EpiSodE025:二人の償い
レストランを出てしばらく歩くと明らかに不自然な場所に壁と一体化した石の扉があった。
「なんでこんなところに扉があるんだ?ここに扉があっても誰も使わないだろう。それに目的がないと扉なんて作らないだろ。なんのために作られたんだろう」
「でもこの扉なんか変じゃない?」
「確かに扉にしては何か雑な作りだな。元々あったというか後から作ったような感じがする」
しっかり隙間を埋めた扉じゃなく、扉の縁もガタガタで見つからないように出る為か、若しくは入る為に作った即席の扉のようだ。
「僕がここに来たのが一週間くらい前で、それよりも前からこの扉はありましたよ!」
「まぁ今そんな事考えていても答えには辿り着けないだろうし、俺達はこの扉をありがたく使わせてもらおう」
この街にはもう戻ってくる事はない。夏生は先に進む事しか考えていなかった。
扉の向こうに看板がある保証はない。元々あったとしてももう魔物に喰われているかもしれない。
ただ、今の手掛かりは葵が見た看板だけ。少しでも可能性があるならそれに縋るしかない。
そして扉を開けた。
そこは予想通りというか当たり前なのだが、あたり一面が砂漠だった。
「はぁ。この美味しい食べ物があって柔らかいベッドがある街とももうお別れか、、」
「悪魔の街だぞ?こんな街早く出ていった方がいい。またいつ悪魔が集まるかわからないしな」
「そうだけど〜」
姫那が感傷に浸っていると、エルサリオンが呆れた顔で言う。
そして砂漠に出ると案の定魔物がいた。
「入ってきた時と一緒で魔物がいっぱいいるね〜!お姉ちゃん、また私達が飛んでやっつけちゃおうよ!」
「ちょっと待ってくれ!ここは俺たちにやらせてくれ」
そう言って夏生とエルサリオンが前に出た。
「この数を二人で大丈夫なの?」
姫那が心配したその瞬間、夏生の龍刃とエルサリオンの暴風矢が炸裂し、大量にいた魔物を半分に減らした。
「大丈夫だ。そうだろ?エリー」
「全く問題ない」
そして10分もしない内に前にいた魔物は全ていなくなった。
「すごい!あんなにいっぱいいたのにもういなくなっちゃった!」
「僕もびっくりしました!お二人がこんなに強いなんて!」
夏生とエルサリオンはやはり忘れられてはいなかった。グレモリー戦で自分達が何もできていなかった事を。
姫那や他の人に認めてもらいたいとかそういった事じゃない。自分が自分の事を認められなかった。
だから今回の魔物討伐は誰かに手伝ってもらうのではなく、自分達だけで討伐する必要があったのだ。
そしてこれは夏生とエルサリオンなりの償いでもあった。
「今回はとりあえずこれでチャラって事でいいか?」
夏生が姫那に問いかける。
「え?何が?」
「やっぱり何もねぇよ」
言ってはみたが、姫那には何のことか全くわかってなかった。
「あっちに看板があるよ!砂丘を一つ越えたところにある!」
ルーナが上空から遠くを見て先の方を指差して叫んだ。
「よかった!看板あったね!」
「はい!」
葵が笑顔で答える。
「よし、行こう」
看板に着くまで魔物が襲ってきたが、全て夏生とエルサリオンが討伐した。
「私達何もやってないね!」
「そうですね、、いいんでしょうか?夏生さんとエリーさんに任せて」
「いいんだよ!夏生とエリーが自分達がやるって言ってるんだから!そうだよね?お姉ちゃん!」
「まぁあの感じみてても手伝う必要もなさそうだし、二人もなんか楽しそうだしいいんじゃない?」
償いのつもりで二人で戦っていたのだが、だんだん戦う事が楽しくなってきて、二人とも笑いながら討伐をしていた。
「なんかお二人が悪魔に見えてきました、、」
葵がそんな姿を見て少し恐怖を覚えたが、その反面すごく頼もしくも感じていた。
「ある意味悪魔よりも悪魔っぽいかもね!」
笑いながら笑い事ではないような事を言う姫那であった。
「お前達、何話してるんだ?」
「何にもないよー!夏生とエリーがすごねって話してただけー!」
「なんか怪しいな。まぁいいけど遅いぞ。ちゃんと着いてこいよ」
「はーい!」
夏生とエルサリオンに少し聞こえてたみたいだが、誤魔化す姫那達。
そして、話をしている内についに看板まで辿り着いた。
「やっと着いたね!何もしないで歩くのも逆に疲れちゃった!」
「そう言われればそうですね。でも夏生さんとエリーさんはもっと疲れてますよね!ありがとうございます!」
「全部夏にぃとエリーがやってくれたもんねー!ありがとねー!」
夏生がルーナの呼び方に反応した。
「ん?夏にぃ?」
「うん!夏生もお兄ちゃんみたいだから夏にぃって呼ぶ事にした!いいでしょ!」
「まぁ別にいいけどよぉ」
どことなく少し嬉しそうな顔をしていた夏生に姫那がニヤニヤしながら肩に手を置く。
「よかったね!夏生!」
「何がだよ!それよりも今はこの看板の方が大事だろ!」
恥ずかしくなった夏生は姫那の手を払って話題を変えた。
「エリー、なんて書いてあるんだ?」
「戻らないといけない」
「え?何処に戻るの?」
「あの街にだよ」
「え?せっかくここまで来たのになんで戻るんだよ!」
「転移陣があの街にあるんだよ!この看板にはそう書いてある」
「まじかよ、、結局あの街が全ての元凶で解決する場所だったって事かよ」
「まぁでも看板にそう書いてあるなら仕方ないよね!アボリジャバロに戻ろっか!」
「お前、街の名前を覚えるくらいあの街が好きだったのかよ」
姫那はアボリジャバロで起きた事を忘れているかのようにニヤけるのを抑えられないような顔をしている。
「だって美味しい食べ物いっぱいあるじゃん!」
「もう寄り道はしないぞ。街に着いたらすぐ転移陣を見つけ出して4階層にいく」
「えー!なんでー!!」
「当たり前だろ。おそらく転移陣は教会のどこかにあるだろうからな」
姫那は少しふてくされていたが他のみんなは満場一致で夏生が正しいと思っていたのだった。
そして来た時と同じように夏生とエルサリオンが先陣を切って魔物を倒しながら進み、扉の前まで来た。
「もう戻ってくる事はないって言ってたのにな。こんな早く戻ってくるとは」
「一応警戒して入らないとな」
全員がエルサリオンの言葉を肝に銘じて入るが、そこは出た時と同じ景色だった。
「誰もいないね!みんなお腹空かない?」
姫那の問いかけにみんな返答に困っていた。何故ならお腹が空いていたからだ。
特に夏生とエルサリオンは魔物とずっと戦っていたから他よりも減っていた。
「私お腹空いたー!何か食べようよ!」
他の全員が待ってました!と言わんばかりの顔をしている。
そして一番この中で言っても不自然じゃないルーナが言った事によって全てが丸く収まるのだ。
「仕方ないな。じゃあ食べたらすぐ行くぞ」
「やったー!」
結局姫那達のお決まりのレストランに行って食事を済ませた。
「なんだかんだで夏生とエリーが一番食べてたじゃん!実はお腹減ってたんでしょー?」
「俺はいつもあれくらい食べる」
「そうだっけ?まぁいっか!お腹いっぱい食べれたし!」
なんとか面子を保てた夏生であった。
そして教会に到着した。
グレモリーを倒した後はすぐに教会を出たから地下と一階部分しか見てないのだ。
「転移陣があるとしたら上の階だな。手分けして探そう」
ーーーー10分後
「ありました!皆さんこっちです!」
転移陣は葵が二階のバルコニーのようなところにあった。
「意外と早く見つかったな。もっとわかりにくいところにあると思ったんだが」
「グレモリーを倒した時にもうこの転移陣は出現していたんだ。看板の条件は【歓迎の街・アボリジャバロの最上位悪魔を討伐する事】だった。逆に倒せなかったら出てこなかったんだ」
「なるほどね。それにしてもこの階層は葵におんぶに抱っこだったな」
「ほんとに!葵ちゃんすごいよ!」
「僕なんて全然ですよ!転移陣を見つけたのもたまたまですし、皆さんの方がすごいです!」
「何はともあれこれで4階層に行けるな」
「うん!行こう!4階層へ!」
ついに3階層を攻略した姫那一行。
次の4階層に何が待ち受けているのだろうか。
3階層攻略!
次の4階層はどんなところなのでしょうか、、




