表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
51/106

EpiSodE051:人ならざる心

 北の塔では姫那とルーナと夏生が、エルサリオンと葵がいる南の塔に向かおうとしていた。


 「俺はもう傷塞がったから階段で降りるよ。ルーナは姫那を抱えて降りてくれ。姫那はまだ雷の影響で動けないだろ」

 「夏にぃほんとに大丈夫なの?」

 「大丈夫だよ。お前はお姉ちゃんの心配をしてろ」

 「わかった。夏にぃも無理したらダメだよ!」

 「わかったわかった。じゃあまた下で合流な。わかったな?姫那」

 「、、うん」


 姫那はいつもの元気がなかった。

 理由はわかりきっている。フルフルの事だ。

 姫那自身も悪魔は倒さないといけないと思ってるし、夏生が正しいという事はわかっている。

 それでも最後のフルフルの言葉が頭から離れなかった。

 悪魔に感謝をされたのは初めてだったからだ。

 人間は悪魔に感謝する事はないし、悪魔が人間に感謝する事もない。

 だから姫那は戸惑っていた。

 これからどうやって悪魔を見たらいいのかわからなくなっていたのだ。


 「お姉ちゃんの気持ち、私もわかるよ。私、悪魔にひどい事されて本当に悪魔が嫌いだし、いなくなって欲しいって思うけど、フルフルの事はなんか嫌いになれなかった。お互いが人間だったら仲良くなれたのかなって、、」


 ルーナも同じ思いだった。

 ただ、一つ違ったのはフルフルだけにそう感じたという事。

 姫那に関してはずっとそうだが、悪魔に対して殺さなければいけないとか排除すべき敵とかそういった事を思えないのだ。

 唯一そう思ったのはルーナを助ける時だけだった。

 姫那は殺すとかじゃなくて出来る事なら悪魔でさえ救いたいと思っていたのだ。

 でもそれを仲間に言ったら反感を買うに決まっている。姫那を慕っているルーナでさえどういう反応をするかわからない。

 姫那の中である意味人ならざる心のこの感情が良いものなのか悪いものなのか判断がつかなかった。


 「でも夏生の言う通りだよね。悪魔は殺さないといけないよね」


 今はみんなに合わせるしかなかった。

 そして悲しむ間も無く、ルーナが姫那を抱えて北の塔を後にして飛んでいた。

 飛んでいるルーナの顔に水滴が当たる。


 「雨降ってきた?」

 「雨なんて降ってないよ?」


 そう言って姫那がルーナの方を向くと、雨と勘違いした水滴は姫那の涙だった。

 下へ降下しているから姫那を抱えて飛んでいるルーナの頬に下から上へ姫那の涙が流れたのだった。


 「お姉ちゃん、大丈夫?」

 「え?なんで、、私、、」


 自分でも何故泣いているのかわからない。

 色々な事を考えていたらいつの間にか流れてきたのだ。


 「ごめん、なんで泣いてるんだろう、、」

 「大丈夫だよ!私はわかってるから!お姉ちゃんは悪魔の事を思って泣けるような優しい心を持ってる。そんな本当の優しさがあるお姉ちゃんだからこそ私は大好きなんだよ!」

 「ル〜ナ、、」


 姫那の声は涙を堪えてるせいで震えていたが、その我慢もルーナの言葉を聞いてついには限界になりもう喋れないくらい声を上げて号泣していた。

 そんな姫那を見てルーナは姫那を強く抱きしめた。


 「もう!お姉ちゃんがそんなに泣いてたら私までもらい泣きしちゃうじゃんか〜」


 結局ルーナも泣いたのであった。

 そして地上が近づいてきた。


 「お姉ちゃん、もう地上だよ!そろそろ泣き止まないと!」

 「うん、そうだね!ルーナも泣き止まないと!」

 「私がお姉ちゃんが泣き止まないと泣き止めないよ〜!」


 二人は地上に降り立つギリギリで泣き止めたのだった。

 そして地上にもう既に夏生の姿があった。


 「夏生ー!」

 「おう、お前ら遅かったな。飛んで降りるだけなのにどれだけ時間かかってんだよ」


 夏生が俺の方が先に着いていたぞと言わんばかりに自慢げだ。


 「ごめん、ちょっと色々あって!」

 「ん?なんだお前ら、なんか目が赤くないか?大丈夫か?」

 「う、うん大丈夫だよ!ね、ルーナ!」

 「うん!な、何もなかったよ!それより南の塔に助けに行かなくちゃ!」


 夏生には泣いていた事がバレたくなかったのでルーナが話を逸らした。

 こういうところはだんだん姫那と似てきていたのであった。


 「そ、そうか。何もないならいいが。じゃあ南の塔に突っ込むか!」

 「私はちょっとまだ麻痺してるみたいだからルーナお願い!」

 「任せて!お姉ちゃんは私が守るから!」

 「ありがと!」

 「ほんとバカ姉妹だな、お前らは」

 「バカじゃないもんね!そうやってバカって言う方がバカなんだよー!」


 やはり普段の姫那はバカだった。

 なんとか夏生に泣いていた事はバレずに済んで姫那とルーナは胸をなでおろした。


 「エリー達もどうせ外から飛んで最上階まで行ってるだろ」

 「どうせって私達が飛んで行ったってわかったの?」

 「わかったよ。塔の中枢には悪魔がわんさか残ってたからな」

 「それ全部倒してさっき上まで来たの!?」

 「そりゃそうだろ。倒さないと先に進めないし」


 どれだけ体力バカなんだと姫那とルーナは思った。


 「それに毒の悪魔の時も外側から飛んで行ったからな。エリーなら葵の体調のこともあるし、効率を考えてそうするだろう」

 「じゃあまた夏生が悪魔をいっぱい倒さないといけないじゃん!」

 「そうなるな。てか、むしろそれでいいんだよ。なんか今は負ける気がしないし、修練にもなるからな」

 「そうなの?でもあんまり無理はしないでね!」

 「はいはい。じゃあ助太刀に行くぞ!」


 そう言い残し、夏生は南の塔に入っていった。

 そして姫那達も夏生が心配ではあるが、切り替えてエルサリオンと葵がいるであろう最上階に飛んでいく。


 「大丈夫かな、、」

 「夏にぃなら体力バカだし大丈夫だとは思うよ!」

 「夏生もそうなんだけど、エリーと葵ちゃんの方も心配だなって思って。葵ちゃんなんか毒のせいで体調もまだ万全じゃないし、そんな葵ちゃんを守りながら戦うエリーも大丈夫なのかなって、、」

 「確かにそうだよね、、自分ではああ言ってたけど、葵ちゃんやっぱり心配だよね」


 葵が強がっていたのは誰が見ても明らかだったので、やはり心配になる姫那とルーナ。


 「私達が早く着いたらその分二人の負担も軽く出来ると思うし、早く行って助けてあげよ!」

 「そうだね。今考えてても仕方ないしね!ルーナ、全速力でお願い!」

 「任せなさーい!」


 北の塔の時よりも更に早く飛んでいた。

 人は自分の為に本気を出す事は難しいが、大切な人の為なら自分が持てるパフォーマンスを超越して力を発揮出来る。

 それが著しく出るのが姫那達のいいところであり、弱点でもあったのだ。

 そして夏生よりも早く最上階に着くのは姫那達なのだが、そこには目を疑う光景が広がっている事をまだ二人は知らない。

姫那の人の良さが垣間見えた回でした。

そして最後の南の塔に待ち受けてる悪魔とは?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ