EpiSodE016:嵐の前の静けさ
「おいエリー、朝だぞ」
夏生がエルサリオンを起こす。
「んぁ?もう朝か。よく寝た」
「よかったな!ベッドでぐっすり眠れて!」
結局ジャンケンに負けたのは夏生だったので、夏生はソファーで寝る羽目になった。
「夏生、お前は目の下にクマができてるぞ。あまり眠れなかったのか?」
「お前それは言っちゃダメだ」
イヤミのように言って夏生をおちょくる。
「すまんすまん。それよりも姫那達は起きてるかな?」
「声かけに行ってみるか。今日は朝から行動したいしな」
姫那達の部屋のドアをノックして呼びかける。
「姫那ー、ルーナ、起きてるかー?」
返事がない。
「おーい、起きてるかー?」
ドアを強く叩き、呼びかけるが応答がない。
そして、ドアノブを捻るとドアの鍵がかかってない。
「まさか、、姫那!ルーナ!」
何かあったのではないかと思い、夏生が勢いよく部屋に入る。
「スースー、ムニャムニャ」
姫那が腹を出してぐっすり眠っていた。よくわからないが何か寝言を言っている。
「こいつ、、紛らわしいな」
夏生はそれを見ながら安心しながら呆れている。
「夏生!どうしたの?」
ルーナが戻ってきた。
「あぁ、ルーナ。お前も無事でよかった」
「無事?どういう事?」
「いや、なんでもないよ。それよりもこいつどれだけ爆睡してるんだよ」
姫那の頬っぺたに人差し指を当てて言う。
「だよねー!私も一緒にお風呂行きたかったから起きてから何回も起こそうとしたんだけど、全く起きなくて、、もう諦めて一人でお風呂行っちゃった!」
もはや病気だろと思う夏生であった。
「ムニャムニャ。あ、ルーナ。おはよー」
「うん!お姉ちゃんおはよう!」
「夏生もいる。おはよー」
「あぁ、おはよう」
「ん?ってなんで夏生がこの部屋にいるの?乙女の部屋に勝手に入ってこないでよ!」
(どの口が乙女とか言ってんだ。寝言言いながらあんな寝方してた奴が)
と思った夏生であったが、それは言わないでおく事にした。
「ノックして呼んでも全然返事が返ってこなかったから入ったんだよ」
「私が起こしても全然起きなかったよ!お姉ちゃん!」
「え?ほんとに?全然気付かなかった!久々にベッドで寝たから気持ち良すぎたのかも!」
「いいなー、お前はベッドでぐっすり寝れて」
「なんで?ベッドで寝てないの?」
「エリーとジャンケンして負けてソファーで寝たんだよ」
「えー!ベッドで一緒に寝たらよかったのに!私とルーナは一緒に寝たよ!」
「お前達二人とはわけが違うんだよ!男二人でベッドで一緒に寝れるかよ」
そんな会話をしてる間にエルサリオンも姫那達の部屋に来た。
「何騒いでるんだ。そろそろ出発するぞ」
「ちょっと待って!私今起きたばっかりだし、お風呂に、、」
「「起きるのが遅いからだよ!」」
夏生とエルサリオン、ルーナまで一緒に突っ込んでいたのだった。
「うぅ、みんなが早過ぎるんだよ〜」
全員に突っ込まれて珍しく萎縮する。
「はぁ。お風呂くらいならまぁいいか。早く行ってこいよ」
「ありがとう!ダッシュで行ってくる!」
全速力でお風呂に向かっていった。
そして5分もせずに帰ってきた。
「お前、急ぎすぎて風呂入る前より汗かいてないか?」
「だって急いで入ってきたんだもん!」
顔を洗って拭いてないのかというくらい汗ばんでいる。
「お姉ちゃんお風呂入った意味ないじゃん!」
みんな笑いながら小馬鹿にする。
「みんな笑いすぎー!いいの!お風呂入ってサッパリしたかっただけだから!」
最近姫那はみんなにイジられてばかり。その事に納得がいかない姫那であった。
「おはようございます、皆様」
宿屋の店主が朝の挨拶にきた。
「おはようございます」
「ゆっくりお過ごし頂けましたでしょうか?」
「はい!すごく休めました!」
「喜んで頂いてよかったです。食堂で朝食もご準備していますので、是非食べて下さい」
「本当ですか?やったー!」
朝食まで用意してくれている。わからない。何故ここまでしてくれるのか。
「あのー、なんでそんなに尽くしてくれるんですか?」
「異世界人の方には感謝してもしつくせないからです。だから最上級のもてなしをしたいのです。この街の住民はみな、異世界人の方を勇者のように尊敬しております」
昨日のレストランの店員と同じ返答だ。やっぱり思い過ごしなのだろうか。
「そうですか。変なこと聞いてすみませんでした」
食堂に行くと豪勢な朝食が用意されていた。
「また朝ご飯も豪華だね〜!朝からこんなに食べれるかな」
姫那がものすごく嬉しそうにしている。
「俺たちの為にわざわざ作ってくれたんだ。美味しく頂こう」
エルサリオンも心を許しているようだ。
「そうだね!お腹いっぱい食べよう!」
「この後もう一度あの教会に行くから動ける程度にしとけよ」
「そうなの?どうして?」
「それは歩きながら話す。今は朝食を楽しもう」
「わかった!」
姫那は夏生の雰囲気から察したみたいで、それ以上聞こうとはせず席に座った。
ーーーーその頃街のとある酒場では住人が姫那達の事について話していた。
「あの異世界人はどこにいる?」
「今は街の端の宿屋にいます。宿屋の店主の報告だと朝食を今から食べるそうです」
「あの宿か。朝食を食べたら機が熟すだろう。今日実行に移すぞ」
「わかりました。その後の動向を見て全員で対処します」
ーーーーそして姫那達は、、
「本当にこの街の料理は全てが美味しいね!レシピとか教えてほしいくらいだよ!」
「お姉ちゃん、レシピとか聞いて料理作れるの?」
「作れるよ!たぶん!」
「たぶんってなんだよ」
「料理なんて大体フィーリングでしょ?私そういうの得意だから美味しく作れるよ!」
「料理はあんまりした事ないの?」
「あんまりってゆうか、全然した事ない!」
すごいドヤ顔で言い放つ。
「料理した事ない奴が、どこからそんな自信が出てくるんだよ」
「ここからだよ!」
「あ、うん」
もうここまで言うんだったら本当に美味しく作れるんじゃないだろうかと思ってしまう。
「今度作ってあげるよ!」
自信満々に言ってくるので、夏生は少し楽しみになったのだった。
この街の住人はやはり何か隠していた。
だが、それに姫那達はまだ誰も気付いていない。いや気付かないようにされているのだ。
気付けるか気付けない。この違いがこれからの四人の運命を大きく左右する事になる。
今回は比較的笑いの多い回になりました。
そして、これから急展開に突入していきます。。




