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この迷宮を攻略するには何が必要ですか?  作者: シュトローム
第一章 迷宮攻略・故郷奪還編
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EpiSodE018:悪魔の企みと心の変化

 今やっと夏生とエルサリオンが抱えていた違和感の点と点が繋がって線になった。

 この街の住人は全員悪魔で悪魔は人間の肉を最上のご馳走としている。だから異世界人を油断させて捉えているのだと。


 「そういう事だったのか。じゃあ昨日この教会から姫那が聞こえた声ってゆうのも俺達と同郷の人の声だったって事か」

 「そうか。やはりお前達は何か気付いていたか。宿屋の店主から今日ここに来ると聞いた時に何かあると思ったよ。まぁ来たところでお前達に助ける事はできないだろうがな」

 「なんで姫那達だけ別で監禁されているんだ?」


 何故自分達と姫那達が別々になっているのかエルサリオンが単刀直入に聞く。


 「エルフ。お前はついでと言っただろう。お前の質問に答える気はない」

 「頼む、教えてくれ。教えてくれたら俺の指をやる。人間の肉だ。お前達のご馳走だろ?」

 「おい!夏生!!」


 夏生のいきなりの発言にエルサリオンも目を見開く。


 「仕方ないだろ。こうでもしないと何も聞けない。指の一本くらいくれてやる」

 「お前の肉をくれるのか?人間。本当か?」

 「あぁ、本当だ」

 「よし、じゃあ教えてやろう。人間の肉の中でもランクが分かれている。若い人間の肉が一番良い。そして女だ。女の若い人間の肉こそが最高に美味で最上級のご馳走なのだ。だからあの二人は別のところで大切に保管しているのだ」


 とろけそうな顔で悪魔が人間の肉について語っている。

 それは人間である夏生からみたらおぞましい姿で、悪魔は人間の事を餌としてしか見ていないという事がわかった。


 「さぁ話したぞ。お前の指を喰べていいか?」

 「そうだな、約束だからな。ほらよ」


 後ろで縛られている手を悪魔の方に向けて差し出した。

 すると悪魔は涎を垂らして飛びついてきた。


 グサッ


 「あがっ!き、貴様!」


 悪魔の喉に剣が突き刺さっている。


 「そう簡単に大切な指をやるかよ」


 夏生は作戦勝ちをした。

 悪魔が人間の肉をご馳走と思っている事を逆手に取り自分の肉を差し出すと条件を付けて情報まで聞き出し、指を喰べにきた瞬間剣を創造したのだ。


 「くそっ!俺がこんなところで、、」


 サラサラ、、


 喉を刺された悪魔は灰になり消えていった。


 「すごい作戦だったけど、流石にヒヤヒヤしたよ。本当に指をあげるんじゃないかって」

 「誰がこんな奴らにあげるかよ。こんな奴らにあげるくらいなら自分で食いちぎる」


 エルサリオンはそれはそれでどうかとも思ったが言わないようにした。

 そして互いの拘束具を切断した。


 「とりあえず姫那達を助けに行かないとな。正直いつまでもつかもわからない」


 人間の肉の中でも最上級と言われる若い女の肉がいつまでも食べられないとは考えにくい。

 一刻も早く救出しなければならない。


 「そうだな。この教会のどこかにいるはずだから、まずはあの階段を登って二階を探してみるか」


 下をずっと見つめている夏生。


 「どうした?夏生」

 「なぁエリー、これめちゃくちゃ怪しくないか?」


 先程悪魔が立っていた辺りの床に扉のようなものがある。


 「確かに怪しい。でもさっきまではこんな物なかったよな?」

 「あぁ、悪魔が俺の指を喰べようと飛びついた拍子に絨毯がめくれて見えたんだ」

 「あーなるほど」


 こんなに間抜けな悪魔に罠に嵌められた自分達はどれだけ間抜けなのだと少し恥ずかしくなったのだった。

 そして床下の扉を開けると下へ続く階段があった。


 「ビンゴだな。この下は怪しい臭いがプンプンするぞ」

 「俺の直感もそう言っている」


 二人は2階へは行かず、床下に隠されていた階段の方へ降りていった。

 下へ降り切ると、火がついた松明が壁にかけられ、導かれるように長い一本道が続いていた。


 「これも罠とかじゃないよな?」

 「罠であったとしても行かないわけにはいかないだろう?」

 「まぁそうなんだけど。今回は2階層の時と違って相手の悪魔は俺達の手の内を知っている。そして逆に俺達は相手の力を知らない。圧倒的に向こうにアドバンテージがあるな」

 「確かにそうだが、だからと言って負けると思うか?」

 「いーや、全く負ける気がしない」

 「俺もだ」


 夏生もエルサリオンも戦いを見られていた事を気にしていない。むしろこっちの手の内を知っていてイーブンだと思っている。

 何故ならそれくらい二人は今の自分に自信があるからだ。

 そして理由はもう一つある。それは姫那とルーナだ。

 仲間である二人を攫って監禁して、喰べようとしている悪魔に対して今までにないくらい怒っているからだ。

 それは叫ぶような怒りではなく、心の中で燃えたぎるような怒り。

 夏生とエルサリオンはたとえ悪魔が許しを乞うてきても許すつもりはない。


 「ただ、一つの懸念としては俺らのギフトを知っているなら姫那とルーナのギフトも知っているはず。ルーナはともかく姫那のギフトを抑える何かがあるのならそれには気を付けないといけないな」

 「抑える何かがある可能性は高いな。じゃないと姫那のギフトを知ってて攫ったりはしないだろうし」

 「そうだよな。まぁでも今考えてても見当もつかないし、とりあえず助けようぜ」


 そして地下道を進んでいると、鉄格子の牢屋みたいなものが現れた。


 「これ、牢屋だよな?」

 「あぁ。でも誰もいないぞ」


 牢屋には誰もおらず、鍵も開いていた。

 よく牢屋の中を見てみると血のようなものが飛び散っているのが見えた。


 「俺が中の確認をするからエリーは外を見張っててくれ」

 「わかった」


 中を確認してた、やはり血の跡だった。

 そしてこの血は人間の血だと言われなくてもわかる。

 夏生はやるせない怒りを感じた。


 「やっぱり血だったが、姫那達のものじゃない」

 「なんでわかったんだ?」

 「血が固まって完全に乾いていた。俺らが運ばれたのは今日の朝だから血が固まるにはまだ早すぎる」

 「なるほど、なら良かった」

 「良くなんかねぇよ!」


 夏生が叫んだ。

 普段感情を表に出さない夏生が感情的になっている事にエルサリオンは驚いた。


 「この固まった血は人間の血だ。そしてここにいないって事はもう悪魔どもに喰われたって事だ。それのどこが良いんだよ!」

 「夏生、落ち着け。言葉の綾だ」


 夏生もそれはわかっている。わかっているがこの状況を見て感情を抑えられなかったのだ。


 「くそっ!すまん、エリー。お前に当たっても何も変わらないのに」

 「気にするな。俺も怒る気持ちはお前と一緒だ。こんな残酷な事をする悪魔を許せない」


 ここで夏生はふと思った。

 エルサリオンはエルフの為に怒っているのではなく、人間の為に怒っているのだと。

 それを知って少し嬉しくなった。


 「次は何笑ってんだよ」

 「なんでもねぇよ!ほらいくぞ、エリー!」

 「なんだよ、よくわからん奴だな」

夏生とエルサリオンは攫われた姫那達を救う事はできるのか。

そしてエルサリオンの心の変化にも注目!

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