にしよう」

 「了解!」


 合図も決まり、行動を開始する。


 「そうと決まったら早速動こう。少しのミスも許されないからみんな気を引き締めていくぞ!」


 ロノウェは裏の裏をかいた葵の作戦に嵌ったのだった。



 そして時は現在に戻る、、

見事賢明の悪魔ロノウェを欺いた。

4階層攻略ももう目前!?

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