EpiSodE029:影の正体
姫那とルーナが空から見た影はなんだったのか。二人の頭では見当もつかなかったので、とりあえず降りてみんなに相談する事にした。
「あ!降りてきましたよ!」
「やっとか。どれだけ高くまで上がってたんだよ」
「何か収穫があるといいけどな」
「みんなー!ただいまー!」
「ただいまー!」
姫那とルーナが降りてきて、みんなに空から見えた事について話す。
「上から見たらなんか島の周りに影みたいなのがあったんだ!」
「島の周りに影?それは島の下、海の中って事か?」
「そうだよ!私とルーナだけじゃ何が何だか全くわからなかったからみんなに相談しようってなって、降りてきたんだけど、どう思う?」
「海の中に影、、そこじゃないか?」
「あぁ、俺もそう思う」
夏生とエルサリオンはある程度の予測はできたようだ。
「そこってどういう事?」
「そこが看板が示す【最深部】なんだよ。たぶん」
「じゃあ、この島の下に悪魔がいて、それを討伐しないといけないって事?」
「そういう事になるな」
「えー!だって海の底だよ!?どうやってそんなとこに行くの?」
「それはまだわからん。これから行く方法を探るしかないな」
姫那に夏生とエルサリオンが行き着いた予測を夏生が話すが、夏生自身まだわからない事だらけなのだ。
「でもどうやってそれを調べたらいいんですかね?」
「そうだなー。ちょっともう一度俺が上から見てみようか。また別の手掛かりが見つかるかもしれないからな」
「俺も連れて行ってくれ。上から見てみたい」
「言うと思ったよ。よし行こう」
夏生とエルサリオンが姫那とルーナには見つからなかった手掛かりを何か見つけれるか確認のために二人でもう一度空に飛んで確認する事にした。
「なんだー!夏生も飛んでる気分をもっと味わいたかったの?それなら先に言ってくれたら変わったのにー!」
「お前と一緒にするな!俺は手掛かりを見つけに飛ぶんだ!」
「何遊んでるんだ早く行くぞ」
「遊んでねぇよ!」
四方八方からイジられる夏生を見てルーナも葵も面白くて笑っている。
「じゃあ行ってくるから、お前らここでじっとしてろよ」
「はーい!」
すごい適当な返事でじっとしてなさそうな返事だと思った夏生とエルサリオンであった。
そして二人は上空に飛び立った。
「お前こんなに高く飛べるのか。すげぇな」
「まだ高くいけるぞ」
「下もよく見えるし、ここで大丈夫だ」
「怖いのか?」
「なんでそうなるんだよ!お前今日なんかおかしくないか?」
「何がおかしいんだ?」
「エリー、やっぱりお前姫那に毒されてきてるぞ」
「はは、毒されて悪い気もしないな」
「まじかよ、、」
今の言葉に夏生は驚きを隠せなかった。
あのエルサリオンから姫那に毒されてると言われても悪い気はしないなんて言葉が出てくるなんて。
「大丈夫か?エリー。姫那に洗脳かけられてんじゃないか?」
「かけられてない。それよりも下を見ろ。島の周りに姫那達が言ってた影があるぞ」
話が脱線し過ぎたので元に戻すエルサリオン。
「、、、あぁ。そうだな」
話を元に戻されたが、頭が元に戻らない夏生であった。
「まぁエリーの話は後でゆっくりするとして、なんか影が濃い場所と薄い場所があるな」
「なんの話をするんだよ。薄いと言うか、何か見えないか?」
「お前には何か見えるのか?エリー」
「何か建物?みたいな何かがある」
「俺には何も見えない、、お前すげぇ目がいいんだな」
「まぁこれは種族の恩恵のような物だ。エルフはみんな目がいいんだよ」
エルサリオンは直感もさることながら、視力も人間の数倍はあるのだ。
これはエルフが使う主要武器が弓矢だからだ。
弓矢は狙いを定めて遠くの獲物を射抜く必要があり、数十メートル先の対象物を凝視する。そのため必然的に視力や動体視力は人並みはずれているのだ。
そしてエルサリオンはエルフの中でも弓の腕はズバ抜けていて、数キロ先の獲物の心臓をも射抜くことができる。
「で、その建物のような物がある事を踏まえてどう思う?エリー」
「この推測は通常あり得ない推測になるが、この島の下に街があると思う。謂わば、【海底都市】が存在する」
「俺も同じ推測だ。しかもこの島より明らかに大きい海底都市があるって事だ。そしてそこに悪魔がいて、この4階層はそれを討伐するのがクリア条件って事だよな」
夏生とエルサリオンの推測が正しければ看板に書いていた最深部とは海の底にある海底都市がその場所という事になる。
ただ、二人にはまだ腑に落ちない事があったが、とりあえず二人が見て推測した内容をみんなに話す事にし、地上に降りた。
「え?下に街がある?それどういう事なの!?」
「そんな事あり得るんですか!?」
「海の底の街なんて聞いた事も見た事もないよ夏にぃ!」
姫那含め、全員が驚く。
「まぁまぁ少し落ち着け。まずお前らの概念から変えないといけないな。俺も異世界転生してきて最初はそんな事ありえないだろとかよく思っていた。だがこのダンジョンでは何が起こっても不思議じゃない。そんな事は現実ではあり得ないと思う事自体が間違っているんだ。そうだろエリー?」
「そうだ。お前らがいた世界とこの世界の概念を一緒にしてはいけない。お前らがあり得ないと思っている事もこの世界の人間には普通の事なのだから。尤も、俺にも海底都市があるのは信じられない事実だがな」
ここは日本でもないし、アメリカでもないし、地球ですらない。
それならば自分が持っていた常識という固定概念を捨てる事がこのダンジョンを攻略する一つの鍵になってくるのだ。
「確かにそうだよね!エリー、前にも前の世界の常識は捨てろって言ってたもんね!」
「そういう事だ」
「お姉ちゃん、切り替え早いな〜!よし、私もお姉ちゃんを見習おう!ね、葵ちゃん!」
「そうですね!僕も頭のスイッチ切り替えます!」
全員が海底都市が存在するという意見で一致した。
「でも一つ気になるのが、そこに悪魔がいたとして、どうやって生きているんでしょうか?海の中だから空気も無いとは思いますが、、」
「そう、そこなんだよ。葵お前やっぱり勘が鋭いな。俺とエリーもそこが気になってたんだよ」
「いえ、ありがとうございます!」
少し顔を赤く染めて照れる葵。
「か、可愛い〜!」
「やめてくださいよ姫那さん〜!」
そんな葵が可愛すぎて、男だという事を忘れてるのか、姫那が抱きつく。
「じゃあ、どうやって海に生息しているのかだが、何かわかるか?そこの変態二人」
「なんで僕まで変態扱いされてるんですかー!それとほんともう離れてくださいってば姫那さんー!」
「なんでよー!いいじゃんー!」
「今こいつらは使えないな」
「元々水の中で生活してる悪魔とかじゃないかな?」
珍しくルーナが的を射た発言をする。
「そうなんだ。それが一番可能性が高い。そしてもう一つ。下に空気があるか、だ」
「海の中に空気か。そんな事があるのか、と言いたいところだが、さっきそれを否定したばかりだからな。どんな可能性も捨てずにいこう」
「まずはそこにどうやっていくかを見つけようか」
悪魔の居場所の推測はできた。
そして海底への行き方を見つける事はできるのだろうか。
夏生やエルサリオンの予測通りに海底都市はあるのだろうか。




