EpiSodE055:ロノウェの行方
姫那達が東西南北の4つの塔を制圧したその頃、中央の巨城シャルストラでは。
「ついに南の塔も落ちたか。これで4つの塔全てが人間共に落とされた。まさかあいつ等が人間なんかに負けるとはな。流石の私でも予想外だった」
4つの塔が制圧された事を知り、ロノウェは次の行動に出ようとしていた。
「最悪の事態を考えて用意はしていたが、本当にこの手段を使うしかなくなるとは、、」
ロノウェは最終手段として何を用意しているのか。
それは果たして姫那達の脅威になり得るものなのか。
そして、、
「エリーがこんな状態じゃ動けないし、それに葵ちゃんもまだ回復してないみたいだし、、とりあえず今は休もうよ!」
「でもそんな悠長な事言ってたらそのロノウェって悪魔が逃げちゃうんじゃないですか?」
「そうだ。塔を守るという利害関係だけで成立している奴らならそれこそこの4つの塔が落ちたらもうここにいる意味はなくなるだろ。その証拠に塔が陥落しそうな時でも助けにすら来なかったしな。戦う力がないなら、最初から配下の悪魔が負けたら逃げる事しか考えてなかったんだろう」
一番動けない二人が今一番しないといけない行動を言っているが、それでも立つことすら危うい二人を戦いの場に連れ出すことはできない。
「ダメだ。お前らにこれ以上ダメージを負わせるわけにはいけないしな。だから少し休んでから行こう」
「それで休んでる間に悪魔が逃げたらどうするんだよ!早く追わないと、、」
「今のお前達じゃ足手纏いだって言ってるんだよ!だから今は大人しくしとけ!」
「足手纏いって、エリーに関しては夏にぃがそうしたんじゃんか!」
その足手纏いになる原因を作ったのは夏生だというのにそれを棚に上げて足手纏い扱いをする夏生に対してルーナが怒った。
「それはわかっている。だから今は休んどけって言ってるんだ。これからの為に」
「これからの為?」
夏生が何か考えがありそうな発言をしたので、姫那がどういう事なのか聞く。
「今から中央の巨城シャルストラに行くのは俺と姫那とルーナだけにする」
「どういう事ですか?それなら僕達は何を、、」
「さっきエリーが言ってたように、悪魔の親玉のロノウェは逃げ出す可能性が高い。エリーと葵はロノウェが逃げ出した時の為に備えていて欲しい」
フルフルから聞いたロノウェは、もう逃げている可能性すらある。
だからこそ二重に構える必要があると夏生は考えたのだ。
「なるほど。そういう事ならその任を俺と葵で請け負おう」
エルサリオンは夏生の配慮に気付いていた。
もちろん、重要な役目なのはわかっていたが、夏生達に比べれば圧倒的に移動距離は少ない。
ただ一つ問題があった。
「僕達の役割はわかりましたけど、何処を堅めてたらいいんでしょうか?ロノウェが何処から逃げるかなんてわからないですし、、」
「それなら大丈夫だ。逃げる場所ならある程度わかっている」
夏生から思わぬ言葉が飛び出し、葵が目を見開く。
「逃げる場所がわかっているんですか?」
「おそらく、だがな」
「南側の門か」
エルサリオンも予想していた。
「そうだ」
「エリーさんもわかっていたんですか?もしかしてわかってないのは僕だけ、、姫那さんは知ってました?」
「ぜーんぜん知らない!」
笑顔で知らない事全く否定せず、むしろ何それ食べれるの的な反応をしていた。
その反応を見て葵はホッとしたみたいだった。
「僕だけじゃなくてよかった、、それでなんでその南の門なんですか?」
何故ロノウェが南の門から逃げるのかを夏生が説明した。
「まずは傀儡の悪魔が言っていたこの街の出入り口だ。あいつが言っていた出入り口は全部で4つ。この塔と同じで東西南北にあると言っていた。それに加え、この街に入る前に上から見た時のこの街の地形なんだが、他の三方向に比べて南側が不自然に入り組んだ地形だった。その入り組んだ道に脱出の経路があると俺は思った」
夏生はここに入ってから今までの自分で見て感じた状況から鑑みて、逃げるならそこが一番可能性が高いと判断したのだ。
「正直それが確実とは言えない。ただ、今するべき事としては可能性が一番高いところを潰す事。それが最善策だ」
夏生の言う通り、確実な捕獲方法がない以上、可能性に頼るしかなかった。
「そうと決まったら早速行動しよう。早くしないと本当に逃げられるかもしれない」
「、、そうだな。他のみんなももう説明は大丈夫だな?」
全員が頷き、最終決戦に挑む決意を確認した。
「ロノウェはこの4階層の悪魔の実質的なボスだ。こいつを討伐すれば長かった4階層攻略も目前だ。早く終わらせてゆっくりしようぜ」
「そうだね!奴隷にされてるみんなも救ってクルアラントを解放しなきゃだしね!」
「私いい事考えた!」
「ルーナ、いきなりどうしたの?」
「みんなを助けたらここの人達もみんな一緒にパーティーでもしようよ!」
「絶対やろう!よーし、そうと決まったら早くロノウェを捕まえよう!」
「そうですね!僕も終わった後が楽しみになってきました!」
夏生の言葉に姫那とルーナと葵は勝手にパーティーする流れになったが、奴隷という立場から解放されてすぐにそんな気分になれるだろうかと疑問に思う夏生とエルサリオンであった。
そして、葵とエルサリオンは南の門、姫那と夏生とルーナは中央の巨城シャルストラに向かった。
「まだいるかな?ロノウェ」
「どうだろうな。そこに関しては本当にわからない。いれば見つけ次第討伐、いなければ俺らも南の門に走るって感じだな。どちらにしても、この街で絶対に捕らえて潰す」
そしてエルサリオンと葵も南の門に向かっている途中での会話は同じような会話だった。
「ロノウェが南の門に来たら絶対に僕達で仕留めましょうね!」
「当たり前だ。夏生の配慮で俺達は負担が少ないところに向かっている。そしてその原因を作ったのは無様にも操られた俺のせいだ。こっちに来たのなら絶対に俺が片をつける」
「エリーさん、俺がじゃなくて俺達がですよ!それに操られたのだって僕を守ろうとしてだったじゃないですか!」
実はエルサリオンが傀儡の悪魔のガープに操られてしまったのは葵がガープの罠に引っ掛かりそうになったのをエルサリオンが助けた事によって犠牲になったのだ。
「そんな事は関係ない。結果的に足を引っ張ったのは俺だ」
「関係なくなんてないですよ!僕のせいで、、」
「、、まぁ今はそんな事いいじゃないか。とりあえず俺達が出来る事をしよう」
「はい、、」
葵は何か言いたそうだったが、それよりも今はロノウェの事だと葵も理解した。
そしてその肝心のロノウェは今何処にいるのだろうか。
それはまだ誰にもわからないままであった。
再び別行動で最後の悪魔、ロノウェを捜索する事に。




