EpiSodE045:毒の悪魔
いきなり葵が倒れた。
首の辺りが紫色に変色している。
それを見て姫那とルーナは葵の元に駆けつけ、夏生とエルサリオンは周囲を警戒し、臨戦態勢に入った。
「葵の状態はどうだ?」
「わからない!なんか顔色が悪くて痙攣してるよ!どうしよ?」
姫那はいきなりの事で何がなんだかわからず混乱している。
「毒かなんかだな。姫那とルーナはとりあえず葵を見ててくれ!」
「わかったけど、葵ちゃんこのままで大丈夫かな?」
「今の状態だといつどうなるかわからない。でも毒なら打ったやつが抗体も持ってるはずだ。そいつを捕まえれば助かるはず!姫那のギフトでそいつを割り出さないか?」
「できない!相手の場所がわかってないと洗脳もかけれないの!相手の場所さえわかれば大丈夫なんだけど、、」
姫那のギフトは汎用性に優れているし、強力だが、相手が何処にいるかわからなければ洗脳のかけようもないのだ。
そして、洗脳というギフト自体が繊細なギフトの為、使用者の精神状態も関わってくる。
例えばルーナが攫われた時がいい例だ。
それだけが原因ではないが、姫那が激怒していた為、ギフトの質自体も荒々しくなったのも一つの要因となり、凄惨な戦場になったのだ。
「そうか。じゃあ俺とエリーがその悪魔を見つけるから姫那はそいつから抗体を出させてくれ!」
「わかった!姿さえ見えれば大丈夫だから見つけたらすぐに呼んで!」
どんな毒かもわからない以上、最悪すぐに毒が体に回って死ぬ可能性もある。
一刻も早く毒を打った悪魔を見つけて抗体を手に入れなければならない。
「葵はどっち向きに立っていた?」
「姫那の前でお前の方を向いて歩いていた」
これだけ悪魔がいないとなると絶対に何かあると想定していた夏生とエルサリオンは何かあった時の為に前が夏生で後ろがエルサリオンと前後で挟むような陣形で歩いていた。
「だったら毒の痕を見ても打ってきた場所はあっちのほうだな」
葵が歩いていた場所、打たれた痕を見て悪魔がいた方向を予測して夏生がその方向に探しに行って、エルサリオンは姫那達の護衛の為に残った。
「エリーも行っていいよ!ここは私が守るから!」
「しかし見えない相手には洗脳はかけれないんだろ?だったら俺が残っていた方がいいんじゃないか?」
「大丈夫!絶対私が守るから!」
「、、、わかった。すぐに見つけてくるからここから動くなよ」
「うん!早く見つけてきてね!葵ちゃんどんどん悪くなってるみたい、、」
葵が息もしづらそうで容体が明らかにさっきより悪くなっていた。
ルーナはずっと葵に呼びかけていた。
「わかった。少し待っててくれ」
そう言うと、エルサリオンも翼を広げて夏生が走っていった方に飛んでいった。
「夏生!悪魔はいたか?」
「いない!エリー、お前がこっちにきて大丈夫なのか?」
エルサリオンは姫那との会話の内容を夏生に伝えた。
「そうか、わかった。葵がそんな状態なら早く悪魔を見つけないとやばいな」
「あぁ、こっちには絶対いるはずだ」
夏生とエルサリオンは死に物狂いで探していた。
スッ
「今何か通らなかったか?」
「見えなかったが何か通ったな。気配がした」
見えなかったが、何かが通過した。
そしてそれは多分悪魔だろう。
「集中するぞ。何処かにいるはずだ」
夏生は目を瞑り、気を落ち着かせ周りの音が聞こえなくなるくらい集中する。
スッ
「そこだ!」
夏生が突き出した剣が見えない何かに刺さる。
そして見えていなかった何かが姿を現したが、やはりそれは悪魔だった。
「な、何故俺の場所がわかったんだ?透過は完璧だったはずだが、見えていたのか?」
刺された悪魔は何故自分が刺されたのか全くわかっていなかった。
「見えてねぇよ。お前の気を感じたんだよ。お前ら俺への殺気がだだ漏れだったからな」
「殺気だと?そんな目に見えないもの感じられるわけ、、」
「そんな事は今どうでもいいんだよ。お前が俺の仲間に毒を打ったのか?」
夏生は悪魔の言葉を遮って話の本題に入った。
「毒?あぁ、そういう事か。お前らの仲間が毒にやられたんだな。それは気の毒だな。あの人の毒は30分もあれば死に至る。助かる見込みなんてない。もちろん俺があの人の居場所を言う事も絶対しない。そのお仲間さんは残念だったな」
「そうか、わかった。じゃあ無理矢理にでも喋ってもらう」
「何やっても俺は喋らないぜ。拷問でもなんでもしてみろよ」
「拷問?そんな事しなくてもお前はすぐ喋るよ」
拷問なんて時代遅れな事はしない。何故ならこちらには最強のネゴシエーターがいるからだ。
もはやネゴシエーターの域を遥かに超えているが。
「姫那!毒の悪魔が別のところにいるらしいんだが、こいつにそいつの居場所を吐かせてくれ!」
「わかった!」
「ふん、何を言っているんだ。吐くわけないだろう」
『毒の悪魔の居場所はどこ?』
透過の悪魔は目が虚ろになり、すぐに居場所を吐いた。
「東の塔の最上階にいる」
東の塔とは夏生とエルサリオンが今いる場所だった。
「東の塔って方角から見てもこの塔だよな。ここの一番上だな。早くいくぞ!」
夏生は毒の悪魔の場所がわかった瞬間に透過の悪魔を何の躊躇いもなく殺した。
「夏生、お前、、」
「あ?なんだ?」
「いや、なんでもない早く行こう」
エルサリオンは今は何も言わない事にした。
それよりも今は毒の悪魔を見つける事が最優先だったからだ。
そして夏生が階段から走って行こうとしていたのを引き止めた。
「待て、夏生」
「さっきからなんだよ!早く行かないと葵が死んじまうだろ!」
「わかってる。だから外からいくぞ。来い」
エルサリオンは夏生を掴んで塔の外側から飛んで一番上まで行った。
「確かにこれは最速だ」
夏生は感心していた。
そして塔の一番上に着いてすぐに悪魔の姿があった。
「お前が毒の悪魔だな?」
「なんだお前ら?なんでこんな所まで来てるんだ?」
「お前の仲間の透過の悪魔がお前の居場所を吐いたんだよ」
「は?あいつが俺の居場所を吐くわけがないだろ」
「という事はやはりお前が毒の悪魔なんだな。ちょっと来い」
「近づくな!」
毒の悪魔はすごく用心深く、近づくエルサリオンと夏生に毒を飛ばした。
「飛ばすところを見ていれば避けるのは造作もない」
夏生を抱えたまま、エルサリオンは飛んできた毒を異次元の動体視力で避けた。
「くそ!こっちに来るな!」
毒の悪魔は猛毒の能力を持つ代わりに他の能力は人間並みなのだ。
毒が効かないとか当たらないとなるとなす術がなかった。
そしてすぐに夏生とエルサリオンに捕まった。
「お前には解毒をしてもらう。下まで来い」
「そんな事するわけないだろ!一度毒を食らったら後は死を待つだけだ!」
透過の悪魔と同じ反応だった。
そして姫那の前に連れていき、姫那がギフトを使うとさっきの言葉が嘘かのように誰でも何でも喋るし、何でもする。
「これで葵ちゃんも大丈夫かな?」
「30分で死ぬと言ってたから、ギリギリ大丈夫だとは思うが、、」
夏生とエルサリオンの活躍により毒の悪魔を捕らえ、解毒は施した。
果たして葵の解毒は間に合ったのか?
葵が猛毒により絶体絶命のピンチに。
解毒は成功したのか?それとも、、




