EpiSodE042:悪魔の行方
姫那の新たな能力の内容もなんとなくわかった事で4階層攻略の話になった。
「ここにいる悪魔の討伐が4階層の攻略の条件だ。だが何もここにいる悪魔を殲滅する必要はない。悪魔はその街のトップが敗れれば負けを認め、こちら側の勝利になる。だから探すのはここでトップの奴だな」
3階層の時にグレモリーを倒した後、アボリジャバロから悪魔が風のように一人もいなくなった。
階層によってその習性が変わるのは考えにくい。
悪魔の組織はそうやって成り立っていると考えるのが一番自然だった。
「ここは地上の島よりも一回り大きい。探すとなると一苦労だな」
地上の上空から見た影は島の1.3倍程は大きかった。
しかもここには悪魔や人、色んな種族がいる。それ全部を探すとなるといくら時間があっても足りない。
かと言って別々で探して、また悪魔に捕まったりしたらさっきの二の舞になる。
姫那がいればブレスレットをつけられたとしても解除できる。
「私がいた場所は偉そうにしている悪魔が結構いっぱいいたよ」
「そうなのか?じゃあ一度そっちに行ってみるか。どの辺だ?」
「そう、だね、、」
「ルーナ、大丈夫?そうだよね、戻りたくないよね、あんなところ」
「何かあったのか?」
「私が話すよ。気を遣ってくれてありがとう、お姉ちゃん」
ルーナは自分に起きた事をみんなに話した。
「そうか、そんな事があったらそりゃ戻りたくなくなるわな」
「でも大丈夫!言い出したの私だし、そこに攻略の糸口があるかもしれないし!少しでも可能性があるなら行くべきだよ!」
「ルーナ、、よし、ルーナの事は私が絶対守るから!もう絶対悪魔になんか渡さない!」
「お姉ちゃんが守ってくれるならこれ以上に心強い事はないね!」
ルーナの姫那に対する信頼は絶大で、その信頼通り姫那以上にルーナの護衛の適任はいない。
というか、大抵の事は姫那にかかれば解決するとみんな思っていた。
「わかった。じゃあ攻略の手掛かりを探しに早速そこに行こうか」
ルーナの決心もついたところで姫那達は歓楽街の方に向かった。
「ここが歓楽街か」
豪華な建物が4軒と崩壊している建物が1軒。
「なんで1軒だけぶっ壊れてるんだ?」
「な、なんででしょうね〜」
葵が絶対何か知っているような顔で白を切っていた。
「お前ら絶対ここで何かやらかしただろ」
「私はルーナを助ける為ならなんでもするよ!なんなら他の4軒も壊そうか?葵ちゃんが!」
「姫那さん〜!」
夏生もエルサリオンもわかってはいたが、姫那が葵がやったと言ってしまった。
「まぁ俺もそうの状況ならそうするが、それにしても葵の破壊力は桁違いだな。建物の半分が綺麗になくなってるぞ」
「僕もルーナさんを助けたくて必死だったんで、とりあえず殴りました!」
「ルーナがいたとことは別のところでもいたよ!すごく接待されてる悪魔!」
「その悪魔達は今はどうなってるんだ?」
「わからない!洗脳とかはもう解けてるだろうけど、、どうなってるんだろう?」
姫那と葵がルーナを救出した後、ここがどうなっているかは全くわからなかったのでとりあえず入ってみる事にした。
そして入ってみるとそこには何もなかった。
「誰もいない?それどころか何もないじゃないか。どうなってるんだ?」
「私達が来た時はすごい賑わっていたんだけど、、でも誰もいなくなったって事はあの働いていた人達も救われたのかな、、」
姫那のその疑問には誰も答えなかった。
いや、みんななんとなくわかっていたが答えられなかったのだろう。
悪魔と一緒にいて救われているとは思えない。
その後どんな目に遭っているのか。それは想像もつかない。
「一応他のところも行ってみるか」
残りの4軒も見に行ったが誰も残っておらず、これといって収穫はなかった。
「何もなかったか」
「私が倒したのはこの壊れてる建物の悪魔だけだったんだけど、、」
「他の悪魔は逃げ出したんだろうな。この惨状を見て」
洗脳されるだけでも身の毛もよだつことだったのだが、それに加えて建物の破壊、悪魔の集団惨殺の現場を目の当たりにしたのだ。
姫那と葵がここで悪魔にした事は悪魔に恐怖を与え、逃げ出すには十分するぎる所業だった。
そして逃げると一緒に働いていた人間や他の種族の女性も一緒に連れていかれたかその場で喰われたのだろう。
「じゃあまた振り出しって事か〜」
「いや、そうでもないぞ」
「え?どういう事?」
気を落としてる姫那に対して夏生が振り出しという事を否定する。
「大きな手掛かりではないが、というか予想にも近いが、そこまで姫那達に恐怖していたのなら姫那達が行った方向には行かないだろう。だから悪魔達は姫那達とは逆の方に逃げた、と思う」
「確かにそうですね!悪魔の習性から考えても逃走経路はそれが一番濃厚だと思います!」
夏生の予想はすごく理に適っているものだった。
ここまでほとんど手掛かりがない状態で、夏生の言った事だけが唯一の手掛かりになっていた。
「そうだな。一度あっちの方に行ってみよう」
この辺りはもう人間も悪魔も全くいない。
ここに長期滞在してももう何も出てこなさそうだったので、歩いて来た方とは逆に向かった。
周りを警戒しながらしばらく歩いていると、少しずつ人も出てきた。
「この辺りは集落的なところか?ここにはブレスレットをつけた奴しかいないな。悪魔はどこまで逃げたんだ」
「でもこれだけ悪魔がいないと益々怪しいよね!」
「姫那にしては鋭いな。ここまであからさまだと逆にわかりやすいな」
「でしょー!それに人がいるならここからは私に任せてよ!」
するとそこにいた人に悪魔が来たかどうかを洗脳をかけて聞いた。
「やっぱりこっちに来たって!少し前に来て、あっちに行ったらしいよ!」
「ほんとに姫那さんがいたらなんでもありですね、、隠し事とかしてもすぐにバレますね」
「まぁあいつが隠し事をしているとわかればの話だがな」
姫那はそういうのには鈍感だから気付かないと思う葵と夏生。
「ねぇ、この人達解放してあげない?」
「何を言ってるんだ。ここだけ解放したらそれこそ悪魔にバレて惨殺させる可能性があるぞ」
「どういう事?」
「ブレスレットは能力を封じているというのもあるが、管理する為につけさせてるという事も考えられる。俺らみたいに一人二人くらいなら気付かれないかもしれないが集団で外れたとなると悪魔も動いてくるだろう。そうなった時、いくらお前でも全員を助ける事は難しいかもしれない」
「そっか、、わかった!」
姫那の気持ちはみんなわかるが、夏生が言ってる管理する為につけさせているなら今解放するのはリスクが大きすぎると理解した。
そして教えてもらった方にまた歩いていく。
さっきまでここにいたみたいだったからまだそこまで遠くに行ってないはず。
「これは足跡か?」
そこには無数の足跡があった。
こっちに行ったという情報とこの無数にある足跡。この足跡の量は数十人がここを通った跡だった。
「どうやらこの先に悪魔の集団がいる事は間違いなさそうだな」
もう少しで悪魔を見つける事ができるかもしれない。
姫那達はやっとこの海底都市に来て階層攻略の進展を感じていたのであった。
悪魔の集団と会って何か得られる事はあるのだろうか。




