EpiSodE034:消えた仲間
あれは確かに夏生の姿だった。それは間違いない。
さっきまでこの場所にいたのにいきなり消えてしまった。
そして何よりも一番気がかりなのは夏生にブレスレットが付いていた事だ。
何故夏生に付いていたのか、、万が一にも負けたなんて事は考えづらい。そうすると何か意表を突かれて手首にはめられたとしか考えられない。
「さっきここにいたのは間違いなく夏生だった。まだそれほど遠くには行ってないだろうからこの辺りを探そう。それとブレスレットを付けてない奴にはくれぐれも気を付けろよ」
「わかった!ルーナも葵ちゃんも気を付けてね!」
「わかりました!」
葵は返事をしたが、ルーナから返事が返ってこない。
「ルーナもわかった?」
・・・・・
「あれ?ルーナ?」
後ろを確認するとそこにいるのは葵だけでルーナの姿がなかった。
「葵ちゃん!ルーナは何処いったの?」
「ルーナさんならここにいるじゃないですか、、」
葵が自分の横を指さすとさっきまでそこにいたルーナがいなくなっていた。
「ルーナさん?ルーナさん!え?さっきまでここにいたのに!」
「エリー!ルーナがいなくなっちゃったよ!」
「なんだと!?いきなりいなくなったのか?何か声とかしなかったのか?」
「何もしなかったよ!突然いなくなったんだよ!どうしよう、、」
「すみません、僕のせいです。隣にいたのにいなくなった事に全く気付けなくて、、」
「いや、葵のせいじゃない。この人混みからいなくなったらなかなか気付けないだろうし、誰の責任でもない。そんな事よりもルーナを見つけないと。こんな街でルーナを一人にしておくわけにはいかない」
「うん!1秒でも早く見つけてあげなくちゃ!」
夏生に続き、ルーナもいなくなってしまった。
今姫那達に何かが起こっている。それが何によるものなのかエルサリオンはもちろん、姫那や葵も薄々気付いていた。
「これって絶対悪魔の仕業だよね?」
「そうだな。夏生がブレスレットをしていたのも悪魔に騙し討ちか何かにあったんだろう」
エルサリオンは悩んでいた。
いなくなったのは夏生とルーナの二人。それを手分けせずに探していたら見つけるのも遅くなって効率が悪い。
だが、手分けしてもし姫那や葵もいなくなったら元も子もない。別行動は絶対に危険だ。でも一刻も早く二人を見つけて救わないといけない。
この矛盾の中、エルサリオンの判断力をもってしてもどうしたらいいかわからなかった。
決断できずにいたエルサリオンに対して姫那が話しかける。
「エリー!手分けして探そう!このままじゃ見つけるのが遅くなっちゃうし、早くしないと二人が危ない!」
「だが二手に分かれて探すのは危険だから、、」
「大丈夫!エリーは私と葵ちゃんの心配をしてくれてるんでしょ?私達なら大丈夫!いざとなったらギフト使うし!」
いつになく真剣な顔でエルサリオンに訴えかける姫那。
その本気の眼差しをエルサリオンも信じないという選択肢はなかった。
「わかった。そこまで言うならお前を信じるよ。じゃあ、俺は一人で大丈夫だから姫那は葵と一緒に探してくれ。絶対に深追いはするなよ。それとルーナぐらいの体格なら多分担がれて連れ去られてると思うから、目立っているはずだ」
「わかった!絶対見つけるから私に任せて!」
何故だろうか。こういう時の姫那が言う『任せて』は根拠も何もないのだが、何故か任せたくなる。信じたくなる。
これはもしかして自分も洗脳されてるのかと思ってしまう程であった。
「姫那、俺の事洗脳してるか?」
「何言ってるの?してるわけないじゃん!」
「だよな」
一応確認してみたが当然してなかった。
姫那にバカじゃないのというような顔で見られたが、それは当たり前の反応だと思ったのだった。
「じゃあ私達はこっちを探すからエリーはそっちを探してね!」
「わかった。本当に無理はするなよ」
「わかってるって!」
「集合場所はここにしよう。街の中心部だし一番わかりやすい」
「了解!」
そして二手に分かれて捜索を開始したその頃、、
(、、、私眠っちゃってたの?何も見えない。ここはどこ?)
ルーナは悪魔に捕まり、眠らされて何処かに運ばれている途中だった。
「こいつは何処に持っていく?」
「女だからあそこにするか」
「あそこか。まだ子供だがあそこでいいのか?」
「子供だが顔はいいし、喜んでくれるだろう」
(待って!私何処に連れて行かれるの?喜ぶ?誰が?やばそうな臭いがめちゃくちゃするんですけど!ギフトで逃げよう!)
ルーナがギフトで飛空を使おうとするが、発動しない。
(ギフトが使えない?なんで飛べないの?)
目隠しされ、口も塞がれ、ギフトも使えない。所謂絶体絶命の状態だった。
(どうしよどうしよどうしよー!思いっきり暴れて逃げる?絶対無理だ!しかもこの人達って多分悪魔だよね?ギフトも使えない状態で悪魔に勝てるわけない!やばい!本当にやばい!)
そしてルーナは悪魔に担がれたまま何処かの建物に連れてこられた。
「今回は子供か?子供は厳しいんじゃないか?」
「子供だが、顔はいい。きっと役に立つはずだ。上手く使ってくれ」
(私何処に連れてこられたの?なんかすごいいい匂いがするけど、、)
ルーナを運んでいた二人は去っていった。
「う、眩しい!」
「なんだ起きていたのか。おはよう」
そこにいたのはスーツを着てピシッとした男性だった。
「ここは、、何処?」
「ここはこれからお前が働く場所だよ。嬉しいだろ?」
ずっと目隠しをされていたから目が慣れるまで少し時間がかかったが、徐々に辺りが見えてきた。
そこはルーナには初めて見る光景で、すごく華やかで煌びやかな場所だった。
「働く場所?どういう事?」
「お前はこれから一生ここで働くんだよ。奴隷としてな」
「奴隷?なんで私が、、」
「なんでって、それはお前が悪魔じゃないからだよ。理由なんてそれで十分だ」
「何よその理不尽な理由!」
「人間風情がこの悪魔様に口答えをするな!」
悪魔はそういうとルーナを殴った。
「痛っ!何すんのよ!」
「口答えをするなと言っているだろうが!」
そしてまたルーナを殴った。
「痛い!」
「お前は悪魔に使われるだけが存在意義なんだ。それを理解しろ。次に口答えをしたら処分するからな」
処分する。それは間違いなく殺されるという意味で悪魔の殺すというのは食す事だとすぐに理解した。
「それとこれからお前はこの店の従業員だ。敬語を使え」
ルーナは怯えて震えていた。
でも今は何をしても悪魔を倒す事もここから脱出する事もできない。だから今は悪魔に従うしかなかった。
「はい、、わかりました」
「物分かりがいいじゃないか。じゃあ、早速仕事を教えるから裏で着替えてこい」
店の裏に行くとドレスのような綺麗な衣装があった。
「なんなのここ。なんの店なの?怖いよ、、助けて、お姉ちゃん、、」
ルーナは泣いて姫那に助けを求めていた。その頃姫那達も必死に街を駆けずり回っていた。
ルーナは奴隷として捕らえられた。
このピンチに姫那は救出する事ができるのか?




