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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE040:海底都市の等価交換

 無事二人の救出に成功し、二手に分かれる前に決めた集合場所に集まる事もできた。


 「姫那、なんかお前も服破けてるな。そんなに悪魔にやられたのか?」

 「悪魔には何もやられてないよ!なんか知らない内に破れてた!」

 「なんで知らない内に破れてるんだよ。それにお前なんかもう服というより布になってるぞ」


 姫那の服は破れすぎて服の原型をとどめてなく、見えてはいけないところまで見えそうになっていた。


 「うわ!夏生のエッチ!どこ見てんのよ!」

 「夏にぃのエッチー!」

 「お前のなんか見たいと思わねぇよ、バーカ」

 「何よそれー!なんかそれはそれでちょっとムカつくんですけどー!」


 という事でとりあえず姫那の服を何処かで買う事にしたのだが、どうやって買ったらいいのかもわからないまま衣類店に入った。


 「服選びもそうだけど、どうやって買ったらいいんだろうね?」


 元にいた世界と同じような店で少し日本に帰ってきた気分になっていた。

 姫那が服を何着か見ているとある事に気付く。


 「これって全然値札とか付いてなくない?」


 そう、ここにある服全部に値札が付いていなかったのだ。


 「貰っていいって事か?」

 「それはないでしょ!一回聞いてみよ!」


 そして店員の方に行くと、店員はブレスレットを付けた奴隷だった。

 それを見てすごく心が痛むが、目の前の人だけを助けてもこの都市は何も変わらない。この縮図の元凶の悪魔を倒さない事には悪魔は終わらないのだ。


 「すみません、これってどうやって買うんですか?」


 話しかけると体がビクッとなり少し怯えてるようだった。


 「は、はい。ここにある商品は悪魔様以外の種族を捕らえると無償でお渡しする物です」


 全員言ってる事の意味を理解するのに少し時間がかかったが、なんとなく意味を飲み込めた。

 するとエルサリオンが言葉を発した。


 「ちょっと一回店を出よう」


 その声で一度全員店から出て、エルサリオンから作戦が告げられた。


 「みんなもわかったと思うが、この海底都市は物の売り買いですら人身売買で成り立っている。それについてはみんな同じ気持ちの筈だ」


 そうだ。これは本来あってはならない実態なのだ。

 最終的には絶対に悪魔を殲滅しなければならないと全員が思っている。


 「だが今は攻略を優先すべきだ。その延長線上に海底都市の解放もある」

 「わかってるよそんな事。それよりも今はこいつの布切れみたいになった服の調達だろ」

 「布切れって言わないでよ!なんか恥ずかしくなるから!」


 エルサリオンが勿体ぶるので夏生が痺れを切らして、話を元に戻した。


 「そうだな。すまん、ちょっと話が逸れた。それで、服の調達法だが、、」


 エルサリオンの話はこうだ。

 夏生を囮にして服をもらうという方法だ。

 今都合がいい事に夏生は奴隷の証のブレスレットをつけている。

 夏生が姫那に捕まったふりをして服をもらう。それがエルサリオンの作戦だった。


 「俺が囮かよ。囮ならルーナでもいいんじゃないか?」

 「囮役をルーナにさせるなんてどれだけ非情なの、、」


 姫那は夏生を悪魔を見るような目で見て言った。


 「嘘だよ。俺がやるよ。やればいいんだろ」

 「ありがと夏生!いざとなったら私がどうにかするからさ!」


 この女なら本当にどうにかできてしまうから怖いと思いながら、誰も姫那のその言葉を否定しなかった。

 そして手筈通り姫那が夏生を連れて先程の店に戻った。


 「すみません!この人捕まえたんで服もらえますか?」

 「あのー、この人ってさっき一緒に喋ってなかったですか?」

 「なんの事ですか?全然違いますよ!だってこの人の腕見てください!ブレスレットもつけてるでしょ?」

 「そうですけど、、わかりました。ではその人と引き換えに服をなんでも差し上げます」

 「引き換え?」

 「はい。捕らえた人を引き渡す事でこの服をお渡しできます。それを破れば私は悪魔に殺されます。あなたも人間の身で自由にできているのは最初に悪魔に逆らわなかったからでしょう?私もそうすればよかった、、」


 姫那は夏生から聞いていた。

 人間が悪魔側についていて、その人間に捕まっていたと。

 だから店員の言葉にもすぐに対応できた。


 「この人間は私の奴隷にするの!だから引き換えじゃなくてブレスレットが奴隷の証って事で服もらえない?1着でいいから!」

 「それはできません。人間と交換は絶対です。この海底都市での決まり事です」


 どうお願いしても無理そうだったので、最終手段を使うしかなかった。

 その最終手段とは、、


『服をタダで譲って!』


 もちろん姫那の洗脳だった。


 「はい、わかりました。どれでも譲りますのでいくらでも持っていってください」


 店員は有無を言わさずすぐに姫那の言いなりになり、服を譲ってくれた。


 「無事服も手に入れれたし、よかったー!ついでに夏生の服ももらえたしね!」

 「やっぱりお前のギフトはチートだな。俺も気を付けないと」

 「私だったらそんなブレスレット付けさせないで夏生の事奴隷にできるからね!」

 「お前今悪魔のような事を言ってるぞ。もしかして本当に悪魔になったのか?」

 「夏にぃ何言っての!そんなわけないじゃん!お姉ちゃんが私を助けてくれた時すごかったんだから!」


 悪魔じみた発言をした姫那に対して夏生が言った一言に葵が反応した。


 「エリーさん、少し気になる事があるんですが、いいですか?」

 「どうした?何かあったか?」


 葵はルーナを助けた時の姫那についてエルサリオンに話した。


 「、、そうか。姫那にそんな事があったのか。あいつのギフトが特殊なのか、それともギフト自体に何かまだ隠された事があるのか。姫那はその事について何か言ってたのか?」

 「それが姫那さんはその時の記憶がごっそりなくなってるんですよ。気付いたら悪魔を殲滅してたみたいで、、」

 「記憶がないか。なかなか難しいが、一つ言えるのはルーナを助ける事だけを考え、そのために姫那は覚醒したという事だな」

 「そうですね!すごく姫那さんらしいです!」


 不安はまだまだあるが、姫那が大切な家族を守る為にあのようになったと思うと葵は少し嬉しい気持ちにもなった。


 「エリーと葵ちゃん何話してるの?早く行こうよ!4階層の攻略について作戦立てるよー!」

 「はいはーい!今いきますー!いきましょ、エリーさん!」

 「あぁ。行こう」


 全ての準備が整った。

 4階層攻略はここからが本番だという事を姫那達は理解していて、その最終目的はこの海底都市・クルアラントの解放であった。

 悪魔は何人もいるがまだこの街の幹部クラスの悪魔とは会っていなかった。

 いや、会ってはいたが気付いていないのであった。

ついに次回から4階層攻略が本格化します。

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