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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE022:葵の真実とギフト

 姫那の機転によってグレモリーにナイフを刺すことができた。

 グレモリーは血を吐いて倒れる。


 「人間のくせにやるじゃない。味方すら騙すその作戦、流石の私も虚をつかれたわ。でも私も負けるわけにはいかない」


 重傷を負ったにもかかわらず、刺されたところの傷が少しずつ塞がっていく。


 「え?なんで傷が塞がっていってるの?」

 「治癒の黒魔術よ。あなたに魔術が効かなくても自分の傷を塞ぐくらいできるのよ」


 グレモリーの黒魔術も汎用性はものすごく高い。

 だが、治癒の黒魔術は完全治癒の魔術ではなく、あくまでも傷が塞がるだけで痛みなどは消えないのだ。

 それを姫那達に気付かれないようにしようと必死に普通の表情で振る舞う。

 しかし、一つだけ表情だけでは騙せない事があった。夏生達にかけている黒魔術だ。

 グレモリー自身が弱っている為、魔術の効果も弱くなるのは当然の事。

 それは姫那がナイフを刺した時にみんな感じた事で、今もその力は変わっていない。

 という事は外傷だけ癒えただけで、それ以外のダメージは残っているとわかる。


 「姫那、グレモリーのダメージは残ってるぞ。俺達にかけてる黒魔術が弱ってるのがその証拠だ」

 「ほんとだ!みんな立ててるじゃん!」

 「流石にバレたわね。でも完全に魔術が解けたわけではないし、あなた達は全員立つ事が精一杯のはず。そしてこの子じゃ今の私にも勝てない。私は一度もらった攻撃は通用しないしね」


 さっきの姫那の攻撃はグレモリーの意表を突く攻撃だった。

 だがもうそれも通用しない。

 グレモリーも姫那もどちらも決定打が見出さないでいた。


 「姫那!こっちきて俺の体に触れろ!」

 「え?どういう事?」


 今度は逆に夏生がいきなり意味のわからない事を言ってきて姫那が戸惑う。


 「こっちに来てどこでもいいから俺に触れてくれ!」

 「よくわからないけど、わかった!」


 ポン


 姫那が夏生の頭の上に手を置く。


 「なんで頭なんだよ!普通肩とかだろ!」


 恥ずかしいのか、少し顔が赤くなっている。


 「どこでもいいって言ったじゃん!」

 「そうだけど!、、まぁいい。でも、やっぱり思った通りだ。姫那に触れられていればグレモリーの黒魔術も無効化できる!」

 「え、なんで私そんな事できるの?自分でもそんな事知らなかったんだけど!」

 「さっきお前にナイフを渡した時手が触れただろ。その時一瞬だけ体が正常に戻った気がしたんだ。それでもしやと思ってな」


 それは2階層の出来事にまで遡る。

 姫那がエルフの街を見つけた時、夏生は見つけられなかった。それはさっきのグレモリーの黒魔術にかからなかったように、姫那にはそういった魔法や魔術は無効化してしまうからだ。

 そしてエルフの街を夏生が視認できたのは姫那が夏生に触れた事によって見えるようになった。

 これは夏生も姫那のギフトの恩恵を受けたという事だ。

 姫那のギフトは触れている相手にも影響をもたらすギフトだったのだ。

 それを夏生は忘れておらず、姫那と手が触れた時にこの黒魔術も同じ要領で無効化できるのではないかという考えに至ったのだ。

 そしてそれは正解だった。姫那に触れられてる以上、グレモリーの黒魔術は全く意味をなさない。


 「そうだったんだ!夏生すごい!」

 「すごいのはお前のギフトだよ。何でもありじゃねぇか」


 一方、グレモリーは何が起きたのかわからず焦っていた。

 さっきまで地面を這いつくばっていた人間が今はピンピンしている。意味がわからない。


 「なぜあなたが立っていられるの?私の黒魔術はまだ効果は切れてないはず。なのに何故?」


 声からしても混乱してるのは一目瞭然だった。


 「確かについさっきまではかかっていたが、こいつのお陰で今は全く効いていない」


 グレモリーは姫那に目をやる。

 姫那のギフトとグレモリーの黒魔術は能力の系統が似ている。

 お互いに洗脳を得意とする能力だ。だがそこには違いが多く存在する。

 もちろんグレモリーの黒魔術も上級魔術である。実際、砂漠の魔物を操っていたのもこのグレモリーの黒魔術だ。

 ただ、姫那のギフトはそれの上をいく。

 グレモリー同様操る事はできるのに加え、無意識で自分にかけられる洗脳や身体的影響を無効化できて、それを触れてる相手に付与する事も可能だ。

 簡単に言えば姫那はグレモリーの完全上位互換と言える。


 「なんなのよもう!私とは行使できる力の幅が桁違いじゃない!でも、それでもあなた達に私が倒せるかしら?」


 怪我をしているとはいえ、勝てるかどうかわからない。

 夏生は最初に龍刃を撃った。しかも不意打ちでだ。

 それを受けても傷一つ付かなかったのだ。来るとわかっている攻撃に対してダメージを負うとは考えにくい。

 それでも撃つしかなかった。


『龍刃・双』


 「さっきそれは効かなかったでしょう。同じ物を二発撃とうが一緒よ」


 やはり通用しなかった。

 これ以上威力を出せる技が今はない。どうしたら倒せるのかがわからない。


 「俺の技でもあれは倒せなさそうだな。圧倒的威力不足だな」


 エルサリオンの魔法は対単体に対しては不向きな魔法であった。


 「姫那さん!()に触れて下さい!」


 叫んだのは葵だった。

 少し違和感を感じたが、今はそんな事気にしている暇はない。


 「わかった!」


 葵のところに行き葵に触れた。


 「本当だ!全く立てなかったのに普通に立てるようになった!すごいですね、姫那さん!」

 「それで、これからどうするの?葵ちゃん!」

 「能力を使います!この場所ならまだ使えそうですし!」


 あの通路では使えないと言っていた葵がギフトを使おうとしていた。


 「葵ちゃんのギフトでグレモリー倒せるの?」

 「わからないですけど、やってみる価値はあると思います!」

 「どんなギフトなの?」

 「僕のは、、」


 葵がギフトを使うと体が元の数倍大きくなったのだった。


 「なになに!なんで体がおおきくなってるの!?」

 「体を巨大化できる。これが僕の能力です!こんな能力あんな狭いところで使ったら壁が崩れちゃうんで使えなかったんです!」


 美少女のような顔を保ったまま葵は巨大化した。

 葵のギフトのすごいところは体が巨大化した事によって、身体能力も何倍にも向上するのだ。


 「いきなり大きくなっちゃったけど、それでどうするの?」


 グレモリーにあまり動揺などはなく、むしろどこから攻撃が来てもいいように身構えている。


 「デカすぎるだろ。人間かよ、ほんとに」


 夏生は人間じゃなくて巨人族か何かじゃないかと思った。

 そして巨大化した葵の攻撃は至極単純。巨大な拳から繰り出されるパンチだ。

 ただ、このパンチの威力が桁違いなのだ。

 グレモリーは完全な防御体勢とっていたが、それを物ともせずグレモリーの後ろの教会の壁まで破壊した。

 グレモリーは全く動けない状態で仰向けで倒れていた。


 「何この威力!葵ちゃんすごい!女の子なのに!」

 「ありがとうございます!でもずっと言おうと思ってたんですけど、僕男の子ですよ?」

 「またまた〜!そんな綺麗な美少女のような顔してるのに男の子なわけないじゃん〜!」


 無言で訴える葵。


 「もしかして本当に男の子なの?」

 「男の子です!」

 「嘘ー!信じられない!」


 葵は実は男性だった。

 姫那は全く信じられないと言った表情で、まだ半信半疑だ。


 「まさか力技で負けるとはね。ここまでの威力は想定外だったわ」


 グレモリーは今まで黒魔術の防御壁を破られた事はなかった。

 それが今日は破られた。しかも2回。

 最初は策に嵌められて、次は力尽くで破られたのだ。

 これはもうグレモリーの完全敗北である。


 「グレモリー。あなたが悪魔じゃなかったら友達になれたのに、、」

 「フフ。でも私は悪魔よ。友達にはなれないわね、姫那」


 姫那の目には涙が溜まっていた。


 「そろそろお別れね」


 そう言ってグレモリーは消えていった。

 すると、グレモリーにかけられていた黒魔術もグレモリーが消えると同時に解除されたのだった。


 「やっと自由に動けるようになったな」

 「それだけグレモリーの黒魔術が強力だったって事だな」


 今回は全て姫那と葵に持っていかれて、他は全く活躍する事が出来なかった。

 夏生とエルサリオンは自分の力の無さに落胆していた。

 そして出口を探すまでもなく葵があけた大きな穴からそれぞれの思いで教会を後にするのであった。

葵の圧倒的破壊力のギフトでグレモリーを撃破。

3階層クライマックスに入ります。

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