EpiSodE035:手掛かりを追って
姫那はギフトを最大限使ってルーナを探していた。
「ブレスレットを付けてない人に聞いてるけど、何の情報も出てこない!なんでなの?全員が悪魔なら誰か知っていてもいいのに!もっとたくさんの悪魔に聞いてみよう!」
「姫那さん!少し落ち着きましょう!闇雲に聞き回っても効率が悪いですし、質問を変えて聞いてみましょう!」
「質問を変えるって質問を変えるってどう変えるの?」
自信満々にエルサリオンに任せてと言ってそのままの勢いで聞き込みを始めたが、どれだけ聞いてもなんの手掛かりも得られないこの状況に姫那は少し泣きそうになっていた。
「姫那さんはルーナさんの特徴をどうやって伝えてますか?」
「金髪で目が綺麗な青色で身長は140cmくらいの担がれてる可愛い女の子は見かけなかったかって聞いてるけど、、」
「姫那さん、ルーナさんの事大好きですね!でも今の姫那さんはルーナさんの特徴を細かく伝えすぎなんだと思います!ここではルーナさんを知ってる人はいないですし、もっと抽象的に聞いてみましょう!」
「抽象的ってどんな感じで聞くの?」
「単純に担がれてる子は見なかったか?これでいいと思います!」
「それだけでいいの?」
「逆にこれくらい抽象的な方がいいと思いますよ!担がれていたなら目隠しや何か被せられてたかもしれません!そうなったら髪の色や目の色とかはわからないですしね!」
「そうか!確かにそうだね!一度それで聞いてみよう!」
姫那の洗脳は良くも悪くも効果が効きすぎる。
例えば今回は姫那がルーナの細かい情報を与えてしまったがために、洗脳されてる対象が知り得ない事が擦り込まれ、もしルーナの事を見てる人がいたとしても何かを被せられていたらルーナが金髪で目が綺麗な青色という事も知らないので、聞き込みで到底ルーナを見つける事はできないのだ。
そして葵の指摘通り、聞き方を変えてみると手掛かりを得る事ができたのであった。
「葵ちゃん!手掛かり掴めたよ!あっちの方に行ったって!」
「よかったです!やっぱり姫那さんのギフトはすごいですね!汎用性が効きすぎです!」
「私なんて全然だよ!葵ちゃんがアドバイスくれなかったらまだ手掛かりすら聞けてなかっただろうし!」
「姫那さんのギフトあってこそですよ!じゃあとりあえず手掛かりの場所に行きましょうか!あっちの方のお店に運ばれてたんでしたっけ?」
「うん!なんか豪華な作りの建物って言ってたよ!」
「豪華な作りの建物、、抽象的に聞くと答えも抽象的になるんですね!」
曖昧な回答にはなっていたが、聞いた方向に歩いていくと明らかに周りとは違う空気を放った一際豪華な建物が並んだ場所があった。
「これってあれじゃないですか?」
「うん、私も行った事ないからわからないけどここは多分歓楽街だよ、、こんなところにルーナを連れ込んだの?もしそうなら許せないよ」
姫那は怒る事が嫌いで基本的には怒る事はないが、自分の本当の妹のように思っているルーナをこのような場所に連れてきているのであればそれは姫那にとって許し難い事だ。
「入りますか?」
「ルーナがいる可能性が少しでもあるなら何処にだって行くよ!」
「僕もです!ルーナさんは大切な仲間です!ルーナさんを救うためなら僕も何処にでも行きます!」
「ありがとう、葵ちゃん!」
見たところ、それらしき店は5軒ほどある。そこをしらみ潰しに確認していくしかない。
ここも手分けして確認したいが、流石にお互い一人は危ないので、一緒に回る事にした。
「まずはここから行ってみよう!」
周りの人には予め洗脳を施し、無抵抗にさせた。
姫那が悪魔とか人間とか関係なく洗脳をかけたのだ。
あのお人好しの姫那がだ。これだけで姫那がどれほど本気でどれほど怒っているのかが葵には伝わった。
そして葵にはさっきから少し気がかりだった事があった。
「姫那さん!僕もいますからね!いつでも頼ってくださいよ!」
「もちろんだよ!どうしたの急に?」
「なんか姫那さんがいつもと違う気がして、、ちゃんと僕がいる事も忘れないでほしいなって」
姫那は葵が言っている事の意味や落ち着きましょうと言われた事の理由が今わかった。
「葵ちゃん、ごめん。私周りが全然見えてなかったよ。ルーナを早く助けないといけないって思って独りよがりになってたよ。ごめんね、、」
「全然独りよがりなんかじゃないですよ!さっきだって僕の意見も聞いてくれましたし!ただ、僕もいつでも力になる、それだけは忘れないでほしかっただけです!」
「そうだね。わかった!いっぱい葵ちゃんを頼るよ!そして一緒にルーナを取り返そう!」
「はい!三人で笑ってみんなの元に戻りましょう!」
葵に感謝しないといけない。葵に諭されずそのまま入っていたら一人で暴走して助けれるものも助けれず、最悪の結果になっていたかもしれない。
「葵ちゃん、ありがとうね!」
葵はお礼を言われて一瞬キョトンとしたが、すぐ何に対しての感謝かわかって笑顔で返した。
「絶対ルーナさんを取り戻しましょう!」
「うん!」
その頃エルサリオンも必死に夏生を探していた。
「何処行ったんだ夏生のヤロー。さっきあの場所にいたのにいきなり消えた、、そうだ、消えたんだ。走り去ったとかそんな感じじゃなかった」
エルサリオンは夏生の消え方の不自然さがどうしても気になっていた。
「もう一度消えた場所に戻ってみるか、、」
夏生が消えた場所に何か手掛かりがある気がした。というよりエルサリオンの直感が何かあると言っていたのだ。
「直感を信じて戻ってきたはいいが、何処に何があるんだ」
そんな事を考えながらふと下を見ると何かの跡が残っていた。
「これは、、なんだ?」
しゃがみこんでよく見てみる。
「魔法陣か!これは簡易転移魔法陣だ!夏生はこれで何処かに転移したのか。でも転移魔法陣なんて悪魔に扱えるのか?それに何処に転移したんだ?」
転移魔法陣を扱える悪魔がいるなら相当な脅威だ。
そもそもこれは悪魔の仕業なのだろうか?悪魔が転移魔法陣を使うという事はそれすら疑いたくなる事なのだ。
「でもこのサイズの転移魔法陣ならそれほど遠くには転移できないはずだ。飛んで上から探してみるか?いや、それは目立ちすぎるか。とりあえずさっきはあっちを探したから次はあっちを探してみるか」
姫那と葵はルーナの手掛かりを掴みルーナ奪還まであと一歩のところまできていた。
エルサリオンも少しではあるが夏生に繋がる手掛かりを見つけた。
そしてこの海底都市クルアラントにはまだ隠された秘密があるのだった。
ルーナと夏生の捜索は続く。




