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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
52/106

EpiSodE052:傀儡の悪魔

 夏生は一人南の塔を階段で登っていた。


 「やっぱりここもやたらと悪魔がいるな。この壁で囲われた悪魔の街の悪魔が集結してるんじゃねぇか」


 夏生の言う通り、この街の悪魔は4つの派閥で構成されていて、姫那達の事を聞いて各派閥の塔に集まっていた。

 その街中の悪魔の内、2つの派閥の悪魔を殲滅し、もうすぐ3つ目の派閥の悪魔も殲滅されるだろう。

 夏生が一人で屠った悪魔の数は実に272体。これは常人じゃあり得ない数字だった。

 悪魔の中には奴隷のブレスレットをはめようとしてくる悪魔もいたが、夏生は同じ過ちは犯さない。

 それが夏生の強さでもあった。


 「もう姫那達は最上階に着いてるだろうな。だったらもう終わってそうだな」


 夏生が孤軍奮闘していたその頃、夏生の予想通り姫那達は最上階に着いた。

 そしてそこで見た光景は信じられないものだった。


 「どういう、、事?なんでエリーが、、」

 「エリー!どうして?どうしてエリーが葵ちゃんを?」


 そこにはエルサリオンと葵が向き合っていて、エルサリオンは弓を構え、傷付いて膝をついている葵がいた。


 「すまない。俺じゃ、ないんだ。悪魔、が」

 「姫那さん、ルーナさん!違うんです!エリーさんじゃないんです!エリーさんは悪魔に操られているんです!」

 「操られてる?どういう事?」

 「この南の塔の悪魔は傀儡の悪魔なんです!傀儡の悪魔のガープ!」


傀儡の悪魔。傀儡は本来人形などを操る技術だが、ここの悪魔は人を操れるほどの傀儡師だった。


 「エリーが操られるほどの傀儡なんて、、その悪魔は何処にいるの?」

 「わからないんです!僕達も探してるんですけど、まだ一度も姿を見てないんです!」


 エルサリオンは操られ、その操っている悪魔も何処にいるのかわからない。

 姿が見えなければ姫那の洗脳もかけられない。

 今姫那達はかなり部が悪い状況に陥っていた。

 そして、姿を見せず仲間同士を戦わせる。これが傀儡の悪魔ガープの戦い方だった。


 「操られているんだったら私の洗脳で解けるんじゃない?」

 「そうか!お姉ちゃんやってみよ!」


『エリー!武器を下ろして!』


 姫那がエルサリオンに武器を下ろすよう洗脳をかけたが、エルサリオンは下ろそうとしない。


 「なんで?私の洗脳が効かないの?」


 何故姫那の洗脳が効果がなかったかというと、操り方が姫那の洗脳とは違い、ガープは傀儡。精神を操っているのではなく、物理的に体を操っている。

 洗脳の類なら能力の強い方が主導権を握るから姫那にもエルサリオンを解く術があったが、そもそもの操る方法が違う場合、姫那が洗脳をかけてもガープの傀儡が解ける事はないのだ。


 「エリーさんの傀儡を解くには操っている悪魔のガープを見つけ出さないと止められません!僕がエリーさんを抑えておくのでルーナさんと姫那さんで傀儡の悪魔を探して下さい!」


 葵はまだ完全に回復していない。

 それでも葵はエルサリオンを自分一人で抑えると言っている。

 一秒でも早く傀儡の悪魔を見つけ出さなければ葵も危なかった。


 「ルーナ!とりあえず飛んで探そう!」

 「うん!」


 塔の最上階は2階構造になっていて、端にはしごがあり、そこから上に上がれるようになっていた。

 そして操られているエルサリオンはそのはしごを守るような形で立っていた。


 「ルーナ!はしごのところから上に行ってみよう!」

 「僕もその上が一番怪しいと思います!何度かエリーさんが攻撃してきたんですけど、必ずはしごの前に戻ってます!」

 「わかった!お姉ちゃん、エリーの攻撃を避けながら行くからちゃんと私に捕まっててね!」


 今まではルーナが姫那を抱えるような体勢だったが、姫那が少し動けるようになった事によってルーナが姫那をおんぶするような形で飛んでいた。


 「うん!振り落とされないようにしっかり捕まってる!」


 そしてやはりはしごを守るように立っているエルサリオンは姫那達に攻撃した。


 「すまん!避けてくれ!」

 「うわ!危ないよエリー!」

 「だから俺じゃないんだって!早く悪魔を見つけてくれ!」


 エルサリオンの攻撃を躱し、はしごに沿って飛んで上の部屋に入った。


 「真っ暗で何も見えない!」

 「とりあえず一回飛ぶのやめるね!」

 「わかった!」


 上の部屋は電気も点いておらず、何も見えない。

 辺りが見えないまま飛ぶのは危ないと判断したルーナは一度飛ぶのをやめ、目を慣らそうと考えた。


 「こんなに暗かったら私のギフトも使いようがないし、目を瞑って早く暗闇に慣れよう!」


 そう言うと二人は一度目を閉じ、少ししてから目を開けた。


 「お姉ちゃん、見える?」

 「うん、さっきよりちょっとだけ見える、、けどやっぱりうっすらしか見えないよ!」

 「私もほんのちょっとだけしか見えない、、」


 目を閉じて暗闇に目を慣らそうとしたが、少ししか見えない程に深い闇だった。


 「ゆっくり歩いてみよう!」

 「お姉ちゃん歩けるの?」

 「ルーナがずっと抱えてくれてたおかげで痺れもだいぶなくなって今なら多分歩ける!ありがとね!」


 全然姫那の顔も見えないが、姫那の声で優しく笑っているのがわかった。


 「私にはこれくらいの事しか出来ないし、お姉ちゃんの役に立ててよかったよ!」


 ルーナも笑顔と言葉で返し、ルーナが笑っているのを姫那もわかっていた。

 そして声がする方に姫那が近寄るとそこにルーナがいた。


 「うわ!びっくりした〜!お姉ちゃん驚かさないでよー!」

 「ごめんごめん!暗闇で危なそうだからルーナの近くに行こうと思って!そんなに驚くと思わなかった!」


 姫那の顔がいきなり目の前に現れた事に幽霊を見たかのように驚くルーナ。


 「歩くにもお互いの居場所がわからなかったら余計危ないから手繋いで歩こう!ゆっくりしてる暇もないし!」

 「そうだね!早くエリーと葵を助けなきゃ!」


 姫那とルーナは阿吽の呼吸で焦らず速やかに暗闇の中、散策をしていた。

 その頃下の階では、、


 「はぁ、、はぁ、、姫那さん、ルーナさん、早く悪魔を見つけて頂けると嬉しいですが、、僕もそろそろ限界が近いです、、」


 葵はエルサリオンに攻撃する事ができず、攻撃を受けてばかりだった。


 「葵、本当にすまない。もういいから俺に攻撃しろ!お前が死んでしまう!」

 「そんな事できないですよ!エリーさんは大切な仲間なんです!」

 「葵が反撃しないと俺は攻撃をやめられない!中途半端な攻撃じゃ俺は倒れない!俺を殺すつもりで殴るんだ!」


 ガープの傀儡の強制力が強く、エルサリオン自身も自分でどうにも出来なかった。

 止めるにはエルサリオンを殺すか気絶させるかしか方法が思いつかなかった。


 「僕にはできないです!」

 「やるんだ!」


 葵はエルサリオンのこんなに必死な顔を見たのは初めてだった。

 その顔を見て自分がやらなければいけないと思った。そして、、


 「うわぁぁあああ!」


 葵は巨大化してエルサリオンに殴りかかった。


 「それでいい。ありがとう」


 葵はエルサリオンを殴る事で止める事ができるのか?

 葵の拳はエルサリオンに当たるのか、、

傀儡の悪魔、ガープを見つけられないまま葵はエルサリオンに手を上げた。

エルサリオンはどうなってしまうのか。

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