EpiSodE047:作戦開始
海底都市の攻略と解放は東西南北の4つの塔を陥落させる事が鍵だとにらんだ姫那達はそれぞれであと3つの塔の制圧を今の目標に決めた。
まず、北の塔には姫那とルーナ、西の塔には夏生、南の塔にエルサリオンと葵が向かう事になった。
「各自危なくなったらすぐに叫ぶんだぞ。誰かがピンチになったらその時点で全員で直ぐに助けに向かうようにしよう」
「あぁ、わかった」
「了解!」
「全員の武運を祈る」
エルサリオンのその言葉でみんなが各塔に向かって走り出した。
「最近足引っ張ってばかりだからそろそろ貢献しないとやばいな」
夏生はまた自己嫌悪に陥っていた。
別に誰かに責められてるわけじゃないし、もちろん足を引っ張ってるとかそんな事みんなが思ってないという事もわかっている。
だが、やはり自分で自分を許せない。
その自己嫌悪を払拭する為に誰よりも迅速に確実に悪魔を倒し、任せられた西の塔を制圧する事を心に決めているのであった。
そして、南の塔に向かったエルサリオンと葵はというと。
「本当に大丈夫なのか?まだ顔色が優れないぞ」
「大丈夫です!解毒してもらってむしろいつもより元気なくらいです!ゴホッ」
無理をしているのは一目見ただけでわかる。
だが、この葵の思いを無駄にしたくはないとエルサリオンは思っていた。
「そんな辛そうに咳き込んでる奴が大丈夫なわけないだろ。本当に無理になったら絶対に言うんだぞ。わかったな?」
「エリーさん、ありがとうございます。はい!その時はお願いします!」
別に葵に非があったわけじゃない。
誰が何処にいるかもわからないあんな状況では食らってしまうのも無理はない。というより食らわない方がおかしいというものだ。
でも迷惑をかけてしまった事に変わりはないと感じていて、ここで助けてもらったお礼を返したいと思っていたのだった。
北の塔に向かった姫那とルーナは。
「私達も頑張ろうね!ルーナ!」
「うん!お姉ちゃんと一緒なら本当心強いよ!」
いつも通り仲の良い二人だったが、ルーナには少し心配な事があった。
それは姫那の覚醒の事だ。
もしまたあんな事になったら自分はお姉ちゃんを止められるだろうか?あのまま暴走してしまったらお姉ちゃんは自滅してしまうのではないか?と思っていて、一緒にいられる事は嬉しいがその不安と止めなければいけないという重圧がのしかかっていた。
「ルーナ!大丈夫だよ!」
「え?」
「私は大丈夫だから!ちゃんとルーナの横にいるよ!」
ルーナは気付いた。
知らず知らずのうちに不安な気持ちが顔に出てしまっていたみたいだ。
「ごめん、お姉ちゃん。私、、」
「ううん、ルーナが謝る事なんて何もないよ!私を心配してくれてるんでしょ?ありがとね!それと、ごめんね、心配かけちゃって」
ルーナに心配をかけさせてしまった事は自分の落ち度で、それでルーナを不安にさせている。
正直いつまたあの状態になるかわからない。
でもルーナが横にいてくれるならギフトの暴走はしない、と思う。
あの暴走のキッカケはルーナが捕らえられていて、危ない目に遭っていたからだ。
今はそんな状況ではない。
だから自分がルーナを守ってさえいれば暴走する事はないと姫那は思っていた。
「お姉ちゃんは私を助けてくれたんだよ?だからお姉ちゃんの方こそ謝る事なんてないよ!」
「じゃあこうしよ?お互いもう謝るのはなし!ありがとうって感謝の気持ちだけ伝えよ?」
姫那の提案にルーナは笑って応えた。
「わかった!いつもありがとう!お姉ちゃん!」
「私の方こそいつもありがとうね!」
仲違いをしていたわけではないが、姫那とルーナは二人になるとあの時から今までずっと遠慮という名の薄い壁があった。
それが今やっとなくなったのだった。
「こっちにはお前らが来たか。全員で来なくてよかったよ。お前達二人ならまだなんとかなりそうだ」
姫那とルーナがついに悪魔に遭遇した。
「お姉ちゃん!」
「うん!私に任せて!」
まずはこの北の塔について聞く必要があった。
『この塔のリーダーは何処いるの?』
「この北の塔のリーダー、雷の悪魔はこの最上階にいる」
ここは北の塔のまだ最下層部だ。
目の前の悪魔は北の塔のリーダーではないと姫那とルーナは判断した。
そして洗脳をかけ、居場所を聞きだした。
「最上階か。それに雷の悪魔ってなんかおっかないよね!」
「雷でしょ?攻撃当たったらやばそうだね、、気を引き締めていかないとね!」
「なんで俺はお前らに雷の悪魔の居場所を教えてしまったんだ、、」
姫那が洗脳を解いた為、悪魔が正気に戻った。
そしてやはり姫那のギフトをサイコキネシスと思っていたのだろう。何が起こったのかわかっていない。
「とりあえずこの悪魔には眠っててもらおうかな!」
『そこでずっと眠ってて!』
「眠ってて?そんな言葉だけで眠るわけ、、」
バタンッ
悪魔は眠ってしまった。
「お姉ちゃんすごい!やっぱり普通の状態でもギフトの力が前より格段に上がってるよね!」
「そうかな?でもそれもこれもルーナのおかげだよ!」
眠る事を強制するのは洗脳というよりはもはや精神支配のレベルだった。
そして眠らせるという事は、やはり姫那は出来る事なら相手が悪魔であっても殺さずに終わらせたいと思っている証拠だった。
「やっぱりお姉ちゃんは優しいな、、」
「え?なんか言った?」
「ううん、何も言ってないよ!もう一気に上まで行っちゃおうよ!」
「そうだね!今の悪魔も一番上にトップがいるって言ってたし、その雷の悪魔を倒して早く終わらせよう!ルーナよろしく!」
ルーナが姫那抱えて二人は塔の外側から一番上まで行く事にした。
その頃西の塔では悲鳴が鳴り響いていた。
「お、お前はなんだ?化け物か?」
「悪魔のお前達が人間の俺を化け物扱いかよ。俺からしたらお前らの方が十分化け物に近いと思うがな」
夏生は目に入る悪魔を次々と排除していっていた。
それはもはや悪魔の所業と言っても過言ではなかった。
「まぁお前らが悪魔で俺が人間である以上、俺はお前らを狩り続ける」
「化け物が、、」
夏生はもう悪魔を斬る事に対してなんの抵抗もなく、作業のようになっていた。
そして夏生のギフトも成長を遂げていた。
「やっと二本持てるようになった」
そう、夏生は二刀流を習得したのだ。
姫那に渡してある分も含めると一度に三本創造できるようになっていた。
「これで成長したっていうのもなんかショボい気はするが、まだマシにはなったよな」
夏生が何故ギフトの成長を遂げたかというと、悪魔を数多く斬ってきた結果だった。
ギフトの成長はその人によって違っていて、姫那の場合は大事な人を守る為、夏生の場合は斬る事が好きというのが要因でレベルアップしたのだった。
「さっさとこの塔を制圧して他の塔の助っ人に行かないとな」
北の塔では姫那とルーナが、西の塔では夏生が順調に制圧を進めていた。
このまま何事もなく全ての塔の制圧ができるのだろうか。
姫那と夏生のギフトがレベルアップしていた。
4階層攻略はこれからどうなっていくのか。




