EpiSodE105:最強の戦士とは
イズレンディアとイグゼキュタ達に助けられて、エルサリオンは1人のイグゼキュタと今上空にいた。
そして飛び立ってから30分、2人の間に全く会話はなく、ずっと不穏な空気が流れていた。
それはエルサリオンの喋りかけるなというオーラがすごかったからだ。
今何か喋りかけようものなら殴られてもおかしくないような雰囲気を出していた。
そんな空気を察したエルサリオンはイグゼキュタに話しかける。
「すまん。別に今のこの状況を不満に思っているわけじゃないんだ」
「え?」
「お前の説明を聞いて納得もしてるし、理解もしている。だから気を遣わないでくれ」
「、、そうですか、、すみません、勝手に無理矢理連れ出した事に憤りを感じられているのかと、、」
「全くないと言ったら嘘になる。だが、お前達とイズレンディアの思いを無駄には出来ないし、ちゃんとわかっているから大丈夫だ」
エルサリオンは聞き分けの悪いエルフではない。
いつでも客観的に物事を見て、どうするか判断する。
仮に今回のように自分の意向に沿わない事だったとしても、それが正しいと思えばちゃんと意見を変える事ができるエルフだった。
その言葉を聞いたイグゼキュタは何故かわからないが自然に涙が出てきた。
「す、すみません!勝手に涙が、、」
「いや、俺の方こそすまない。涙が出てしまうほど考えさせてしまって。でも、、だから安心してくれ。俺は大丈夫だ」
「わかりました!」
険悪なムードはもうなくなり、2人とも胸がすくような思いだった。
「エルノール様とエドラヒル様、ララノア様、皆様無事だといいですね」
「、、あぁ、そうだな」
エルサリオンは必ず生きていると信じていた。
「それはそうと、みんなのいる場所は何処なんだ?」
「はい。今下の階層に行く準備を進めています」
「下の階層に行く準備?この5階層から離れるのか?」
「そうです。もうこの階層は悪魔で埋め尽くされています。ここにはもういられません」
「下の、、下界のデックアールヴはどうするんだ?まだ残っているだろう?」
そう。アルフヘイムの下にはアルブフという地上の街があって、そこにはダークエルフが住んでいた。
「・・・・・」
そのエルサリオンの問いにイグゼキュタは黙り込んでいた。
「どうしたんだ?まさか見捨てたのか?」
「違います!見捨ててなどいません!エルサリオン様に伝えた事と同じ事を伝えようとしました!でも伝えに行こうとしたらもう下界は悪魔の手に落ちていました、、」
「じゃあもうデックアールヴは、、」
「はい。見渡す限りは悪魔しかおらず、生きているデックアールヴの姿はありませんでした、、」
生きているデックアールヴの姿は見えなかった。
これが意味する事は、デックアールヴの死体はあったという事をエルサリオンはすぐに理解した。
「、、そう、か」
「すみません、私達の力不足でこんな事に、、」
「いや、それを言うなら俺だ。エルフ最強の戦士と呼ばれながら、悪魔に全く歯が立たなかった。これでは今まで何の為に鍛えたのか全くわからない、、本当にすまない」
「な、何を仰っているのですか!エルサリオン様はエルフ族最強の戦士で間違いありません!」
イグゼキュタはエルサリオンが自分に謝っている事に焦ってすかさずフォローを入れるが。
「こんなあっさり負けてるのに最強の戦士なんて名乗れないよ」
「そ、それは、、」
そのフォローも虚しく、エルサリオンの言葉にイグゼキュタも返す言葉がなくなってしまった。
「いや、すまない。困らせるつもりはなかったんだ」
「い、いえ、、」
少し沈黙になりエルサリオンが口を開く。
「、、それにあの悪魔に言った事も嘘じゃない」
「言った事、、ですか?」
「必ず強くなって戻ってくる。そして、必ずアルフヘイムを奪還する」
エルサリオンは去り際、強欲の悪魔マモンにそう言い放って飛び立った。
これは口からの出まかせではなく、本気で思っているし、何年かかろうと絶対に取り戻すと覚悟も決めていた。
そして、そうしているうちにエルフが集まっているところに到着した。
「あ!エルサリオン様!」
「エルサリオン様だ、、」
「ご無事で何よりです!エルサリオン様!」
やはり何処に行ってもエルサリオンは羨望の眼差しを浴びる。
「あぁ、みんなも無事でよかった」
「エルサリオン、、」
そこへ長老のアルフィリオンが喋りかける。
「長老、、あんたも無事で何よりだ。それで、俺の家族はいるか?」
「それなんじゃが、、」
「なんだ?はっきり言ってくれ」
「すまん。エドラヒルもララノアもエルノールもこの場にいない、、」
アルフィリオンの反応を見てエルサリオンも薄々気付いていた。
だが、改めて言われると自分の中でもすぐには整理ができなかった。
「本当に、、本当にいないのか?」
「、、あぁ」
アルフィリオンがエルサリオンの問いに俯いたまま、深く頷く。
昨日の夜まであんなに賑やかだった家族が一夜にして誰もいなくなった。
それはどれだけ心が強く、エルフ最強の戦士といえど、多大なる精神的ダメージを受けるには十分すぎる理由だった。
膝から崩れ落ちるエルサリオン。
「エルサリオン様!」
「これは悪夢か何かか?そうならこんな最悪な悪夢早く覚めてくれ、、」
そう声に出して願うが、もちろん夢ではなくこれは受け止めなければならない現実だった。
「エルサリオン。お前の気持ちはよくわかる。わかるが今は悲しんでいる暇はない。立ち上がるんじゃ。まだここには2000人のエルフがいる事を忘れるでないぞ」
アルフィリオンは敢えてエルサリオンにキツく当たった。
その理由としてはいくつかあるが、1番大きいのはエルサリオンに今この状況で絶望した姿を他のエルフに見られればそれこそエルフ族の終わりになると思ったからだった。
それ程に今のエルサリオンがエルフ族に与える影響は大きかった。
「、、あぁ、そうだな。すまない」
心の整理も頭の整理も全く追いついていない。
だが、アルフィリオンが言った事の意図をちゃんと理解出来るくらいにはまだ理性を保てていた。
悲しむ事は後でいくらでも出来る。
まずは今のこの危機から抜け出す事が最優先だった。
「わかってくれたならそれで良い。酷かもしれないが今はエルフ族の存続の為に力を貸してくれ、エルサリオン」
「わかってる、、もう大丈夫だ」
エルサリオンは大きく深呼吸をして、気持ちを整えた。
そして、不安そうにしている2000人のエルフに安心感を持すために全員に向けて喋った。
「みんな、すまない。不甲斐ないところを見せてしまった。だが、もう大丈夫だ。みんなで一緒にここから逃げよう!完全に逃げ切れてからこれからの事も一緒に考えよう!」
そのエルサリオンの言葉に、生き残ったエルフ達の目に生気が戻っていった。
「因みに長老。この5階層から何処に行くんだ?」
「2階層じゃ」
「2階層!?そんなところまで行くのか?」
「あぁ。そこが今のところ1番安全な階層らしいのじゃ」
こうしてエルサリオン達生き残りのエルフは2階層に向けて動き出したのだった。
そろそろエルフの過去編も終わるのか!?




