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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE054:夏生の機転

 姫那ははしごから降り、ルーナは塔の外からガープを連れてエルサリオン達がいるところに降りた。

 そしてずっと均衡していた夏生とエルサリオンの戦いにもついに決着が着こうとしていた。


 「終わりだ。じゃあな、エリー」

 「夏生さん!」


 夏生がエルサリオンを追い込み、剣を振おうとしていた。

 葵はまだ夏生を止めようとしていたが、夏生は止まらなかった。


 「夏生!待って!傀儡の悪魔を捕まえたよ!」


 その瞬間、姫那が到着して夏生を制止したが、それも間に合わなかった。


 ズバンッ


 そして夏生の刃はエルサリオンに届いてしまった。


 「エリー、、!夏生!待ってって言ったじゃん!傀儡の悪魔を捕まえたって!」

 「おせぇよ。あんなタイミングで待てと言われてももう止まらねぇよ」


 ルーナとガープも到着し、エルサリオンが倒れてる姿を目の当たりにする。


 「エリー!夏にぃ、エリーを斬ったの?」

 「あぁ、そうだよ。こいつが間抜けにも操られていたからな」

 「なんで斬ったの!仲間じゃんか!家族じゃんか!なんで、、」


 ルーナは号泣しながら夏生を叩いていたが、夏生は全く動じていなかった。


 「そいつが傀儡の悪魔か?」

 「そうだよ!ちゃんと連れてきたのに、、なんでエリーを、、」

 「ルーナ、ちょっとどいてろ」


 夏生はルーナを持ち上げ、優しく横に置いた。


 「姫那、こいつにエリーの傀儡を解くように命令してくれ」

 「え?なんで?だってもうエリーは、、」

 「いいから、早くやってくれ」


 姫那も号泣し、訳もわからず夏生の言う通りにした。


『エリーの傀儡を解いて』


 姫那はエルサリオンの傀儡を解くようにガープに洗脳をかけた。


 パリン


 するとエルサリオンの左腕から悪魔の文字のような物が浮かび上がり、音を立てて消えた。


 「おい、エリー。いつまで寝てるんだ。早く起きろ」


 夏生の言葉に全員耳を疑った。

 そして更に驚愕すべき事が起きる。


 「ぐっ、ぐは!」


 エルサリオンは血を吐きながら起きた。


 「「エリー!」」


 エルサリオンが起きた事に全員が驚き、そして歓喜した。


 「やっと起きたか。大丈夫かよ?」

 「あぁ、大丈夫だ。悪かった、夏生。そしてありがとう」


 エルサリオンも夏生が何をしたのかわかっているみたいだ。


 「何?どういう事?エリーは夏生に斬られて死んだんじゃ、、」

 「夏生は俺を斬っていない。どちらかというと俺を殴ったに近いな」


 エルサリオンの説明で更に意味がわからなくなる姫那とルーナと葵。


 「ほら、この剣の刃を触ってみろ」


 夏生が姫那に刃先を向けて剣を投げ渡す。


 「危なっ!何すんの夏生!私が死んだらどうするの、、よ、、あれ?」


 姫那が剣の刃を触るが、全くと言っていいほど斬れない。


 「これ、刃が無い?」


 そう。夏生が創造した剣は刃が全くない剣だったのだ。

 夏生は最初からエルサリオンを殺すつもりなんてなく、刃が無い剣で気絶させるのが目的だったのだ。


 「刃が無い?じゃあ、夏にぃ刃が無い剣で戦ってたの?」

 「そうだ。俺も仲間を殺すなんて事、自分が死んでも絶対しねぇよ」

 「あんな激闘を刃が無い剣で戦っていたんですか?夏生さん、それ本当に自殺行為ですよ、、」

 「うるせぇ。俺はそんなヤワじゃねぇよ」


 姫那が思考停止(ブレインバインド)を解いた事によってガープは喋れるようになっていたが、能力は使えないように思考誘導ブレインドミネーションをかけていた。


 「はは。まさかこの傀儡の悪魔が操られるとはね。君の能力はサイコキネシスじゃなく、洗脳だったってわけか」


 姫那は何も言わず、ガープの方すら向いてなかった。


 「お姉ちゃん?」

 「私、怒ってるの。私の家族の心を傷つけた。そんな悪魔と話をする事なんてない」


 姫那も出来ればそれもなくしたいが、悪魔と人間が戦うのは今は仕方がない事だとは思っている。

 ただ、操って仲間同士を戦わせた事が姫那は許せなかったのだ。


 「よし、じゃあこいつを消す前に最後に聞く事がある。姫那、この街の出入り口は何処にあるか全部聞いてくれ」

 「え?そんな事聞いてどうするの?」

 「それがここを攻略する鍵になるからだ」

 「わかった!」


 そして姫那がガープに出入り口を喋らせた。


 「そうか。この街はそんな構造なのか。よくわかったよ。これだけ聞けたらもうお前に用はない」


 そう言うと、夏生は刃の無い剣を消滅させいつもの切れ味抜群の剣を創造した。

 そして夏生の刃が振り下ろされる。

 先程エルサリオンを斬った時とは全然違う音で、もはや包丁でケーキを切るような、ほとんど音もならないくらいに綺麗に斬れたのだった。


 「俺がこんなやつらに負けるとはね。全くもって想定外だったよ、、」


 灰になって消えていくガープの姿をしっかり見届けた。唯一人を除いて。


 「お姉ちゃん、大丈夫?」

 「大丈夫だよ!ただ、やっぱりどんな相手でも消えていく瞬間は見たくないなって、、」


 姫那は自分が嫌いな悪魔であっても死ぬところを見るのは辛いと思って、目を逸らしていたのだった。


 「お前はそのままでいいよ。悪魔を消すのは俺やエリーがやる。だからお前は変わらないままのお前でいてくれ」


 みんなの目が点になった。


 「夏にぃすごくいい事言ってるけど、、なんかねぇ、、」

 「そうですね、、なんか、、」


 みんな笑いを堪えるので必死だった。


 「ごめん、私もう無理だ!」


 そして堰を切ったかのように姫那が笑い出し、それにつられて他のみんなも笑っていた。


 「お前ら、、完全にバカにしてるよな」

 「バカになんかしてないよ!してないんだけど、、」


 笑いが止まらない姫那。


 「夏生らしくなさすぎて!でも、、ありがとね!そう言ってくれると少し心も軽くなるよ!」

 「俺も柄にもないような事言って笑いを取れてよかったよ!」


 夏生が嫌味ったらしく姫那達全員に言う。


 「まぁでも何はともあれこれで4つの塔の制圧はできたね!後はあの中央の巨城だけだ!」

 「あそこの情報も掴んでいるのか?」


 姫那の自信満々な物言いがエルサリオンにはもう既に中央の巨城について何か知っているのではと思わせた。


 「うん!私達がいた塔の悪魔に聞いたんだけど、あの中央の巨城はシャルストラ城って言って、この街のボスのロノウェっていう悪魔がいるんだって!」

 「そのロノウェって悪魔は力はないが、知力はあるみたいで、この4つの塔のリーダーはロノウェから各塔を守る事だけ指示を受け、他は何をしてもいいと言われていたらしい」


 姫那の説明に加え、夏生が詳しく内容を伝える。


 「そうか。だったら早くそのロノウェって悪魔を捕まえに行かないとな。っ!」


 エルサリオンが立とうとしたらダメージが癒えておらず、倒れそうになったところを夏生が支えた。


 「おっと。刃が無かったとはいえ、本気で殴ったんだ。まだ動かない方がいいぞ」

 「夏にぃなんで本気で叩いてんのよ!ちょっとくらい手加減しなさいよ!」

 「いや、だってエリーの事だから本気で殴らないと気絶してくれなさそうだったし、、」

 「だってじゃなーい!」


 何故かルーナに押され気味な夏生だったが、姫那の言う通り後は中央の巨城シャルストラ城に居座るロノウェだけだ。

 しかしそのロノウェ本人は何かを企んでいたが、その企みとは一体?

エルサリオンはギリギリのところで助かった。

4階層攻略ももう目前か。

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