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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE044:不気味な街

 相談をするまでもなく行き先は決まっていた。

 中に降りる前に上空から見たところ、中央の巨城に向かうには一番広い道を通っていかなければならない。

 どういう事かというと一番目立つ道を通らないと中央の巨城にはたどり着けないのだ。


 「上から見た感じ、あの大通りに悪魔らしき人影はなかったが、油断はできないな。ここは悪魔の本拠地だ。正直悪魔がどれくらいいるかもわからない。出来るだけ悪魔に遭遇しないように隠密行動であの城まで行こう」


 最終目標に出会うまでなるべく体力は温存しておきたい。

 今までの事を考えても悪魔のボスは相当強い。

 姫那がいたからなんとか切り抜けてきたが、いなかったら確実に3階層で死んでいた。

 この海底都市の悪魔も姫那一人で倒せるかもしれないが、戦う準備をしておいて損はない。

 そしてやはり気になるのが葵が言っていた姫那のギフトの覚醒もとい暴走だ。

 姫那一人に背負わせてまたいつ暴走するかわからない。

 そうならない為にも一人一人がまともに戦えるくらいには温存しておきたい。

 それで少しでも姫那の負担を軽減したいと思っている。

 エルサリオンはそう考えていたが、夏生は少し違った。


 「悪魔に出くわしたら俺が全員討伐する。お前らは見てるだけでいいぞ」


 やる気満々の奴が一人いた。

 それは3階層の時と同じく自分がなんの役にも立ててない事が大きな原因だった。

 同じ事を繰り返してしまった罪悪感が夏生を襲っていた。


 「そうなった時はお前に任せるよ。でもくれぐれも自分から仕掛けるような真似はするなよ?」


 エルサリオンは夏生の行動原理を理解していた。だから止めなかった。

 だが、自分から向かっていけばそれは仲間を危険に晒す事になる。それはチームとして間違った行動だから抑制する必要があった。


 「わかってるよ。いくら俺でもそんなアホな事はしない。仲間を守る為に戦うんだ」


 夏生もそれは重々承知していた。


 「じゃあそろそろ行こうよ!こんなとこでずっとじっとしてても何も変わらないし!」


 姫那にとってはこの作戦は簡単な事で遊びとは言わないが、それくらいの気持ちで行くのだろうとみんな思っていた。

 だが、姫那自身は違った。

 奴隷という制度、もはや家族と言ってもいい仲間を危険に晒した事を許してはいなかった。

 全てがそうなのかと聞かれるとそうじゃない悪魔も中にはいるかもしれない。

 だが、心の中で強く思った事は悪魔を許せないという事。

 ルーナを弄んだ悪魔は倒した。

 でもいつまたあんな目に遭うかわからない。


 姫那は自分の事よりも仲間が傷つく事が何よりも嫌だったのだ。

 そして少なからず責任は自分にもあると思っている。

 自分がルーナを守ってあげられなかったから。と自分を責めていたのだ。

 自分を許せるのはやはりここに堂々と居座る悪魔を倒してからだと思っていた。

 でもそれをみんなにわかるようにしてしまっては逆に気を遣わせてしまうと思っていたから、みんなの前ではいつも通りに笑顔を振る舞っていた。

 その姫那の笑顔は完璧、、のはずだった。


 「お姉ちゃん、何かあった?」

 「え?」


 ルーナには何か感づかれてしまったみたいだ。


 「なんかいつものお姉ちゃんと少し違う気がして、、何かあるなら私も力になれたらなって!」


 ルーナは深く聞こうとはせず、何か出来る事があれば力になりたいと純粋に思ってくれていた。

 そんなルーナの顔を見て、自分には人を騙すとか演技をするとかそういった才能は全くないんだと思った。


 「ルーナ、ありがとね!ルーナには勝てないな!絶対に悪魔を倒してこの海底都市を救ってあげよ!」


 ルーナは今やっと姫那の本心が聞けたような気がしてホッとしていた。


 「うん!奴隷なんて制度絶対無くさないといけないもんね!」


 その言葉には重みがあった。

 時間は長くはなかったが、一時的とはいえルーナも奴隷の身となったのだ。

 悪魔の拠点なんて怖いはずなのに、それを微塵も見せずに悪魔から奴隷の解放を率先している。

 この子は本当に強い子だと思った。

 そう思うとすごくルーナが愛おしくなって、強く抱きしめた。


 「ど、どうしたのお姉ちゃん?」

 「ん?なんかわからないけど、すごく愛おしくなっちゃって!」


 何故かわからないがルーナは涙が出てきていた。


 「あれ?なんでだろう。涙が出てきちゃった。お姉ちゃんに抱きしめられて嬉しかったのかな」

 「いいんだよ!いっぱい泣いて!私がいるからね!私だけじゃない、ルーナにはずっと私達がいるからね!」


 正直まだ恐怖は消えてない。

 今でも触られた太ももに手の感触が残っている。

 でもお姉ちゃんやみんなが一緒にいてくれる、みんながいればたとえ悪魔だらけの街だろうと迷わず行ける。


 「お前ら何やってんだ?早く中央の巨城に行くんだろ」


 夏生がついてこない姫那とルーナに声をかける。


 「ごめんごめん!今行くよ!いこ、ルーナ!」

 「うん!お姉ちゃん!」


 二人は手を繋いでみんなのところに走っていった。


 「お前らが喋ってる間に近くの建物を調べにいってみたんだが、誰かいる気配が全くなかった。それに道にも悪魔の一人もいないんだ」


 夏生が情報収集のために調べに行ったのだが、びっくりするほど何も出てこなかったみたいで、もう少し進んでみて情報を探る事にした。


 「ここにも誰もいないな」


 少し歩いた先の建物にも誰もいる気配がない。


 「ここまで誰もいないとなると、もしかしてもうこの街から逃げ出したのかもしれませんね!」


 姫那と葵の事はもう伝わっているだろう。

 それならこの街を捨てて逃げた可能性もゼロではない。


 「誰もいない可能性もあるが、一応警戒しながら中央まで行こう」


 相手のホームにたったの五人で入るという事は本来は無謀な事で、少しの油断が命取りになる。

 だからこそ細心の注意を払って進まなければいけないのだ。

 そして周りに注意しながら歩いて中央の広場まできた。


 「結局何も出なかったな。ここまで誰もいないとなると逆に怪しくなるな」


 無傷で勝てるに越した事はないが、何も無さすぎるというのも怪しい。

 いくら気付かれず隠れてここまで来たと言っても、それまでに姫那と葵にこっ酷くやられていたからもう悪魔たちには姫那達のことは知れ渡っているだろう。


 「ここが中央広場か」

 「ここにも誰もいないね、、本当に全員逃げたのかな?」

 「どうなんでしょうか?まだ大通りと広場しか見てないからなんとも言えないですけど」


 そして悪魔が全くいなかった事にほんの一瞬だけ全員に気の緩みが出てしまった。


 バタンッ


 「!?」


 全員何が起こったのかわからなかった。


 「葵ちゃん!どうしたの?大丈夫?」

 「わから、、ないです、、なんか、、体が、、」


 一体葵の身に何が起こったのか!?

不自然なまでにいない悪魔の行方は?

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