EpiSodE011:灼熱地獄
3階層に来て半日、姫那達は2階層に着いた時同様に彷徨っていた。
一つ違うのは環境だ。
2階層の時は大草原で、ここ3階層は大砂漠だった。
「ちょっと水、、どこかにないの?」
エルフの街でもらった水筒にあった水ももう一滴も出てこない。
「周り見渡してみろ。どこに砂と石以外の物質が見えるんだ」
「3階層に来て今まで見たものと言えば砂漠と枯れ果てた街が一つだけだ。水場なんてまだ全く見ていないだろう?」
人の体の60%は水分でできている。
その2%を失うと喉が渇き、5%失うと脱水症状があらわれ、10%となると死の危険が迫り、20%で死に至る。
今姫那達は約5%の水分欠損となっている。
という事は三人は現状ほとんど脱水症状の状態なのだ。
実はここまで魔物も全く出てきてない。
この3階層に来て最初に戦うのが魔物でも悪魔でもなく、まさか暑さになるとは誰も思っていなかっただろう。
「水がないとほんともう死んじゃうよ〜。夏生〜おんぶして〜」
「さっきからうるせぇな。自分で歩けバカ」
「またバカって言った〜!バカバカ言い過ぎ〜!エリーもなんとか言ってよ〜」
「頑張って歩け」
「エリーまで〜」
なんて冷たい二人だと思う姫那を尻目に、追い討ちをかけるように魔物が現れた。
「なんで今魔物が出てくるのよ〜」
「やるぞ、姫那」
「わかったよ〜」
「この魔物を倒したらあの岩影で少し休憩しよう」
エルサリオンが今にも歩けないとか言って座り出しそうな姫那を見かねて休憩を取ることにした。
ここで凄いのが三人とも倒れそうになりながらも阿吽の呼吸で連携をとり、魔物を難なく撃破したのだ。
数日とは言え、魔物との戦いは数をこなしてきたから体が覚えていた。
「倒した〜。少し休憩ね!」
「仕方ねぇな」
「もう暗くなってきたし、ここで野宿しようか。次いつこんな岩場があるかもわからないし」
夏生も強がってはいたが、暑さには勝てないし疲れは溜まっていた。
ただ、砂漠はここからも地獄だ。
日中は猛暑なのに対して、夜は極寒になる。この気温の変化が一番難敵なのだ。
そして、この極限状態でついに姫那もほとんど喋らなくなった。
「姫那、大丈夫か?」
「んー」
流石に心配になったエルサリオンが声をかけるが返答してくる姫那の声に全然生気を感じない。
そしてそれは夏生もエルサリオンも一緒で、三人とももうほとんど動く事ができない状態になっていたのだ。
「とりあえず今は寝て少しでも体力を回復させて、明日に備えよう」
今できる事は体を少しでも休ませる事。それ以外に現状できる事はない。
だが、水分欠損による脱水症状と砂漠の夜の寒さ、そして明日を迎えたとして水にありつけるかわからない不安が襲いかかってなかなか眠れない三人。
結局ほとんど眠れないまま夜が明けたのだった。唯一人だけを除いて。。
「みんな大丈夫か?」
朝になり、エルサリオンが安否の確認をする。
「おぉ、ギリギリ生きてたわ」
夏生が死にそうな声で応答する。
「・・・・」
そして、姫那からの返事が返ってこない。
顔を見合わせる夏生とエルサリオン。まさかとは思うが死んでいる?そう思わざるを得ない状況だ。
「おい!姫那!」
夏生が出ない声を振り絞って姫那に呼びかけ、体を揺する。
「ん?もう朝?」
姫那が眠たそうにしている。ただ眠っていただけらしい。
夏生とエルサリオンは安堵すると同時に紛らわしい姫那に少しムカついた。
「何ぐっすり眠ってんだよ」
「え?だって二人が少しでも眠って体力回復させろって言ったんじゃん」
確かにそう言った。二人ともそのつもりで寝ようとしてた。でも二人はほとんど眠れていない。
同じ状況下にあった姫那が何故ぐっすり眠れていたのか二人は不思議で仕方なかった。
「いや言ったけどそれでなんで眠れてるんだ?」
「寝なきゃって思ったらいつの間にか眠ってたんだよ!二人はあんまり寝れてないの?」
「あんまりってゆうかほとんど眠れてない」
「え?なんで?私すぐに寝れたよ?寝たら体調良くなったし寝ないとダメだよ!」
わかっている。姫那はドが付くほどの天然という事はわかっている。
だが、寝たいのに眠れなかった二人はイラッとせずにはいられず、姫那に当たるのはただの八つ当たりだから心の中に収めた。
そして心を落ち着かせて考えた。
「それもギフトか」
「え?どういう事?」
夏生が考えた結果、これも姫那のギフトだと考察した。そう結論付けないと納得がいかないからだ。
「姫那、お前たぶん自分を洗脳したんだ。言うなら、自己洗脳だな」
「そんな事した覚えないよ?」
「無意識に、だな」
そう。姫那のギフトは知らぬ間に更に成長し、自分をも洗脳できるようになっていたのだ。
姫那が眠りたいと強く思った事で自動的に自分をせ洗脳して眠りに付かせたのだ。
そして眠った事によって少しは体力も回復したという訳だ。
「お前のギフト、ほんと無茶苦茶だな」
「それ褒めてる?」
「褒めてる褒めてる」
「絶対褒めてないじゃん!」
夏生とエルサリオンも昨日より元気になった姫那を見て、少し元気をもらった。
「よし、そろそろ出発するか」
「そうだな!」
そう言って進もうとした時にそれは現れた。
「夏生!エリー!!」
先に歩き出していた姫那が今まで聞いたこともない声量で二人を呼ぶ。
「どんだけ元気になってんだよあいつ」
「はは、いい事じゃないか」
呆れながら姫那の所に向かう。
「見て!これ!」
夏生とエルサリオンは空いた口が塞がらないほどの光景が目の前には広がっていた。
水だ。広大な湖が直ぐ近くにあったのだ。
「なんでこんな近くにあったのに気付かなかったんだ」
理由は単純である。
砂漠の夜は寒くて暗い。もちろん街灯なんてないし、数メートル先は暗闇だ。
数十メートル先の湖なんて見える訳ないのだ。
体の水分がなくなり、眠る事もできないくらい疲労していたが、暗くて見えない湖に落ちなかったのは不幸中の幸いと言えるだろう。
そんな状態で溺れたら確実に死んでいた。
「とりあえず飲もう」
いつぶりの飲み物だろうか。
体中の血管を水が巡っていくのがわかる。
「ふぅ。生き返った」
「本当にもうダメかと思った!」
水筒にも溢れるくらい入れて、次いつこんな湖があるかわからないから体内にも大量に蓄えておく。
「腹いっぱいに飲んだか?」
「うん!飲んだし水筒にもいっぱい入れたよ!」
三人とも十分に飲んだところでようやく出発する事にした。
意気揚々と姫那が先陣を切り歩いていく。
「最初からあんな調子に乗るから直ぐ疲れるんだよ」
「あいつは何も学ばないな」
なんとか水も手に入り、砂漠での第一関門を突破した姫那達であった。
西條姫那
能力〈ギフト〉:洗脳系のギフト
・意識誘導
・思考誘導
・自己洗脳
石田夏生
能力〈ギフト〉:刃物を自在に創造するギフト
・龍刃
・龍刃・双
エルサリオン
魔法
・暴風矢
・大樹の束縛




